11 はじめての友達
頭がぼーっとする。
なんだ?何が起きた・・・?
確かくそデカいイモムシと戦っていて・・・
ズリ・・・ズリ・・・
聞き覚えのある不快な音が耳を撫でる。
だんだんと晴れてきた視界に、巨大なイモムシが遠くから這ってくるのが見える。
「ガハッ!!」
そ、そうだ、バラモンデスワームだクソ!
膝が急に折れて、その隙に突進を食らったんだ。
そりゃそうだ。あんな無茶な動きを続けてスタミナが持つはずがない。
う、頭が痛い・・・。
にしても、まともに食らったのによく生きてたな。
****
リュウLv.10
種族 ヤングレッドドラゴン(変異種)
体力 4/800
魔力 0/480
攻撃力 550
防御力 550
素早さ 620
称号 【竜を愛する者】【エクスプロージョン】【サイレントキラー】【逃走者】
スキル 《火炎放射》《鑑定》《爪貫き》《爆裂パンチ》《爆破耐性》《竜言語》
****
うわ、ギリギリだな・・・。
良く生きてたもんだと言いたいところだけど、体が動かないや。
ズリ・・・ズリ・・・・
バラモンデスワームがすぐそばまで近寄ってくる。
全身から緑色の血を滴らせ、その顔についている8つの目はすでに6個つぶれている。
見るも無残な姿だ。
結構削ったはずだ。
****
バラモンデスワームLv.96
体力 156/3600
魔力 0/1000
攻撃力 1580
防御力 2860
素早さ 400
称号 【食王】【バラモンの森の主】【厄災】【無限胃袋】【妄執】
スキル 《衝撃吸収》《強酸胃液》《食事回復》《忍び足》
****
くっそー、やっぱあっちも瀕死か。
惜しかったなあ・・・
残念だけどここまでだな。
あーくそ、短かったな、俺の竜生。
今回は運よく?記憶を持ったままドラゴンに生まれ変わることができたけど、次はそううまくはいかないだろう。
そもそも何かに生まれ変われるのかさえ定かじゃない。
エイリューンたんのように美しいメスに会うことはきっと二度とない。
それだけが心惜しい。
バラモンデスワームが大きな口を開き、黄色い触手を俺の体に絡める。
俺が抵抗できないのをわかっているからか、自身も満身創痍だからか、バラモンデスワームの動きはひどくゆっくりだ。
ねちゃねちゃとした唾液が体中にへばりついて気持ち悪い。
だんだんと体が引きずり込まれ、死が近づいてくる。
―――――その時だった。
「《邪槍》!!」
突如上空から現れた紫色の人影が、バラモンデスワームの最後の2つの目をつぶす。
「ブオオオオオオオオオオオオオオ!!」
慌てたバラモンデスワームは俺を吐き出してしまい、のたうち回る。
この声と技・・・もしかして
「大丈夫か!リュウ!」
あーやっぱりか。
華麗な槍捌きで俺を助けたのは、決別したはずのグラディオだった。
まったく、付いてきたのかよ。お前のレベルじゃ、あっという間に殺されちまうぞ。逃げろ。
と忠告したいが、声が出ない。
「森のあちこちで轟音がするからもしやとお前を探してみたが、ずいぶんとこっぴどくやられたみたいだな。」
一応あっちも瀕死まで追い詰めたんだぜ?
バラモンデスワームは、完全に失った視界に戸惑い、狼狽えている。
「話は後だ、我の血を飲め。」
グラディオはジャバランスの穂先で自分の腕を傷つける。
は?何やってんだいきなり、血?
そしてダラダラと垂れ出した血を俺の口元まで持ってくる。
いやー!やめろ!なんか菌とか入りそうじゃない?大丈夫!?てかそもそも何やってんの!
わずかに残された気力を振り絞って、抵抗の意を見せるが、頭をがっしりとホールドされてしまう。
力の入らない喉は、あっさりとグラディオの血を通していく。
うげえ。
「逃げるな、大丈夫だ。我の血にはどういうわけか回復作用があってな。傷ついた動物なんかも癒したことがある。」
回復作用のある血?
確かにだんだん体が・・・軽くなってきた。
「どうだ?そろそろ動けるはずだ。」
両手をニギニギしてみる。うむ、動くな。
明滅していた視界もはっきりしている。
バッと俺は立ち上がると、自分を鑑定してみる。
****
リュウLv.10
種族 ヤングレッドドラゴン(変異種)
体力 50/800
魔力 0/480
攻撃力 550
防御力 550
素早さ 620
称号 【竜を愛する者】【エクスプロージョン】【サイレントキラー】【逃走者】
スキル 《火炎放射》《鑑定》《爪貫き》《爆裂パンチ》《爆破耐性》《竜言語》
****
「おお、本当に回復してるな。」
まさか本当に回復作用のある血があるとは。
「よし少しは動けるはずだ、奴が戸惑っているうちに早く逃げよう。」
グラディオはバラモンデスワームを指さす。
****
バラモンデスワームLv.96
状態:呪い
体力 100/3600
魔力 0/1000
攻撃力 1580
防御力 2860
素早さ 400
称号 【食王】【バラモンの森の主】【厄災】【無限胃袋】【妄執】
スキル 《衝撃吸収》《強酸胃液》《食事回復》《忍び足》
****
目をつぶされたってのに大したダメージになってないな。
いや、単純にグラディオの攻撃力が低く、バラモンデスワームの防御力が高いのだ。攻撃したのが目でなければ、ダメージが通っていたのかも怪しい。
今は狼狽えてるみたいだけど、そのうちまたこっちに気を向けるだろう。
【妄執】がある以上、きっと視力がなくても俺を追跡できるはずだ。
今のうちに逃げるだけ逃げたほうがいいな。体力は回復したがスタミナはほぼ空だ。
《邪槍》の効果で呪い状態になっているから、時間を稼げば稼ぐほどこっちの有利になるはずだ。
「グラディオ、奴が狙っているのは俺だけだ。何とか動けるようになったから先に逃げてくれ。」
「何を言っている!先ほどの血の量ではわずかしか回復しない!足もまともに動かないであろう。早く掴まれ。」
「お前のステータスじゃ相手にもならないってんだ!無駄死にしたいのか!」
かすれた声を振り絞って怒鳴るが、グラディオは無視して俺の腕を肩に掛け、持ち上げる。
「我の命はあそこ・・・リザードマンの集落で終わっていた。しかしお前が生きる道を切り開いてくれた。ならばこの命、お前のために使おう!」
馬鹿が・・・それじゃ助けた意味ねえだろうが。
そう思いつつもグラディオの覚悟を俺は無碍にできないでいた。
「悪い、助かる・・・。」
「なあに、無事に生き延びたらまた美味い飯を食わせてくれ。」
「ふっ、約束するよ。」
俺より少し小柄なグラディオの肩を借り、二人でひょこひょこと場を離れた。
俺の胸の中が温かい感情で満たされる。前世でも経験したことのないこのぬくもりは、きっと”友情”というのだろう。




