第二十話 秘密の第五皇女様⑤
女騎士団長に腰紐を引かれながらダンジョン内に入ると、その後ろをヌココビーン、そして名もなき兵士二名がついてくる、途中すれ違う顔馴染みの冒険者達がそれを見ては冷やかしてきた。
「おっ、ベンリー。それはなんのプレイだ? 主従プレイか?」
「うるせーな! プレイじゃねえよっ!」
「今度またエロ本を買いに行くからなー」と笑顔で手を振ってくるのだが、あいつ馬鹿だろう。それをなにか醒めた目で睨んでくる女騎士様が怖いです。
次にすれ違った女冒険者達は、こちらを見ながらなにやらヒソヒソ話をしている。
「あいつやっぱりセクハラしてたみたいよ」
「うわぁ……ぽっぴんちゃんってまだ14歳でしょ? ロリコンビニエンスさいてー」
「あいつ私がこないだ生理用品買いに行った時、妙にエロい視線でこっち見てたのよね。マジきもー」
「聞こえてんぞこのビッチどもがあっ! 今度からナプキン買っても紙袋に入れてやらねえからなああっ!」
俺が睨みつけると「犯されるーっ!」とか言いながら悲鳴を上げて逃げて行きやがった。なんて失礼な奴らなんだ。
久しぶりに娑婆に出たら「ヘンタイ・ロリコン・ビニエンス」とか言う名前で呼ばれるようになっていたのを知って俺はちょっぴり泣いた。
「きさまと言う奴は本当に皆から嫌われているのだな」
呆れた様子で俺を見る女騎士であるが、結構酷いこと言うのねこの人。嫌われてないからね……ないよね?
「ひっひっひ、レギンス団長殿。あれは嫌われていると言うよりは、寧ろその逆でしょう」
それを黙って見ていたヌココビーンが気味の悪い笑い声をあげながらそう言うと、女騎士は「そうなのか?」と不思議そうな顔をして答えるのであった。
爆発現場の地下16階までは徒歩で行くことになるのだが、途中7階からは自然の竪穴が出来ておりそれを利用して籠で降りられるようになっている。これはコンビニへ行き来しやすくなるようにと、冒険者達が有志でお金を出し合い作ったもので当然俺も出したよ。しかもかなりの額をなっ!
この籠は小さいので同時に乗れるのは最大で二人までなのだが、やはり大人二人だとかなり狭い。しかも一人が鎧を着こんだ騎士ともなると尚更だ。
「きさまっ! もう少しそっちに詰めないかっ!」
「いや、んなこと言われてももうこれ以上は無理ですよ」
「きゃっ! ば、ばかものっ! 変な所を触るんじゃないこの無礼者っ!」
「触ってないですよっ! て言うかイタタっ! 鎧の装飾が刺さって痛いですってっ! もう脱いでくださいよそれえっ!」
「な! ななな! なにを破廉恥なっ! ええいっ、いやらしい目で見るなこの変態があっ!」
俺と女騎士はぎゃーぎゃーと喚き合いながら降りて行くのだが、これたぶんダンジョン中に響き渡ってるんだろうなぁ。
それにしても、罵られるのはなんと言うか……ちょっぴり変な気持になっちゃうから……いや、なんでもない。
そうして5分もしない内に地下15階に着き籠を降りると、俺の(バイト先の)コンビニが見えた。
「あぁ……懐かしの我が家。あっちの世界で働いてる時はこの明かりを見る度に憂鬱な気分になったけど。今ではなんて暖かい光に見えるのだろう……」
そんなことを涙ながらに言っていると中に見える二つの人影。
商品のお酒をカウンターの上に広げて飲んだくれているソフィリーナと、お菓子をいくつも開けて床に広げて食べているぽっぴん。
ん? なにやら他にも何人かの女子が居るような? あいつら……。
「人の店で朝っぱらから女子会開きやがってえええええっ!」
「なんだっ!? 急に大声を上げるなっ! 暴れるならばこの場で組み伏せるぞ馬鹿者っ!」
「だってぇぇぇぇぇ。あいつら、あいつらぁっ! 俺が拘置所で毎日健康的な食事を摂らされているってのに、あんなジャンクで不健康な物を摂取してやがるんですよぉぉぉぉ」
「なにを泣きながら言っているんだ。健康的ならば良いことじゃないか?」
「たまには不健康な物も食べたいんですよぉぉぉぉおお! 体に悪い物だからこそ美味しいんですよぉぉぉぉ」
嗚咽する俺を見て困った表情をする女騎士であるが、何よりも許せないのは俺がこんな目に合っているってのに、それを心配するでもなく自由を謳歌しているあいつらのことがマジで許せない。
あいつらなんかもうバイト仲間でもなんでもないやいっ! なんかそんな風に思ったら悔しくて涙が止まりませんでした。
そんなこんなでそこからはまた徒歩で16階まで降りると、湿った空気の充満するフロアーへと出る。
硫黄の臭いが鼻につくのだが、温泉の臭いだと思うとそれほど不快に感じない。
源泉の湧き出る所まで来ると湿気も増し、また気温も上がって肌も湿って汗ばむ、衣類がべっとりと張り付く感触が気持ち悪い。やっぱり風呂場には服を着たまま来るもんじゃねえな。
ふと横を見ると女騎士様も同じ様子で、やはり暑いのだろう。額にじんわりと汗をかきなんか頬もちょっと上気している感じで息遣いが妙にエロい。
いかんいかん、変なことを考えているとまた怒られてしまうかもしれない。それはそれでご褒美のような気もするが今は自重しよう。
「それではこれより、実際に爆発のあった現場で実況見分を行う」
いよいよ始まった。
ここからが勝負だ。俺とクロウ・ヌコビビーンの騙し合い、高度な駆け引き勝負の幕が開くのであった。
つづく。




