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なりわい!冒険者です。 ~冒険者は冒険に非ず。魔物は少しものこらない。~  作者: あおぞら えす


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元仲間と再会☆旅は道連れ、冒険にも道連れを!


 キリは冒険者となった。とはいえ、冒険者としての活動は、第一世界で似たことをしていたので、そんなに気負ってやるつもりはない。また、第一世界よりも前は放浪していたこともある。のんびりと余生を過ごそうと決めた。キリの寿命はとても長いが、命をもらった身と受け止め、せいぜい、長生きしながら旅しようと決めた。


 冒険の宿というものが、古びた屋敷に見えるのは、自分だけではないだろう。周りには何軒かの宿と、いくつかのお店が建ち並んでいた。

 ジャスト・ドラムという町に辿り着いたキリは、冒険の宿を目指した。町の規模は大きくはない。ただ、ある程度しっかりと囲われていて、魔物からの攻撃に備えている。町に入るための門を通る際も、三、四人ほどの警備している者達がいて、決して緩いわけでもない。

 精霊の町も同じように、守りは造られていた。ただ、精霊という存在は魔法に強いし、守りを固めることにおいて、精霊以上の存在を知らない。

 キリが出会った、ドワーフや、ウィンドと呼ばれる翼を持つ人間は、精霊とは別の魔法の色を持っていた。ドワーフは作り手とよばれており、職人のような存在だという。ウィンドに関しては、正直よく変わらない。人間の姿をしていても、翼を持っていることで、ある程度の地位を保証されているようだった。


 キリは冒険の宿に、ドワーフもウィンドも居ないことに違和感があったのだが、話を聞くと、彼らはそれぞれの役職があるため、冒険者になれないという。精霊はそもそも、いないとされているらしい。変わった世界だと、キリは考えていた。

 ちなみに、キリは討伐をするために、冒険者ボードを見たのだが、冒険者カードのレベルが低かったために討伐ではなく、簡単な採取をすることにした。

 キリが持っている冒険者カードを更新するには、特定の冒険の宿に行かなければならない。現在キリがいるジャスト・ドラムでは、更新することができない。


 キリは採取のために必要な道具を手に入れようと、ドワーフの店に向かった。ドワーフの道具はとても繊細に造られている。

 お店の前に二人の冒険者が立っていた。一方はおそらくドワーフ。もう一方は見た目は違うがおそらく、よく知る人。

「・・・スズ?」

キリは驚いて呟いた。スズの本来の姿だ。思っていたよりも、美人だった。

「・・・?もしかして、キリ?」

スズは名を呼ばれて驚いている。そして、相手がキリだと理解して尋ねてきた。キリの見た目が変わっているのも当然だ。第一世界から離れ、おかしなルールも消えたことで本来の彼に戻った。

「あぁ。久しぶり?だな。そちらの人は?」

キリは躊躇いがちに頷く。そして、ドワーフに視線をおいた。

「彼はラゴット。私の専属の業者になってもらっているの。」

スズは楽しそうに答えた。ラゴットは少し照れているのか、頬を赤くしている。

「なるほど?ちなみに、ここは店だけど、なにか用だったのか?」

キリも少し嬉しく思った。スズとは何度も死線を超えた仲だ。楽しそうにしているのは嬉しい。

「ふふ。実はここに、少し前に討伐した魔物の残り物を売りに来たの。とっておくのもいいけど、少しは流通させた方がいいって冒険者ギルドの職員に言われてね。」

スズの笑顔は本当に楽しそうだった。いろいろなことから、吹っ切れているようだ。

「・・・。なあ、スズ。俺も仲間の一人に加えてくれないか?」

キリは、一人で行動してきた人間だった。スズの今は、自由だった。本人が何に縛られていたのかは分からないが、今を大切にしているスズに、昔の仲間が声をかけることはあまりよくないかもしれない。だが、キリにとって仲間という存在を、今は欲していた。彼は、いまだに縛られていた。そして、その縛りから逃れることができずに、本人が求めている答えを、ただ探していた。スズと過ごすことで、キリは自分を自由にしたかった。

「キリを?別にいいけど。貴方って、私と違って、仲間を嫌うタイプじゃなかったかしら?」

「・・・うん。まぁ。そうだな。今は、誰かと一緒に居ようと思って。邪魔はしないよ。」

「ふーん、そっか。ラゴットもいいかしら?」

スズは同じ仲間であるラゴットに声をかける。

「スズさんが決めたのなら、かまわないっす。それにしても、かわった方ですね?キリさん、でいいっすか?」

ラゴットはじっとキリを見つめた。キリがかわっているのは精霊でハーフだからだ。男にしては美貌である上に、魔力もずば抜けて高い。

「まぁな。スズとはずっと昔に組んでいたんだ。キリと呼び捨てしてくれ。」

キリは一瞬だけラゴットを見つめ返して、肩をすくめた。彼は、ドワーフのハーフだと、言われなくとも理解してしまう。何故なら、ラゴットがドワーフより人間に近いからだ。キリと同じように人間の姿に近いから。

「えーっと・・・。じゃ、キリ。よろしくっす!俺は戦うことが出来ないけど、道具を精錬するのはまかして欲しいっす!」

ラゴットは数秒、間を置いて、大きく頷いた。彼が若いからなのか、あまりこだわらないで答えた。そもそも、キリを仲間にしたスズは、キリに対して不快感をもっていないから、ラゴットは問題ないと思ったのだ。

「それじゃあ、魔物を売りましょう。キリは何か買い物?」

「あぁ。採取の依頼を受けたんだ。冒険者になるなんて考えてもいなかったし。」

キリはそう言うと、一枚の紙を見せた。冒険者ギルドの依頼書だ。

「ふふ。そうね。貴方がこの世界の『ギルド』とよばれる組織に関与するとは思わなかった。」

「・・・それは、どういう意味だ?」

キリは、スズの言葉にひっかかりを覚えて、尋ねた。

「この世界の『ギルド』という組織を理解せずに、冒険者になったの?」

スズは少しだけ、声を落とした。

「あぁ。」

「そう・・・。この世界のギルドはいくつかあるの。冒険者ギルド、商いギルド、ドワーフギルド、ウィンドギルド。他にも大小様々。その中でも冒険者ギルドは最大ね。その分、内情はよくない。私たちが巻き込まれたあの世界と一緒。それに、キリは少し特殊みたいだから、そういうギルドとは絶対に関わらないと思っていたから。」

トーンダウンの言葉で囁きながらキリに伝えた。キリは少しだけ眉間にしわを寄せいていた。だが、口にした言葉はそこまで深刻そうにしてはいなかった。

「それはどこの世界でもあることだろう。この世界だけではないだろうし。どこに行っても同じ境遇の組織はあるさ。それより、スズだってそういう組織にいるのは表面的に関わるつもりだということだろう?同じさ。」

「そうね。上層部が関わってきたら、はねのけられる自信があるし。」

キリの表情は本当に、興味がないと言っている。スズと同じ程度の感覚だろう。


 スズは大きく頷いた。実際に彼がいなくとも何かあったら、ひねり潰せると思うレベルだから。

「さて、買い物でもしようかなぁ。」

キリはスズとの会話を終わらせて、間延びしながら店に入った。店主はスズの持ち込んだものを鑑定していた。どれも一級品だろう。

 スズの倒した魔物は間違いなく、冒険者レベルの最高ランクの力がなければ倒せないものだ。スズが確認した自身のレベルはASSランク。最高ランクはASSなので、間違いなく最高位で間違いない。

 その連れがハーフのドワーフと謎の美貌の男性だったこともあって、お店の店主はじっと観察していた。


「ところで、その魔物はどこで倒したんだ?」

キリはなんとなく尋ねた。見事な毛皮がとれそうだ。

「うーん。ちょっとそのへんで。ギルドの依頼書は隣の町で手続きして、討伐し終わったから手荷物を減らそうって話して、この町に着たの。隣の町も素敵だったけど、この町も素敵ね。」

スズはにこにこしながら話す。キリにはスズが言う、素敵とはどこのことかと考えたが、深く追求はしなかった。

「そうか。俺もああいう魔物を討伐したいが、ギルドに行って、レベルを上げる必要があるみたいなんだよな。」

キリは頷いて自分のカードを見せる。レベルE。最低ランクだ。

「そうね。レベルを更新させるには、ちょっと距離があるけど、西へ行ってみましょう。」

スズはそれをみて、大きく頷く。そして、

「ちなみに、このカード。作りたてよね?しかも、お下がり。」

といって、キリを見た。

「あぁ。お下がりなのは仕方ない、としか。」

「ふーん。とにかく、新しい町に移動しましょう。それまでに魔物を倒せば、ある程度はお金稼ぎになるし、ラゴットの製錬技術も上がるわ。」

スズはちょっとだけ、キリの言葉の真意を探ったが、彼の心は相変わらず、ガードが堅い。

「ここでの買い物と採取はすぐに終わるでしょうし、宿をとって明日、町を出ましょう。」

「夜は動かないのか?」

キリは少し不思議そうに顔を傾けた。

 魔物は夜に活動しているものよりも昼に活動しているものの方が多い。動くなら夜の方がいい。

「ある意味正論ね。ただ夜に活発な魔物は普通よりも強いのよ。その上、弱いものを狙う習性がある。強きものは弱きものとは違う行動をする。どこかの生物学者が遺した資料を昔、読んだの。実際に歩いて実感したわ。」

「つまり、強い魔物避けるために昼に動くのか?」

「弱い魔物を数多く倒した方が収入は増えるし、精錬技術もあがる。ラゴットのレベル上げに付き合ってくれるでしょう?」

「あぁ。理由を聞いて納得した。ラゴットは、それでいいのか?」

キリはスズの説明に頷いて、ラゴットを見ると、ラゴットはまじまじとキリを見た。

「え、ええ?俺、今の話、初めて聞きました、っす・・・。」

ラゴットの青ざめた顔を見て、キリはスズの無茶な旅をどうやって切り抜けてきたのか、旅のあいだに聞こうと考えていた。



つづく


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