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犯罪売り

 犯罪売り。それは名の指すとおり犯罪を犯した者を売買すると言う物。

 勿論どんな犯罪を犯したかで扱いが変わるのは当たり前だが、普通の人身売買と違いこちらはまさに物扱いなのが特徴的だろう。


 おおよそどんな感じだったかを思い出しつつ、檻に入れられた者達を順に眺めていく。

 前方ではメルベーンが熱く語っているけど、うん、話半分で流している。


 扱いを見ていると、軽犯罪者はちゃんと丁寧に扱っているようだし、重犯罪者も本人が暴れたり危険だから鎖等で繋いでいるだけだと知れる。

 前乗り込んだ場所に比べれば段違いだな。清潔感も保たれているし看守の対応もしっかりしている。やはり国の許可を得るだけあるな。


 ただ、拒否権がない相手を強制的に自分の元に連れて行くのも気が引けるわけで、どうしても選ぶ事が出来ない。

 割とタイプの子とか同じ東方出身っぽい子とか気になる子は数人いたんだけど、どの子も軽犯罪者っぽいし、多分食い詰めての食べ物の盗みとかだろう。

 多分最初の使いが終われば犯罪売りの身分から抜け出せるだろうし、もし縁があればその時にでも会えるかな。


「っと、あの子は」


 とは言え、流石に誰か選ばないとなぁとか思っていたら、最後の檻に閉じ込められていた女の子の姿に思わず眉をひそめてしまう。


「あぁ、申し訳ございません。彼女はエルフ族なのですが、ご覧の通り白髪の持ち主でして」


 メルベーンの言葉を聞いて、あぁ、ここでもまだ間違った認識がはびこっているのかと残念に思う。


「じゃぁ彼女を貰い受けましょう」


 俺の言葉に驚いたのか、ポカンと口を開けるメルベーン。

 そんな彼にちゃんと真実を告げる。


「大丈夫です。白髪が周りに不幸を撒き散らすなんて迷信ですよ。

 ただ、白髪持ちは普通のエルフと違い魔力を外から吸収せねばならず、それが不幸に繋がった例が幾つかあるだけです。

 私には何の問題もありませんよ」


 途中から鎖に繋がれ感情の色が無いその少女に告げる。

 まだ5歳前後ってところか、確か成人するくらいまでは同じスピードで成長するんだし、間違ってない筈。

 その歳でさて、どれだけいわれのない中傷を受けてきた事やら。俺も散々経験した事だが、傷ついていない訳がないからな。


 俺が言い終えると共に、少女はこちらを向いた。


「お兄ちゃんも私を知ったら嫌いになるよ。

 お父さんもお母さんも最後には私を売ったんだし」


 強がるでもなく、ただ鈴が鳴るような声で淡々と告げられたそれに、ふぅっと思わずため息を吐き出してしまう。


「まぁ、好きになるかはわかんねーし、嫌いになるかもしれん。それは否定しない。

 だが、少なくともお前が白髪だからって嫌いになる事は絶対ない。何故なら俺にとっちゃ些事だからだ」


 そう俺が言ったところで、特に少女に対して響くものはなかったのだろう。顔色が変わる事はなかった。

 ただ、視線を外さずにいてくれたので、手を差し伸べる。


「さぁ、俺とともに来るか自分で選べ。

 こう言うと脅迫してるようで嫌なんだが、もし手を取ればお前のその状況を俺が何とかしてやる」


 さ、どうする?


「……本当に。……本当に何とかしてくれるの?」


 そこで初めて瞳に力が宿ってくる。

 うん、まだ子供って言うのが幸いしたな。最初に助けたあいつなんて信じるまでだいぶ時間かかったからなぁ。って過去に思考を飛ばしてる場合じゃねー。


「あぁ、俺に任せろ!」


 ニカッと笑みを浮かべて言い切れば、ゆっくりと俺に近づいてきてその手を取ってくれた。


「さぁ、それじゃぁ最初の3人にこの子の4人を貰いますよ」


 そう断言すれば、何故か血の気の引いた顔で何度も頷くメルベーン……って、いや、その反応おかしくね?


 釈然としないものの、こうして俺は自分の部屋にお付きの女の子を4人ゲットしたのだった。




 とは問屋がおろしてくれない。

 白髪のエルフをも選んだせいか、最初の3人のうち2人辞退してきた……くっそー、地味に凹むぜ。

 だが、それ以上に間違った認識をなんとかしないとなと思う。白髪エルフって今やあの里じゃとても大切にされる存在になったって言うのにさ。


「さて、あんただけ付いて来た訳だが、理由は聞かせて貰えるか?」


 それなりに豪華な自室でくつろぎつつ、メイド服を来た少女に問いかける。

 しばらく沈黙していたが、その間は膝に乗せた白髪エルフのエリーと戯れていた。


「見ての通り、私はそこまで器量が良い訳ではありません。

 それに、どちらにしろ闘士の慰み者になるなら相手はどなたでも変わりないですから」


 ……とんでもない返答返って来た! え、ちょっと待って、色々噛み砕かないとわかんねーんだけど。

 あ、ごめんエリー、今物凄い鈍い頭で一生懸命考えてるから、撫でられるのが止まったからってそんな不満そうな顔向けないでくれ。

 とりあえず、止まった右手を再起動させエリーのご機嫌を取りつつ口を開く。


「あー、なんだ。君らは闘士の付き人になるのは決定って事か?」


「えぇ、そう言う契約で割増で売られましたから。

 そうでもなければ、あんな狭いコミュニティーですら響き渡る悪名高き貴方のお付きになろうって人間なんて出ませんから」


 うおー、滅茶苦茶引っかかる言い方。ってか、言葉に刺しかねーんだけど。

 むー。クールな子だなって思ってたけど、この子も諦めてる口かぁ……うーん、やっぱり人の内心を察するのって苦手だ。もっと修練せねばな。


「あー、了解。色々把握したよ。

 まぁ、うん。なんだ。とりあえず俺の思ってる事を伝えるぞ」


 言葉を受けて、真っ直ぐにこちらを見据えるメイド。

 ってか、なんか言葉にせずに責めてねーか? 少なくともさっさと言えって感じだなぁ。

 ふぅ、どうせ世話してくれるなら仲良くなりたいんだが、こりゃぁ無理かもしれんね。


「先ず、俺は君を性的に扱う気は同意を得れない限りはしない。

 次に、これから世話を頼む以上今後の言動で俺を判断して欲しい。無論出来る限りだがな。

 最後に、君は充分可愛いさ。少なくとも俺はそう思う」


 よし、言い切ったけど全然表情変わりませんでした!

 くっそー、女の子好きだけど、どう扱っていいかわかんねーんだよな。俺だってモテたい気持ちあるのだがなぁ。

 まぁ、本音を言えたし、これで満足しとこう。

 これ以上は俺には無理だ。


 そう内心で開き直ってエリーと戯れるのを再開する。うおー、魔法封じの腕輪のせいでごっそり魔力持ってかれるなぁ。この腕輪さえなければすぐにどうとでも出来るっつーのに。

 まぁ、根本の解決にはならないが、少なくとも今日は戯れて何とかするか。

 執事服には事情を話したし、結果は報告待ちだしどうしようもないからな。


「……、そうやって気を引こうとしても無駄ですよ。

 私は今後貴方に心開くこと等ありえません。

 ただ、仕事はします。伽も強がらず遠慮なく言って下さい」


「あー、うん。まぁ仕事してくれるならそれで良いや。

 ともかく、よろしくな」


 頑なな相手に何を言っても無駄なのは経験済みなので、時間が解決してくれるのを待つことにしよう。

 ……早期解決を全力で願うぜ。

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