第九十三話 Re:ゼロから始める後日談②
「今度はなんの騒ぎだっ! な!? アルオデリオ……」
駆け付けたオルデリミーナが明らかに不快感を示す。アルオデリアの後ろには最初に魔族達が露店を出していることを注意した兵士が居た。
あいつがチクったのか。まったく厄介な奴だぜ。
アルオデリオは辺りを見回すとこれ見よがしに大声を上げる。
「オルデリミーナ、どういうことだこれは?」
「どういうこととは?」
「番兵から聞いたぞ、魔族達がここに立ち入ることをおまえが許可したと。おまえ自らの手でこの神聖なる地を汚すなんて信じられん」
呆れた声を上げるアルオデリオを睨みつけるオルデリミーナであるが、なにも言い返せずに唇を噛んだ。
彼女はなにも間違ったことをしていないと思うのだが、それでも魔族に対する差別感情は完全には払拭できないのだろう。アルオデリオの登場に、祭りに参加していた人間達もパラパラと散って行く。
いるんだよな。こういう協調性のない馬鹿って、皆が盛り上がってるところに水を差す奴。そういうのに限って下手に力を持ってやがるから始末に負えないってもんだ。
俺はオルデリミーナを庇うように前に出るとアルオデリオに向かって言い放った。
「この祭りを企画したのは俺だ。文句があるならこの俺に言えよ」
「きさまあっ! 誰に向かって口をきいているっ!」
控えていた兵士が持っていた槍を俺に向けて怒声を上げた。それを制止したのは他でもないアルオデリオだった。俺のことを睨みつけると口元に笑みを浮かべ嫌味ったらしく言う。
「ははぁん。おまえが例のダンジョンで道具屋をしていると言う男か? 随分と奇怪なアイテムを売っていると聞いていたが、まさか魔族と通じていたとはな。どおりで……」
「なにが言いたい?」
ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべるアルオデリオの言葉に、祭りには参加せずに遠巻きに見ていたギャラリー達もざわめき立つ。まあどうせ俺の悪口を言ってるんだろうけど気にしない。
「いい加減にしないかアルオデリオ、レギンス帝国第五皇女であるこの私が良いと言っているのだ、それを」
「そーれーをー? 政のなんたるかも知らない小娘が、おまえが遊びでやっている騎士団とは違い、ここにいる兵士達は日夜命懸けで帝国臣民たちを守っているのだ。エミール副団長まで一緒になって恥を知れいっ!」
その言葉にエミールまでもがしゅんとなり萎縮してしまっている。
「臣民達になにか危害が及ぶようなことがあれば、間違いであったではすまないのだぞ」
「その時は私が全責任を負うっ!」
「その考えが甘いのだっ! 帝国の皇女が魔族を庇ったとあっては臣民達はどう思う?」
痛いところを突いてくる。こいつ本当に嫌な性格してやがるな。馬鹿の癖にこういう所にはよく頭が回るってもんだ。
オルデリミーナの立場上、なにか事が起こった場合第一に考えなくてはならないのは帝国のこと、ひいてはそこに暮らす臣民のことだ。国のトップがそれを無視して他の奴らの庇い立てをするとなったら国家の根本が成り立たなくなってしまう。それを上手い事責めてきやがった。
なんとか流れをこっちに戻そうと俺は口を挟もうするのだが。
「そうならない為にこの私が居ます。アルオデリオ公」
前に出てきたのはローリンであった。
「これはこれは。聖騎士殿」
「帝国に降りかかる厄災は、私とこの剣が全て払ってみせます。よもや私の実力をお疑いではありませんよね?」
ローリンが不敵な笑みを浮かべると、アルオデリオは一瞬緊張した面持ちになるもすぐに余裕の笑みを浮かべた。
「よくもぬけぬけと、そもそもその剣はレギンス皇家に伝わる……まあいい。そこまで言うのであれば、なにかあった時には全責任をおまえとオルデリミーナ、そしてその生意気な男に取ってもらうからなっ!」
そう言うとアルオデリオは兵士達を引き連れてその場から立ち去るのであった。
「結局あいつ何しに来たんだよ」
「ほんと、嫌味な奴よね。アゴ割れてるし」
「おまえは今までどこ行ってたんだよ?」
イカ焼きと焼きそばとたこ焼を手に現れたソフィリーナが、俺の横で舌を出しながら「けつ顎ゴーホームっ!」と叫んでいた。
そこへ、話がややこしくなるからと下がって貰っていたリリアルミールさん達、魔族の皆もやってくる。
「すみません……私達の為にオルデリミーナさんやローリンさんを危うい立場にしてしまって」
「めーむがあいつ殺してこようか?」
「個人的にはお願いしたいけど、それをやったら元も子もないからダメだよメームちゃん」
相変わらず物騒な物言いのメームちゃんであった。
なんだか暗い雰囲気になってしまったけれど、皆は知らないんだよな、この後どういう結末が待っているのかを。
「すまない皆。あの男は私の……」
「従兄のアルオデリオだろ? 大丈夫大丈夫、あいつ馬鹿だからこの後なにか嫌がらせをされても丸く収まるって」
俺の言葉に驚いた様子のオルデリミーナと、それにローリンとエミール。他の奴らはよくわからずにぽかーんとしている。
「なぜおまえがそれを……いや、なんだろうな。おまえが大丈夫と言うのならきっと上手くいくだろう」
「そうですね。べんりくんがそう言うのならきっと大丈夫です」
微笑みながら頷くオルデリミーナとローリン、その横でエミールはきょとんとしているのであった。
「さあてっ! 気を取り直して、そろそろ劇場に行こうぜっ! 俺達の本番はここからなんだぜ!?」
俺の言葉に皆が忘れていたみたいな表情になり慌てだす。マジかよ……ガチで祭り楽しんでんじゃねえよ。
どうしようどうしようと急に緊張しだす奴らを呆れた目で見ながら、まあこれはこれでこいつららしいなと俺は思うのであった。
そして……。
「どちら様でしょうか?」
「私ですよっ! エミールですよ! もうっ、何言ってるんですかべんりさん。び、美少女って私のことですか? もぉぉぉぉぉ」
頬を赤らめながら照れくさそうにモジモジしているエミールを前に、俺はついうっかり同じ反応をしてしまったと反省するのであった。
つづく。




