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カスレアみかん!  作者: あもら
ウェルカム! ラーグタウン編
9/79

サブキャラたちが、出番が欲しそうにこちらを見ている。

「君が新しくドリクロを始めた子だな!」


 広場では5色の5人組が俺たちの前に現れた。

 そういえば、昨日の冒険者ギルドでこの集団を見たような気がする。その時は掲示板を眺めていて、直接話をする事は無かった。


 その集団にいきなり呼びかけられて、俺は思わず言葉を詰まらせてしまう。

 隣ではカストルが先頭の赤色の青年を指さしている。その指先はわざとらしく、軽く震えていた。


「な、何者だ! お前たちは!」

「よくぞ聞いてくれた!」


 赤色の返事と共に、背後の4人が左右に並ぶ。カストルは指さした時の震えは嘘のようであり、俺に5人組を見るように促した。


「俺がリーダー! レッド!」


 赤の短髪が上に跳ねている青年は、ボイルたちより少し若そうに見える。金属の胸当てや篭手、具足を身に付けているが、動きやすさを重視しているようだ。


「クールでイケメンなブルー」


 そう自称する青年の青い髪は、前方に長く垂れ下がっている。頭の左右からのびる角や尖った耳、背中から広がるカラスのような翼から、彼が人間でない事は明らかだ。


「オレ、イエロー。『タイヨーランチ』ノ、カレー、オススメ」


 褐色茶髪の青年の手には、カレーが盛られた皿とスプーンが握られている。その両腕は太く強靭で、前方が開かれたベストから見える筋肉もたくましい。


「故郷から大量の蜂蜜が送られてきた、グリーン」


 緑髪で少女に見えなくもない、少年は5人目より背が低い。大きな、辞書のような本を両手で抱えている。また、背中からは昆虫のように薄く透明な羽が広がっている。


「わたし、ピンク! よろしくね!」


 5人目は、他の4人とは世界観が違う気がする。桜色の髪の少女は孤児院のラガーちゃんと同じぐらいの身長で、アニメの魔法少女がそのまま目の前に現れたようであった。自分の身長より長い魔法の杖は、その先端が宝石と羽根で飾られている。


「俺たち5人合わせて!」

「「「「冒険者グループ! ペンタゴン!」」」ゃん!」


 俺たちの前で5人組が決めポーズを取る。

 ブルーが中央を陣取っているのだが。イエローが黙々とカレーを食べ続けているのだが。ピンクがポーズを取る前に、自分の杖に足を引っかけて転んでいるのだが。

 隣のカストルも、いつの間にか眺めていた他の冒険者も、この光景は当たり前のように眺めている。決めポーズに対するツッコミは無粋のようだ。


「困った事があれば、俺たち『ペンタゴン』に任せてくれ。冒険者ギルドに依頼をする時の依頼書に『ペンタゴン』と書いてくれればOKだ!」

「あ、ありがとう」


 ペンタゴンは最近結成した冒険者グループのようだ。今は依頼を沢山こなしていき、将来は街を守れるヒーローになりたいそうだ。

 俺はペンタゴンに自己紹介をする。俺が6属性を全て使える事に驚いていたが、都合の良い事でもあった。5人ともドリクロをしていたが、使うカードの属性がばらばらであった。全員とカードを交換する事ができて、とてもいい気分だ。


 カストルもレッドとイエロー、ピンクとカードを交換していた。

 彼が受け取ったカードのうち、枠の色が赤と茶の2種類がちらりと覗かせていた。



『熱血闘士 レッド』

 火属性ユニット、5コスト4/4、『突撃』

 入場:味方ユニットが5体の時、このユニットに+2/+2し、『守護』を得る。


『イケメン角度』

 水属性イベント、3コスト

 自分の手札が1枚の時に使用できる。自分は3ドローし、6回復する。


『守備形態のイエロー』

 地属性ユニット、4コスト3/3、『守護』

 入場:敵ユニットの数だけ、このユニットに0/+1する。

 このユニットはダメージを受けていない限り『神秘』を得る。


『往復する伝書鳩』

 風属性ユニット、3コスト3/3、『突撃』

 入場:自分は1ドローする。

 退場:自分の手札をランダムに1枚、デッキに戻す。


『シャインブレイカー』

 火属性イベント、6コスト

 ユニット全てに4ダメージ。破壊したユニットの数だけ、相手に1ダメージ。



「自分の姿が描かれたカードを使うのって、恥ずかしく思う事はあるの?」

「んー……。自分に近いカードほど、他の人に使われた時に強くなれる気がするから、つい自分の姿のカードを作ってしまうよなー」


 俺はペンタゴンから受け取ったカードの中に、その人自身のカードが含まれていた事について、カストルに聞いてみた。恥ずかしいけど、それで自分の魔力が上がりやすくなるなら、自分もつい作ってしまうかもしれない。




「待たせたな。こっちの用事は済んだ」


 ボイルが建物から出てきた。これで冒険者ギルドを後にするようだ。ペンタゴンの皆と別れの挨拶をして、建物に振り返る。扉の前ではエリシャが笑顔で手を振っている。キアヌはカードブックを取り出して、1枚のカードを取り出した。


「餞別だ。取っておけ」

「あだっ!」


 キアヌの手から放たれたカードは俺の額に命中した。指で挟んで受け取ったら格好良かったけれど、思うようにはいかない。俺もカードブックから自分のカードを取り出し、キアヌに向けて投げる。


 ぺしっ


 俺の足元で力の抜ける音が聞こえる。自分で投げる方も失敗して、顔が赤くなりそうだ。

 ボイルはため息をついて、カードを拾って代わりに投げてくれた。吸い込まれるようにキアヌの指の間に収まる様は、俺の理想の光景であった。


「……経過観察」

「気になるなら俺から連絡を入れてやる。だから監視は必要ない」


 キアヌの言葉は不気味であったが、すぐにボイルが釘を刺した。一瞬の出来事であったが、背中に冷や汗の余韻を感じてしまうものであった。ともあれ、キアヌともカードを交換する事ができて、冒険者ギルドの用事は済んだ。



『ショベルの傭兵 キアヌ』

 地属性ユニット、4コスト3/4

 入場:自分のデッキを無属性カードが出るまで破棄し、そのカードを手札に加える。



 キアヌから受け取ったカードをしまい、俺とボイルは先をゆくカストルの背中を追いかけた。


(つまり、ミカンがリアルファイトする事は)ないです。

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