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なりわい!冒険者です。 ~冒険者は冒険に非ず。魔物は少しものこらない。~  作者: あおぞら えす


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星の連なり****友の欠片



 世界の一部が切り取られ、新たに生まれる世界。


 けれど、この世界だけは動き続ける。キリもスズも。二人にはこの世界が切り取られて、何者にもなれ、何者でもない、異空間であることを、知らない。


 この世界に生きる存在が全てであり、いずれ死が訪れ、回るようにどこかで新たな人生を宿す。

 尊いという言葉は、目の前にある、大切で守りたいもののことを言うのだろう。だから、二人が見つけた尊い存在が生きていて、共に笑ってくれるならば、そのほかのどんなことも、そして、自分の些細な消えゆく物語すら、尊い存在には勝てない。自身の発端となる記憶が徐々に消えていこうとも。


 生命という大きな血管が存在しないこの世界で、人々は漠然とした物語を紡ぎ続ける。

 意味がないのか、意味があるけれど、それを教える存在はこの世界では生まれない。




 星を眺めて、スズは何もない光をのぞきみたいと思った。たくさんあるはずの命を知りたい思った。そして、その無数の光はただ輝くだけ。

 スズの見つめたものは、キリも同じように見つめていた。二人が見つめる輝きが今はただのガラクタだと知ったとして、二人はきっとそうなのか、と頷くだけだろう。実際そうだから。

 けれど、今は間近にある輝きが、彼らの運命を変えている。出会った少年は、どこにでもいる若いハーフドワーフ。キリは彼のために、世界が出来たんだと思った。スズは彼を心の拠り所とした。

 意味とは、その場限りのものでも形になり、二人の作り出したもかもしれないものですら、想いとなりその後の人生に物語を紡ぐ。

 その後の物語は語っても語らずとも、きっと、鏡の外には漏れることもなく、鏡の外で生きる人間には関係のない事なのかもしれない。




 彼らは、魔法の鏡から作られ、魔法の鏡に囚われ、永遠の中、永遠を生きる。

 巡る世界、終わらない世界。続く道。



 終わらないからこそ、冒険は続くし、三人はずっと仲良しのまま。喧嘩したってずっとその世界で生きるだろう。




 国山紀蒔璃は、その日。彼の地、ゼノロワの国に遺された魔法の鏡と対面した。

 大勢の命を奪い、自分のコピーを取り込んで、今は黒い光を放ち、静かに佇んでいた。

ーーピピ、ガガガガ・・・・

 紀蒔璃は自分の耳のイヤホンが微かに音を拾ったのをめざとく気がついた。この静かな場所に、生命の反応を示すことはあまりにも不可解だった。

 彼は周囲をゆっくりと見渡した。

ーー・・・これが、俺たちの望んだこと・・・・。永遠とは・・・・・・、そういう・・・・

 拾った音は、この世界の音ではない。

 彼は自然と、その巨大な鏡に視線を向け、理解した。

「ふっ・・・。作り物ではない、か。ソーティー・クンテイの言葉通り。この中にいる俺が、俺に反応した、か。まったく、迷惑なのものを造ったよ。この鏡の中の魔力は、取り出せない上に、この鏡のせいでこの地を更地にできない。しようと思えない。鏡の中の自分の声なんか聞いた日は・・・。」

 紀蒔璃はそう呟いて、彼の頬を伝う何かをごしごしと右手で拭いた。止まらない涙は、もしかしたら、取り残されたコピーが本体である彼の涙として伝えたのかもしれない。

 彼は悔しそうに舌打ちした。

「この場所は、そういう、場所。俺たちが作り出した、戦争の痕跡。終わらない、終われない。永遠の中に俺たちというコピーが遺された。魔法の鏡は兵器なのか、それともこれからのこの世界に遺された、代弁者なのか・・・。」

 涙が止まると、彼は彼の魔法で自身をカモメへと変身した。



 キリとスズは夜中のあいだ中、語らっていた。この世界の話しを、キリは話していた。

「俺には俺という確立したものはない。そういう運命だから。スズはどう思う?」

「・・・気にしない、気にしない、かな。だって、今は私と貴方よ。それ以外ではない。今と明日が違っても、それは変わらない。貴方はそれにこだわるの?」

「・・・。そういうものか・・。新鮮な言葉だよ。なんだか・・・。俺の中にずっと凝り固まった謎みたいなものがあって。それを解決しようとすればするほど・・・。不思議だなぁ。スズの話しはそういうものかって思ってしまう。」

「だって、そういうものだもの。前を見ても仕方ない、後ろを見ても仕方ない。私たちは、単なる幻のようなもの。命は命。けれど、受け止める存在がいなければ、脆く崩れる。ふふふ。私は私だと認識したから、私。きっと、鏡の向こうの私は全然違うけどね。」

 スズは小さく笑った。鏡。彼女が嫌うもの。頭から離れずにこびりついている。


 黒い光を放ち、彼女はそれを見た。それを知った。記憶の中に遺したまま新たな命として生まれ、幾度も最後はあの場所に立つ。運命が彼女をその場に立たせた。彼女は本来、コントロールし、魔法を外の世界に送り出す人柱になるはずの、存在。

 なにがどうして、彼女は死んだのか。彼女のコピーだけがこの鏡の中で一人、何もかもを知りながら廻り続ける。彼女は知っている。彼女は知ったふりをする。


「え?何か言ったか?」

「ううん。明日も早いし、寝ようかな。」

 笑う顔が死者の顔だ。彼女だけが、自分が死んでいることを知っていた。




 カモメとなって自分の仲間のいる場所へと飛ぶ。変身魔法は誰にでも出来るが、紀蒔璃はそれらを独学で学び、本来よりもより本物のように振る舞うことで、敵地へ偵察へといく兵士にまで成り上がった。

 しかし、それは死地へ赴くとも同義。彼がそれを選んだのは、彼なりの理由がある。


 仲間が留まっていた場所は、魔法の鏡からかなり遠い。ソーティー・クンテイ、コードネーム・テイ。それにセルクティー・セイラもその場にいた。彼のコードネームはセイラ。そのまま名前を使っていることに意味があるらしい。

「待たせた。」

「あぁ。そんなに待ってはいないが・・・。セイラもお前の話を聞きたいって。」

「いや、一晩は待ったはずだろう?」

「はは・・・。その程度、戦時中なら待ったの範囲じゃない。」

 紀蒔璃は小さく笑う。

「戦時中って・・・。いつの話しだよ。」

「俺らが生まれて数日?」

「あはは!それで?セイラは?」

「私は貴方方が気になっただけだ。我々を貴方方と行動出来るようにお願いしたのは、紀蒔璃さん。貴方だと聞いて。」

 紀蒔璃は、くすぐったい気分になる。セイラ達は戦争中は敵対していた。その事実があっても、彼らを友人としたいと考えた。理由など、掃いて捨てるほどある。

 彼らはその魔力と知識が豊富であり、己の信念に基づいた理屈で動く。まるで、何かの機械のようだったのだが、実際に彼らを偵察し、知り得たことは、道具として扱われる、人間ではない、彼ら。

「生きている人は戦争が終われば、友達。そう言ったのはリーダーの夢鷹だよ。俺ではない。」

 紀蒔璃は夢鷹を尊敬している。それは、誰よりも人の側に立ち、争いとは何かを諭せる人だから。

 失った魔法の鏡に魔力を込めて中のコピーを幸せに。

 夢鷹の立ち上げた無謀な企画。誰も最初は呆れていた。けれど、夢鷹の言葉ならば、と。皆が立ち上がった。彼の人望は、人と人が手を繋ぐための架け橋として動いたからである。争うためではなく。




 さて、鏡の中の存在が、幸せを手にするまで、スズという存在は嘆き悲しみ続ける。冒険者という肩書きもいずれは消えて、新たな命となって。

 誰もが、魂の欠片を欲し、自分の心に宿るものを探す。




 世界が巡る。永遠という永遠に。けれど、彼ら<星の連なり>はきっと救おうとする。

 星の連なりというただのPCを起動させ、友達となって集っていた存在。コードネームすらジョークの一つだった。けれど、戦争は彼らを巻き込んだ。

 彼らは優しさを束ねている。彼らには友情もある、恋愛だってあった。でも、すべてのコードネームには一つの約束の上で与えられた。

 優しさ。ただ、それだけ。星の連なるその先に、優しさを繋げよう。架け橋のように。流れる星を渡し。星夜というコードネームは、その意味が込められている。その名は。




 星の連なり****友の欠片   おわり



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