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西 遊 補  作者: 原 海象
7/22

第七回 梧空 無実無根なのに天に穴を開けた責任を着せられる

初めまして!原 海象と申します。


今回は『西遊記』の外伝(SS小説?)である神魔小説『西遊補』を編訳したものを投稿致しました。


なお、原作のくどい話やあまり馴染がない用語や表現はカットしております。

原作は千六百年頃の明の時代に書かれたとされております。原作者は董若雨です。


本書は削除版ですので、原書が読みたい方は東洋文庫(鏡の国の孫悟空「西遊補」)をお読みください。多分絶版になっているので図書館で検索すればあるかもしれません。


<西 遊 補>

第七回 梧空 無実無根なのに天に穴を開けた責任を着せられる



突然天上で人が話す声が聞こえ、あわてて上の方を向いてみますと四、五百人が斧を持ち、まさかりを手にし、刀をぐるぐると振りまわし皆で天に穴をあけております。


梧空は思い出しました。

『連中は当番役の守護神でもないし、面構えは悪星や凶星でもない。あきらかに下界の凡人だ。

それがどうしてここで、こんなことをやるんだ?

妖怪変化が人間をたぶらかしているにしちゃ、連中は見たところ一向凶悪の気が感じられない』


考えてみますと

「天が古くなったのが嫌で、古天をえぐりとって新天に代えようとしたのか?それとも霊霄宝殿れいしょうほうでんの再建に、今日は黄道吉日で着工したのか?はたまた天は彫り物いっぱいにさせるのか?もしかして玉帝陛下が俗気を出して、御成り道を一本開削かいさくしていつでも下界に降りてこようとするのか?


例えそうだとしても、やはり下界の凡人がそのような力を持っているわけじゃないし、俺がちょいと尋ねてみればすぐにはっきり分かること」


梧空はただちに声高に呼びかけ

「おかしら、お前さんはどこの国王の部下で、何故こんなけったいなことをなさる?」


その人々は皆刀や斧を置き。空中でお辞儀をしました。

「東南からお見えの和尚さん。私たち仲間は踏空児とくうじと申し、金鯉村きんりそんに住んでいます。

二十年前ある遊行の道士に踏空法とくうほうを伝授され、村中の男女が護符呪文使い、雲の乗り物を飛ばす術を会得しました。それによりまして金鯉村改め踏空村と申し、生まれた男女みな踏空児と申し、踏まぬ空はとてもないほどになりました。

 

ところが、この地に『青々(せいせい)世界大王』、別号 小月王しょうげつおうがおりまして、近頃西天に経を取りに行く和尚さまを一人迎えましたが、なんと地獄の賓客・天宮の逆賊・斉天大聖・水簾洞主たる孫梧空の二番目の師父(最初の師父は「須菩提祖師」)大唐正統皇帝より百宝の袈裟けさと五花の錫杖しゃくじょうを勅賜され、御弟と号を賜りし唐僧陳玄奘ちんげんじょう大法師でございました。


この大法師、俗姓を陳と名乗り、清浄謹直、生草喰わず酒飲まず、人の目をかすめて女を買わず、西天もなかなかに参れましょう。しかし孫行者は、だれはばかれず乱暴のし放題、草刈りのように人を殺し、西方一帯は紅の飛び散る血の道に変るほど殺しました。


人民たちは語り合い、切歯痛根せざるをえません。ここに大慈国王あり、衆生を甚だ哀れみ、とうとう西天の大路を、天にとどく青銅の壁を鋳造し、完全に遮断しましたが、さらに孫行者が長短さまざまに変化出来ることを考え、青銅の壁のところに、さらに六万里の相思網を一枚張り巡らされされました、今や東天西天にはっきり2つに分かれ、舟も車も水も陸も、一つとして通れるすべはありません。


三蔵は大泣き、梧空は足が震え、逃げ出してしまいました。八戒は三蔵の二番目の弟子、沙悟浄は三番目の弟子ですが、二人はもうただもう泣き喚くばかり、三蔵の乗馬の白馬は草一口も喰いません。


そのとき三蔵は混乱の中一つの考えを出し、そこで、

「二番弟子や、あわてることではない。三番弟子や、あわてることでない」と言うや、ただちに白馬に鞭をあて、青々(せいせい)世界に走りこみます。


小月王は彼を一目見ますと、前世の因縁なのでしょう、すぐさま一心同体のように仲良く、青々世界を断固あの和尚に譲ろうとしますが、あの和尚さまはまだ断固受けようとはせず、一心に西天へ上ろうとします。小月王は彼を押しつけ、和尚さまは押し戻し等、数日が経ちました。小月王はやくなく、国中の大賢を招き、一緒に相談しまいました。この時、一人の大賢が一計を案じていました。


『四方に天の人を探しに行き、天が開削されたとき、陳先生に飛び上がって頂き、直接玉帝の殿上で旅券をもらい、まっすぐ西天に至る。これが一番のはかりごとであります』


小月王は反面喜び反面悲しみ、即座に騎兵隊の点呼をやり広く天の人を探させましたが、ちょうどわしらが空中で鴨を捕らえているところにぶつかり、その騎兵隊が一団となって押し寄せ、一人の金の鎧の将軍がやたら触りながら言いました。『まさしく天の人だ』

一隊の兵卒がわしらを囲み一人一人捕まえては、首かせをはさめ、鎖につなぎ小月王の元に送られました。

小月王は大いに喜び、家来に命じて首かせをとり、鎖を外させ、ただちに祝儀の酒を出してわしらに飲ませ、天を開削かいさくするように強制しました。

わしらは他のことはならやったことはありますが、天の開削かいさくの斧ばかりは使い慣れておりません。しかし、今日小月王様からそんなもてなしを受けまして,

刀や斧をよく研ぎ無理やり開削かいさくのまねごとをしてみましたが、長いことあお向いて首が痛くなり、長いこと踏空して足が疲れました。


昼頃、わしらみんなが力を合わせてひとえぐりしますと、ちょいとすきまが空き、えぐりそこなって、霊霄宝殿れいしょうほうでんの床下に穴を開け、霊霄宝殿れいしょうほうでんを丸ごと転がし落としてしまいました。


天では『天泥棒を捕らえろ』とわめきたてて上を下への大騒動、しかし、半刻してやっと静まりましたが、わしらは星まわりがよく、自分たちのしたことなのにまた、他人が罪をかぶってくれたわけで。


その天でわめき続けのとき、わしらも心配だったので、じっと聞き耳を立てておりますと、太上老君と呼ばれる人物が玉帝陛下に向かって何か言うのが聞き取れました。


『陛下お怒りなさるな! このことは決して余人の仕業ではありません。

絶対に弼馬温ひつばおん孫悟空の畜生であります。

只今天の将兵を出動させれば、またしても大事になる恐れがあります。

まずは如来殿にお願いして奴を再び五行山に押さえ込んで、

それから、以後二度と奴を許して世に出すことはまかりならずと如来殿にかけあわねばなりません』


わしらはその話を聞きまして、罪を免れたのが分かり、とにかく他人が着てくれた罪ですので、またここへ参り、勇を奮って穴をあけております。


まずは天から霊霄宝殿れいしょうほうでんが転げ落ちてくることもありません。ただ可哀そうなのは孫悟空、下界の西方への道筋では奴を恨み、天上界ではまだ奴を恨み、御仏のところにまた噂を流す人間がおり、観音菩薩様や如来様が奴をとがめるのを見ては、決して暖かい眼を向けようとしないし、奴はどこへ行くことか」


そばの一人が言いました。

「猿の孫公!何が可哀相かい!もし畜生がいなければ、儂らは何で、ここで苦労するか」

斧を持ちまさかりを手にしたその人々は、みんなわめきたてました。・

「そのとおりだ!さあ悪態をついてやれ」

ただ聞こえるのは空中の大騒ぎ

弼馬温ひつばおん

「酒泥棒」

「仙薬泥棒」

「人参泥棒」

と一人一言わめきだし悪態をつかれ梧空は金の目もかすみ、銅の骨もぐにゃぐにゃとなりました。





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