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24アイリスの輝き②

このお話もいよいよ最終回……じゃないって。

私まだ花粉症神プリムスをはり倒していないわ。

女の意地は怖いのよ。

 私たちは山間部奥深い地へ進んでいった。ここまで来ると馬車が通ることのできるような道路はなく、ひたすら人がようやく通れるくらいの道である。ドラゴンさえいなければきっと採掘の為に道路が整備されただろう。茂みに隠れて人骨が置き去りにされていたときは本当に恐怖だった。これまでにもドラゴン討伐の為いくつかのパーティーが挑んでいるが、逃げ帰ったり全滅したりしている。人骨はその一部だろう。


 もしかしたらそこに自分たちの骨が加わるかもしれない。そう考えただけで緊張が走る。サラマンドラはパリンの肩の上で身動きせず固まっている。それは本能が恐怖を感じ取っているのだ。しかもなんだかいつもより小さくなっている。サラマンドラは大きくなったことがあるが、小さくもなるのか。

 パリンはサラマンドラをそっとなでることで少しは怖さを忘れようとしているようだ。回復魔法や攻撃魔法もできないパリンに討伐ができなかった時の失敗の原因を押し付ける気は全くないが、やはり気にしてしまうだろう。以前パリンは生活の為、経歴を偽って上級者パーティーにいたが、ある討伐でリーダーのクオーレを回復蘇生できなかったことからクオーレは死んでしまい、そのことをずっと悔やんでいた。まだ上級魔法学校へ行くことを拒んでいるのは後悔からたちなおっていないのか。


「どうやら目的地へ到着したようだぜ」

 森を抜けると草が生い茂る平坦な土地にでて、その先に洞窟があった。その上は高い崖だ。アイリスの原石採掘の為に試験的に洞窟が掘られたが、試掘隊がいったん戻って多くの作業員を集めている間、そこを巣としてよい場所だとドラゴンは認識して住み着いてしまったということだ。

 そのまま付近の様子を伺っていると、空に黒い点が現れ見る間に大きくなった。ドラゴンだ。慌てて身を潜める私たち。


 グルルルル……。


 何かのどを震わせたような咆哮が響く。ドラゴンは洞窟の近くへ来ると羽をバサバサをしてゆっくり降り立った。何かを加えている。それは大蛇だった。まだ生きているらしく、大蛇は体をうねらせていた。初めて見るドラゴンに皆息をのむ私たち。私も今まで絵画で見たことはあるが、本物の迫力と恐怖で足がすくんでしまう。ここまで来たら討伐なんて贅沢は言わない。生きて帰りたい、そう思えてくる。

 どこに攻撃の隙があるのか、誰も討伐できていないだけに探るしかない。


 クックックッ。


 洞窟の中から別の鳴き声が聞こえる。見ると洞窟の中から小さなドラゴンが口を開けて現れたではないか。洞窟に営巣をしたドラゴンは子孫を増やしていた。そして赤ちゃんドラゴンの前へ来ると加えていた大蛇を口の中へ入れる。

 

 バキバキ。


 ああ、これ大蛇の骨の折れる音か。こ、怖い。逃げ出したい!


 赤ちゃんドラゴンがおいしそうに大蛇を食べつくしたのを確認したドラゴンは、再び翼竜プテラノドンのような羽を大きくバサバサさせ飛び立つ準備をする。風の威力は暴風なみで、たちまち私たちの潜んでいた茂みの枝や葉がもぎ取られてしまう。

「うわーっ!」

 つむじ風のような暴風で私たちの身を隠していたものが無くなり、こともあろうにドラゴンと対峙するはめになる。


 蛇に睨まれた蛙となった私たち。ドラゴンと睨み合う時間がとてつもなく長い。さしものケントもいきなり前ヘでて剣を振り回すことをしない。転生者ばかりの上級パーティーにいたケントはそのときの勘が働いているのだろう。

 ドラゴンの後ろから赤ちゃんドラゴンが見え隠れする。わが子を守るために余計にドラゴンが殺気立っているのは間違いないだろう。


 グオオーッ!


 長く続くドラゴンの咆哮のあと、ドラゴンは飛び立った。そして天空から勢いをつけて私たちに火を放った。

 

「デフェンシオ!」

 

 パリンが迫りくる炎めがけて魔法を放つ。精一杯の防御だ。炎を食い止めている間にケントはクトニオスの魔剣を手に構えた。アルフォードとマリスもケントに続いて剣を構え、そのときに備える。

「この防御の壁は長く持ちません!壁が壊れた瞬間に攻撃をします」

 ケントは魔剣を構えたまま何やら唱えている。きっとクトニオスの魔剣の源なのだろう。


 ガラスの割れるような音がした。炎は立ち消えたが、ドラゴンが羽でつむじ風を起こしたり、足の爪で私たちを切り裂こうと何度も近づいてきたりする。

 

 ぐわっ!


 アルフォードがつむじ風で巻き上げられ、洞窟前の草むらに落ちた。

「アルフォード!」

 私はなりふり構わずアルフォードのもとへかけっていく。もう怖いなんて言ってられない。後方からパリンとマリスが私を引き留める声がする。いやもうそんなの頭に入らない。

 

 ガアッツ!


 ケントがドラゴンと大丈夫し、剣を構えるのが見えた。ドラゴンの気がケントに向いている間に私はアルフォードの体を少しでも洞窟から遠ざけようと思い身体を引きずっていく。そんな私めがけて赤ちゃんドラゴンがやってくる。赤ちゃんドラゴンは私とアルフォードに興味を持ち、餌以上におもちゃと思ったようだ。

 そんなの、たまらん!早く逃げなければ!

 アルフォードは体を強く打ち付けてどこか骨も折れているようで苦悶の表情である。懸命にアルフォードを引きずりながら逃げていくが赤ちゃんドラゴンのほうが当たり前に移動が速かった。たちまち赤ちゃんドラゴンは私たちに追いつき目の前で声をあげている。

 怖いってもんじゃない。足がすくんで動けない。


 後方でパリンの叫ぶ声がした。振り返ると後方にもうひとつの恐怖が見えた。

 

 なんてこと!

 

「パリン!逃げなさい」

 後方にいたのはドラゴンならぬ目がひとつの巨人だ。ええっ!?こんなものがいるなんて聞いていない!私たちはこいつにも喰われるのか……。もはや絶望感でしかない。

「地図にあった一文はこれか?もしかしてこっちも人喰いか……」

 恐怖のあまり怯える声でマリスが呟く。一度に怪物とドラゴン……なんて運のない私たちだ。

 今となっては全く役に立たない包丁を持ち震える私。新たな脅威をみてマリスはパリンを助けようとドラゴンから離れた。


 だが……。巨人はパリンを一瞥しただけでその視線をあるものに送った。ドラゴンの赤ちゃんである。 赤ちゃんを見つめる巨人の口からよだれが落ちてくる。


 「道中で見かけた人骨は巨人が食べた後だろう。撤退したほうがいい!」

 さしものケントも前後をドラゴンと巨人に挟まれた格好の立場を考えたようだ。早く逃げなければ自分たちがやられてしまう。パリンにサラマンドラを巨大化してもらってアルフォードを運んでもらわねばならない。だが、そのサラマンドラはドラゴンを前にして見事に固まっている。

 逃げようにも逃げられない私とアルフォードの側へ走り寄ってくるケント。マリスはパリンの側に行った。

「隙を見て僕が魔剣を発動させます。先ずはあの巨人から……」

 とケントが言った矢先のこと。


 巨人は牽制するドラゴンをあざ笑うかのように赤ちゃんドラゴンを素早く抑え込んだ。母親ドラゴンは激しく翼をバタバタとし、炎を吐き出そうとしたが、我が子を前にして決定的な攻撃ができないままでいる。


 この状況に私は体が反応してしまった。

「こどもをいじめるなーっ!」

 無謀にも持っていた包丁を手に巨人へ向かい、巨体をブスブスやった。パリンの拡大魔法を頼むような考えすらなかった。


 そんな包丁切りつけでも巨人からしたら針が刺さった程度だろう。少しだけ緑色の血が流れてきたが巨人はびくともせず、その手で私の体を持ち上げた。

「サユリ!」

 宙に浮かんだ私の体。仲間の呼ぶ声がする。助けて……助けて……。殺される……。

 巨人は私の体を握り締める。

 

 ボキボキ!

 骨の折れる音が激痛とともに響く。体中をえぐられるかのような痛みで意識も飛ぶ。もうだめだ……私の最期だ。


 かすかにケントの声がする。巨人の咆哮も聞こえる。一瞬目の前が白くなったかのようだった。


 気付くと私は地に降ろされたようだ。先ほどまでの痛みどころか体のいたることろの感覚がない。生暖かいものが流れ出ている感じはある。

「サユリ、サユリ……」

 パリンが涙声だ。あれ、どうしたのかな。

「ケントが魔剣を発動させて巨人を討伐した。後はドラゴンだけだったが、なんとドラゴンは巨人から俺たちをかばってくれたんだ。きっとサユリの気持ちがわかったのだろう。ドラゴンはもう攻撃してこない。ほら、そこにいる」

 マリスが言ったけど私はもう何も見えない。視覚がないということは死がせまっているのだろう。

「サユリが死ぬなんて嫌だ……もう誰も死なせたくない……」

 パリンの泣きじゃくる声が聞こえる。死ぬ寸前まで残る感覚は聴覚だって聞いたけどこのことかしら。


 ああ……そうね。死ぬにしてもパリンに豚まんおごってもらったこと、お返ししなきゃ……。

 この場におよんでそんなことを考える?だって真面な判断ができないの。



昭和ネタ、古すぎて「?」と思う方も多いかもしれませんね。

ほんとーにマイナーな小説を読んでくださってありがとうございます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ご意見ご感想突っ込みお待ちしております。

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