9 火薬は水に弱い、これ常識
「はあ・・・!はあ・・・!《火炎放射》!」
ゴオオオ!!
俺の口から出た炎がハングリーベアとバラモンデスワームを包み込む。
『ハングリーベアを倒しました。350の経験値を獲得しました。Lv10に上がりました。』
よし!全回復!
息切れして苦しかった胸がスッと楽になる。
まさかこんなところで因縁のハングリーベアに出くわすとはな。
しかもあいつ、バラモンデスワームにビビることなく、まっすぐに俺に突っこんできやがった。“ハングリー”の名は伊達じゃないな。
それにしても、レベルアップに必要な経験値が増えてきてるな。
もう何時間走り続けているだろうか、俺は息切れすることが多くなってきたが、バラモンデスワームの勢いはまったく衰えない。どんな体力してんだまったく。
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リュウLv.10
種族 ヤングレッドドラゴン(変異種)
体力 800/800
魔力 480/480
攻撃力 550
防御力 550
素早さ 620
称号 【竜を愛する者】【エクスプロージョン】【サイレントキラー】【逃走者】
スキル 《火炎放射》《鑑定》《爪貫き》《爆裂パンチ》《爆破耐性》《竜言語》
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中々のステータスだ。
一度ハングリーベアの突進を受けてしまったときは焦った。
とっさにニトロストーンを使ってバラモンデスワームを怯ませたからいいものの、もう少しで《強酸胃液》を食らうところだった。あの熊公め。
ずっと逃げ続けていたせいか【逃走者】なんて称号を獲得してしまったぜ。
不本意だけど、逃走の際に素早さ補正がかかるらしいので正直ありがたい。
最初のレベルアップからすでに俺のほうが素早さは高くなっていたので、距離を離そうと思えば離せた。
でも無限と錯覚するようなスタミナと【妄執】の称号のせいでどうにも逃げ切れそうにない。
なので体力温存のためにわざとバラモンデスワームの速度と同じか少し早いくらいのペースで走り続けているのだ。
そして、この戦いにもようやく終わりが見え始めた。
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バラモンデスワームLv.96
体力 2800/3600
魔力 0/1000
攻撃力 1580
防御力 2860
素早さ 400
称号 【食王】【バラモンの森の主】【厄災】【無限胃袋】【妄執】
スキル 《衝撃吸収》《強酸胃液》《食事回復》《忍び足》
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バラモンデスワームは、体力が1000を切るくらいになると、魔力を200消費して《食事回復》を使ってくる。あいつの残りの魔力は0、つまりもう体力回復できないってことだ。
《自動体力回復》や《自動魔力回復》のスキルを持っていたら完全にアウトだったな。
途中、何度かニトロストーンを使ってしまったが、まだ少しはある。
これがうまく当たれば800くらいのダメージは与えられるだろう。
最初に使っちゃった特大サイズのニトロストーン達があれば一気に倒せたかもしれないなあ・・・失敗した。今あるのは小粒ばかりだ。
無いものねだりしてもしょうがないな。
レベルアップまでの必要経験値がかなり多くなってきている。もしかしたら11レベルに上がるのは手持ちの魔力だけでは足りないかもしれない。
《爆裂パンチ》や《爪貫き》は魔力を使わないのだが、どうしても近距離戦闘は時間のロスになる。
追いかけられ続けているこの状況では、やっぱり《火炎放射》一択なのだ。
魔力調整をしっかりしないと食われることになるな。
ちらっと後ろを見ると、まったく衰えた様子のないバラモンデスワームがズモモモモと走っている。
はあ・・・本当にしつこいなもう。
―――――またしばらく火炎放射のループを続けた。
「はあ・・・はあ・・・」
息が切れてきた。やばいな、何体も雑魚魔物を倒してるのにレベルアップする気配がない。
このへんの魔物じゃ経験値が圧倒的に少なすぎる!
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リュウLv.10
種族 ヤングレッドドラゴン(変異種)
体力 800/800
魔力 5/480
攻撃力 550
防御力 550
素早さ 620
称号 【竜を愛する者】【エクスプロージョン】【サイレントキラー】【逃走者】
スキル 《火炎放射》《鑑定》《爪貫き》《爆裂パンチ》《爆破耐性》《竜言語》
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打てる《火炎放射》は残り1回。もちろんニトロストーンの起爆用だ。
ニトロストーンをマジックバッグから取り出す。
これでも駄目なら接近戦しかないが、あの巨体に立ち向かうのは些か無謀だ。
対するバラモンデスワームは・・・
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バラモンデスワームLv.96
体力 750/3600
魔力 0/1000
攻撃力 1580
防御力 2860
素早さ 400
称号 【食王】【バラモンの森の主】【厄災】【無限胃袋】【妄執】
スキル 《衝撃吸収》《強酸胃液》《食事回復》《忍び足》
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ニトロストーンがうまく当たればギリギリ倒せるか・・・?
微妙なところだ。
何度か《火炎放射》をよけたこともあるので油断はできない。
体力は残りわずかだが、どういうわけかまったく弱った様子がない。
コイツの場合、スタミナは完全に別なのだろう。まったくもって厄介だ。
とにかく、おれのスタミナが限界に近い。
勝負は今決める!!
俺は手持ちの最後のニトロストーン達をバラモンデスワームに投げつける。
弧を描いて飛んで行ったニトロストーンは、正確にバラモンワームの顔面近くへ到達する。
「俺の・・・勝ちだ!!《火炎放射》!!」
ゴオオオ!
凄まじい火炎がニトロストーンに接触し、大爆発を起こす、と思われたその時。
「ブオオオオオオオオオオ!!」
ブシャ!!
「なっ!ここにきて《強酸胃液》を吐き出したがった!!」
さんざん食らっていたからニトロストーンの性質を見切ったのだろうか、わからないが、とにかくバラモンデスワームは《火炎放射》が到達するより早く《強酸胃液》をニトロストーンに吐きかけた。
シュウウウウ・・・
と音を立てて胃液でぬれたニトロストーンから煙が出る。
そして数瞬後に、俺の吐き出した炎がニトロストーンを呑み込む。
たしか水で湿っていると爆発しにくくなると聞いたことがある。
どうだ・・・起爆するか・・・?
ここで爆発しなければ、ほぼ勝ち目がなくなる。つまり食われて死ぬ。
エイリューンたんにも二度と会うことはないだろう。
一帯の時間がゆっくりと流れているような錯覚に陥る。
くそ!自分の鼓動がいやに大きく聞こえやがる。
バラモンデスワームも虫なりに緊張しているのか、動きを止めて、空中のニトロストーンを見つめている。
・・・・・・・ポト。
ニトロストーンはそのまま地面に落ちた。
起爆・・・しなかったか。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
バラモンデスワームが勝利の雄たけびを上げた。




