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魔法少女の光と影  作者: 生姜焼き
陰陽コミュニケーション

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言伝のマジルガ


 黒幕を名乗る男は、引き下がり距離をとって警戒するおれ達のことなど気にもせず、楽しそうに語り出す。


「ただ黒幕と言っても言葉足らずで正確に言わねば不親切だ、補足をしなければならないな、何よりこの俺が説明不足などあってはならない、伝えねば、伝えねばここにいる価値など無いのだ。さて、改めて自己紹介しよう。」


 長袖のシャツにジーパンとシンプルな服装に似合わない閉じた口の描かれたマスクをつけた男は、大げさに両手を広げて、高らかに声を上げては堂々と叫び出してゆく。


「俺が、俺こそがマジルガを使いお前達を誘導してあの魔法氾濫を引き起こした張本人だ。何故こんなことをしたのか、そもそもあれで何をしようとしているかも疑念が尽きないと思うが後に話そう、それより自己紹介にあたり言っておく大事なことが一つある!」


 一人盛り上がり冬先の冷たさを打ち破る程ボルテージが上がっていく。


「名乗る名は無いと言ったが俺にも名前はなくとも肩書きが一つだけ存在する!」


 張り上げた声は響き、男はその場で軽く跳び、家の屋根の上に着地する人外の軽業をみせて片手を胸に手をあてる。


「“言伝のマジルガ”と、呼ばれている。どうかよろしく魔法少女よ。」


 遠くの宇宙に映る魔法を背景に、堂々と響き渡るその声は、はっきりと自分がマジルガ(人間ではない)と告げた。


「嘘……」


「マジルガ!?」


 それは目の前に突然瞬間移動したとしても到底信じられなかった。


「嘘と言われるのは心外だな、極めて誠実に話しているのだが。」


「……そんな流暢に喋るマジルガは聞いたこともありません、それにどう見ても人間としか思えません!」


 そうだ、マジルガは千種万様であるがこんなに人間そっくりなマジルガはいない、人間に化けるマジルガはいても喋ることはしない。それに言伝のマジルガなんてマジルガをおれは知らない。


「まあそうだな、俺もマジルガと言うには人間に近すぎる。だから説明が難しいんだが一つずつ解説しよう。」


 何処からか眼鏡を取り出し装着すると、屋根の縁に腰を下ろす。


「ちゃんと知っている事を全部話して下さい。」


「もちろん、話を聞いてくれるなら全て語ろう、質問は随時受け付ける。」


 眼鏡をクイクイ動かしてるのを見るにシュールでコミカルだ、本人は真面目にやってそうではある。


「事件の概要を説明する前に前提知識として俺がマジルガであることは伝えたので、人間に近い姿をしている訳を説明するがマジルガの成り立ちは知っているだろう。常識だ、社会の教科書にも載っているような単純なこと、30年前に人類は魔法と接触した、原因不明の魔法現象は直ちに世界を蝕んで、愚かな人の業か魔法は人間の夢の源泉に辿りついてしまった。こうして後にマジルガと呼ばれると魔法が生まれた、歴史の方はどうでもいいがこのマジルガが生まれる過程が重要で、ありていに言えば人持つ普遍的欲求が魔法によって具現化される訳だがこれはカントの集合的無意識のような、一個人の潜在意識ではなく全人類の夢の総体から出力されているのでこれを夢の源泉と呼称しているが普通にマジルガが生まれようと俺のようなマジルガは存在し得ない、なぜならマジルガは〜〜のマジルガと着くように願望の一欠片を持って生まれてくるもの、人の願いの一部を持っていたとて人にはほど遠い、ここで言伝のマジルガたる俺が人のような姿をしている事に繋がってくるのだがマジルガが生まれる過程が俺は違うのだ、通常マジルガは無意識下から生まれるものだが何事にも例外があるように……」 


「ちょっと待ってください。」


 淀みなく言葉を重ねて畳み掛ける様に思わず光さんも待ったをかける。


「なにか質問が?」


「説明が長いです、こちらが口を挟めません。」


「む、それは失礼。こうして話が出来る事に舞い上がってしまった。次から気をつける、何処か分からないところはあったか?」 


「……あなたが特殊な事情でマジルガになった事は理解しました。」


 光さんは眉間を押さえる、おれもまともに考えると頭痛がする情報の処理に悩まされる。


「それだけ分かってくれたら結構だよ、特殊な事情を簡潔に話すと俺が人に似ているのは俺が元人間だからだ。」


 ひどくあっさりと事もなげに驚愕の情報を披露しておれ達の時が止まる。


「は?」


「え?」


「信じていない、というか理解出来てないか。説明も足りていないからな。」


 仕方がないと首を振ると改めて語りだす。


「詳しく言えばマジルガは無意識から生まれるものだが、ここが群衆ではなく個人に狭まり、無意識から自意識に広がり、人生丸ごと魔法に呑み込まれれば俺みたいなのが生まれる訳だ、わかるだろう魔法少女、このバカみたいな理屈をお前達はどう思う?」


 多分これは事実で理解し難くても、その言葉を聞けば疑う余地もない。

その話の言う通りなら確かに人の形したマジルガもいるという説得力がある。


「あなたの話は真実なのでしょう、残念ながらいきなり言われても私達はあなたの問の答えはわかりませんが……」


「そりゃそうだ、悪かったないきなり聞いて。考える俺自身もわかりやしないのだからしょうがない、何分知恵があると余計な考えも思いつくのさ、何故マジルガ()は生まれるのかなんてな。」


 自嘲するように笑いだす。


「誰しも一度は考えると思います。」


 おれも答えが知りたい、というよりみんな知りたいだろう。


「優しいな、気付いてはいるのさ理由なんてないと、人もマジルガも奇跡的な産物でも何かの必然ではない、そういうもんだ。」


「それでいいんですか?」


「いいんだよ、マジルガでしか無い俺が考えても仕方ないだろう。言伝の名を持つ者の言うことなんて気にしないでくれ。生前言いたいことが余程あったのかお喋りしたいだけなんでな。」


「あなたの事は分かったので次の話を……」


 頭を抱えて光さんは話を強引に切る、話が脱線してきたので軌道修正してきた。


「そういうならこれ以上は野暮か、俺が元人間だろうがマジルガに過ぎないことが分かればいい。」


 背中を曲げて手を組む様は人間にしか見えなかった。


「さて、本題に入ろう、事件の目的と経緯を説明をするが後ろのアレがわかるだろう。」


 親指で後ろの魔法を指す。見れば分かる肌で感じる、マジルガの、魔法少女の使う魔法の起源と呼べる魔法そのもの。


「わざわざ根源の魔法をあっち側から引っ張ってきてやるなんて大それたことするんだ、苦労したよ。」


 あんな魔法がある時点で異常事態だ、本能が囁く、あれはこの世界にあってはならない代物だと。


「普通の〝鍵〟の魔法を引き出すのとは訳が違うからな、相当な力押しと緻密な下準備が必要だった。」


「……何が言いたいんですか。」


「ここに至るまでの経緯だ、〝鍵〟……分かるだろう、選ばれしモノが使える魔法にも資格がいる。一般人に魔法は使えない魔法少女の特権、魔法に繋がる〝鍵〟がお前達にもある、それも特別な〝鍵〟があったからこの事件を起こした訳だ、魔法少女の中でも異質である自覚はあるだろう?」


「心当たりはありますが具体的なことは知りませんよ、というかあなたが何故そこまで知っているんですか。」


「衝撃の新事実でもないと思うが。魔法を使うなら常識レベルの話だ、〝鍵〟についてはこれ以上のことは知らんし魔法少女の方が詳しいはずだ。黒咲夜神は教えなかったのか?」


 会話を飲み込むのに精一杯で、話に入れない。


「夜神さんとも面識があるんですか?」


「当然あるさ、三十年前に魔法少女とやりあったのは俺達だぞ、これ以上は蛇足だから詳しいことは黒咲夜神に聞け、〝鍵〟も秘密にしていたようだし答えてくれるかは知らんが。」


 すごく聞き捨てならないことをピシャリと切り捨てて光さんもおれも絶句する。


「ここからの経緯は知っての通り大量のマジルガを駆使しお前達を誘導して強引に作った綻びに近づけ刺激する、そしてごらんの有様だ。」


「待って下さい、話を置いて行かないで下さい。」


「なんにも分かりません。」


「しかし深く語るなら夜が明けてしまう、三十年前から今日に至る昔話をするのも個人(言伝のマジルガ)的にはやぶさかではないが時間も無限に使える訳でも無くてな、寄り道するほど余裕が無く目的を語ることにする。」


 たそこまでだ語ることは無いと突き立てる。


「まあ落ち着いて謹聴しておけ、目的を知ればどうでも良くなるぞ、それに見合うだけの目的がある。すなわち全人類のマジルガ化だ。」


「……正気ですか?」


 聞けば誰もがあり得ないと言うような、世界征服を大真面目に企む悪の組織のように真剣に、嬉々として語り始める。


「正気だとも、その為のアレだ、純粋な魔法にマジルガや魔法少女が触れればひとたまりもない、己を成す魔法が呑まれ狂い、良くて消滅悪くてそうだな、存在が変わり果てた魔法(バケモノ)になるだろうが。」


 おれの脳裏にあのマジルガキメラがよぎる。


「触れるのが普通の人間だったらどうだ、魔法を持たない者が魔法に呑まれれば……もう分かるだろ?俺と同じ元人間のマジルガの出来上がりだ。」


 確かに、確かにその通りだろうがそれでは全人類のマジルガ化にはほど遠い。


「そう単純じゃないでしょう?」


 光さんは怪訝な眼差しで見つめる。


「まあな、人間ひとりひとりあの魔法に放り込む訳にもいかないし、なんならあの程度の魔法では一人マジルガにするだけで精一杯だ、全人類のマジルガ化の足がかりとしての実験に過ぎんよ。」


 具体的に、夢物語ではなく現実として見据えて計画が語られる、壮大な目的に繋がる事件の全貌。


「ああ、タイムリミットだ、話もここまでにしよう、不純物の多いこの世界で純粋な魔法は形を保てない。あれの回収しなければいけないのでな、すまないがお前達に構ってやれない。」


 そう言うと今まで明るかった雰囲気が一変して、冷たい冬の空気がピリピリと張り詰めて緊張感が支配する、言伝のマジルガはさっきまで楽しげにしていたのが嘘のように機敏に家の縁から飛び降りた。


「そうやすやすと見逃す訳にはいきません。」


 今まで相槌をうつのに留まっていた光さんが構える、マジルガとの戦いでも見せなかった本気の臨戦態勢。置いてけぼりのおれは思わず息が詰まる。


「分かってるじゃないか、話が早くて助かるよ。そうだ、俺を止めるにはそれしかない、会話できようが所詮お前達に危害を加えたマジルガに過ぎない。ただ少しばかり理解が足りないな。」


 片鱗さえ見せなかった表層に顕現する敵意、緊迫した雰囲気を加速させる。


「殺してでも止めるべきだ、ここから先は死人がでるぞ。殺意を持って敵を討て、それが敬意だ。俺も本気で向き合うとしよう。」


 光さんは動かない、おれも動けない、ただ言伝のマジルガだけが動き出す、片手でマスクを剥ぐと口を開いた。


「【俺こそが言伝のマジルガ、一連の騒動の黒幕にして人類に仇なす者、言伝の名において遍く人間をマジルガに堕とす〝星堕〟を知らしめに来た、宣戦布告だ魔法少女、己が魔法を持って俺を越えて見せろ。】」


ずっと声がでかい言伝のマジルガ

設定はふわふわしてるかも知れない

大事な事全然言ってないし

明日更新

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