新生活
あれから一ヶ月が過ぎて退院することになった、本当に魔法少女というのは凄い、リハビリもしていたのにとんとん拍子で回復していった。
「やっと帰れます。」
病院の入口で感慨にふける、早く治ったと言っても一ヶ月はあまりにも長い、それに下の世話までしてもらったのもあれだ、人としての名誉がガリガリ削れた、無力って辛い。
「無事退院ですね、エイナ!」
ヒカリは数日早く退院していた、おんなじくらいで治っていったがリハビリの体力からか差がついた。
改めて用意してくれた私服を着て此処にいる、温かいズボン、セーターにコート、実用性のある品を選んでくれたようだ。
「何から何までありがとうございます。」
入院している時にもずっとやり取りをして大変そうだった、色々退院後の事を考えて手配していたみたい。
おれは何もしていないのに全部してくれた、医療費も払って貰ったが保険証もないので馬鹿にならないくらいお金がかかる気がするがヒカリは教えてくれなかった。
「これくらいお安い御用です!」
何がお安いのだろうか、協会の人のお見舞いに対応しつつ大人と手続きもしていた。
「あんなに一人で色々していたのにですか?」
「まあ、こういうのは慣れっこですね。」
そう問いかけてみると遠い目をして笑う、しまった、ヒカリはあまり家族の人と過ごしていないんだった。
思わず地雷を踏んでしまった、そんな顔をさせるつもりなんて無かったのに。
「……寒いですね。」
どうにか話を変えようとしたがおれはびっくりするほど会話下手だった。
「気を遣わなくても大丈夫ですよ……ですが確かに寒いですね。」
優しいヒカリは乗っかってくれた、逆に気を遣われいている……!
本当に本当に自分の口下手が恨めしい、なぜおれはこんなレベルなんだ、そら今までろくに会話してなかったから……
「もうすぐクリスマスです。」
開き直って話を続けることにした、会話が弱すぎるがどうにか通すしかない、円滑なコミュニケーションとか出来ないですけど?
「もうこんな時期ですか、冬の冷たさも師走の忙しなさも無縁でしたからね。」
白い息を吐きながら言葉を続ける、世間はクリスマスムード一色、そろそろイルミネーションもあったりするだろう。
「あいにく曇り空ですし風情は少しだけです。」
いっそ雪でも降ってくれれば気分も上がるのだがじんわりと暖かい陽射しを遮る灰色の雲が空に覆い被さって薄暗い。
「取り敢えず新しい住まいに案内するので行きましょう。」
弱すぎた会話を方向転換して切り替えた、ひとまず道を歩き出す。
「どれくらいかかりますか?」
「歩いて三十分ぐらいですね。」
「地味に遠い……」
しょうがないが病み上がりで歩くのは億劫ではある。
「歩くだけの価値はの価値はありますよ。」
ニコニコとしながら歩を進めるヒカリは見てのお楽しみだと言う。
それから三十分きっかり歩きたどり着く。
「でっっっっかい。」
IQ3しかない感想が出るが本当にそうなのだ、見上げる、何百mとある天を貫く様な塔。
「ある魔法少女が建てた避難所……らしいです。」
ヒカリさんも又聞きなのかはっきりと断定はしない。
「こんなものあるんですか……」
「夜神さんが言うには魔法少女以外には秘匿されている世界一安全な避難場所らしいです。」
「ええ……」
法律とかどうなっているんだろうか、明らかに現代的でもこんな建物あるなんて知らなかった、うん深く考えるのは辞めよう。
「私も中に入るのは始めてですよ、ここ数日は夜神さんの家でお世話になっていました。」
ヒカリもドキドキワクワクしている、おれも結構気になる。
そんなデカい塔のデカい自動ドアに入って行く。
「よく来たのう、エイナ、ヒカリ。」
出迎えたのはやたらと古風に喋る少女だった、ヒカリと同じような真っ白な髪と、黄金に輝いている眼、身長はあまり高くない、140cmくらい、小学生でも違和感のない幼気があるが、紫陽花の柄が描かれた浴衣を着こなしている。
「おばあちゃん!?」
「はい???」
だがそんな事をぼんやりと考えているとあり得ない事がヒカリの口から飛び出す、おばあちゃん?どう見ても老人の風貌では無いし理解に苦しむ。
「わしがこの極楽塔の管理人、白雪アカリじゃ。」
ヒカリと同じ白雪姓に似ている容姿、家族構成は伯父と祖母と言っていたし信じがたい事に、本当の本当にマジでガチでおばあちゃんと言う事になる。嘘でしょ!?
「おばあちゃんの仕事ってここだったんですか!」
ヒカリの顔も驚愕に染まっている。おれもびっくりしてる。
「ヒカリが魔法少女になったのも最近でなあ、言う事が出来なかったんじゃあ。」
残念そうに首を振るも童のようにしか見えない、見た目と言動の不一致に脳がバグる。
「あの!」
「なんじゃお前さん。」
「どう見ても少女に見えるのですが。」
そう言ってもクスクス笑うアカリさん、自嘲なのか失笑なのか分からない。
「魔法少女と言うのも難儀じゃなあ、なんせ60超えたババアが幼気な少女に見えるなど達が悪い。」
魔法少女と言うのに年齢制限ないんだな、見た目詐欺だ、歳を公言しない魔法少女も多いので年齢をあてるのはほぼ不可能だ。
「魔法少女である証明として少し見せてやろう。」
そう言うとあたりの景色が一変する、何かに囚われるように白い背景に一面に花が木が、宝石が彩るように、安らぎの音が聞こえ、鳥達も歌い出す、正しく絶景と言う他ない。
「これが特別名誉顧問、極楽の魔法少女じゃ。」
数秒達はっとする、今まで見ていたのは幻覚?五感に直接作用するとんでもない魔法。
只者じゃない、ヒカリのおばあちゃん。
思うたより苦戦
結局遅れてるのでは?
新しい章
魔法少女登場
明日更新




