食事は人生と心得よ
ゲームセンターより移動し、ショッピングモール内のフードコートにやってきた。
「めっちゃ広いですね……」
「凄い賑わっています。」
人だかりが出来上がって大変盛況のフードコートは、老若男女全ての人が集まっており、光さんと雑踏に揉まれていた。
「取り敢えず席に着きましょう。」
二人程スペースの空いていた隅っこのテーブルに荷物を置き昼食を探す。
「どうします?何を食べましょうか。」
当たりを見回して考える、食事をするにしてもここはフードコート、様々な飲食が立ち並ぶもので決めるには魅力的なものが多過ぎる。
「たこ焼き、ハンバーガー、いや唐揚げも……」
人気の食べ物が集う中で、今食べたいものを決めあぐねている。
光さんの食べたいものを俺もおれも選ぼうかとも考えていると。
「うーん、決まらないならば、全部食べてしまえば良いでしょう!」
光さんは席を立ち手始めにといったように唐揚げのお店に並び始めた。
「全部は無理だと思いますけど……」
苦笑しながら光さんのあとを追い行列に一緒ならんだ。
「いやー楽しみです!好きなものたくさんを頼むことはなかなかないですから!」
ウキウキで待ちながら話すので随分楽しんでいる。
「ご注文は何にいたしますか?」
少しばかりならび注文までやってきた。
「唐揚げ弁当を一つ。」
「あ、ゆず塩唐揚げ弁当をお願いします。」
光さんはオーソドックスな唐揚げを、おれはゆず塩唐揚げを頼んだ。
「お会計は1860円になります。」
会計を済ませて出来上がりを待つ。
「私は唐揚げはシンプルなのが良いですね、エイナさんはゆず塩唐揚げが好きですか?」
「ええまあ、なんというか個人的にゆずの味付けが好きなので。」
おれは唐揚げにレモンをかけるタイプだがゆず塩も大好きだ、お肉に柑橘類のフレイバーはとてもあう。
食事に関しては結構密かな好物がある。
「お待たせしました。」
「お、出来ましたね。」
そして出来た唐揚げ弁当を持って席に帰る。
「エイナさんはここで待っていて下さい、ならんできます!」
そう言って光さんは人混みに消えた。それにしても美味しそうな弁当だ。ちゃんとできたてほかほかで沸き立つ香りに思わずお腹が空く。
そんなごはんを前に何分か待っていると光さんが戻ってきた。
「お待たせしました!空いていて助かりました。」
両手を使いハンバーガーとたこ焼きを持つ光さんがニコニコと昼食を置く。
「ああ飲み物買ってきますよエイナさん、何がほしいですか?」
「お茶でお願いします。」
光さんが自販機に向かった。
程なくお茶とサイダーを買ってきた。
「食べますか。」
「そうですね。」
二人顔をあわせていただきますをして、食べ始める。
「「いただきます。」」
ほかほかの唐揚げを口に入れた時に感じる。
美味い、さっくさくの衣に合うように揚げられたジューシーな肉に絡みつくゆず塩のハーモニーが舌をなぞる、さらにご飯を口に含めば肉の旨味と米の甘みをダイレクトに伝えてくる。
「美味しいですね、エイナさん。」
「唐揚げが美味しいです……!」
「唐揚げはなんでも美味しいですね!不味い唐揚げは見たことありません。」
「みんな唐揚げが好きだからです、好きは料理を美味しくします!」
唐揚げだけに限った話ではないがみんなが好きな物はそれだけ洗練されている、好きになるだけの理由がある、人は大体お肉が好き、これは真理。
「それにしても本当に幸せそうにご飯を食べますね、見てて気持ちいいですよ。」
「そうですか?そんな顔してますか?」
光さんにそう言われると気恥ずかしい、少し照れる。
「とても笑顔ですよ。」
「そうなんですね……」
自覚していなかった。
「たこ焼き食べますか?」
光さんはつまようじで刺したたこ焼きをこちらに向けてくる。
「いいんですか?」
食べますかと言われれば一口食べたくなった、食い意地と言われてしまうが人に勧められると食べたくなる。
「もちろん良いですよ。ほら口を開けて下さい。」
ぴしりと硬直する、これは、あの、いわゆるあーんというやつではないか。
光さんはなんでもないようにしてくるがおれにはどうも大したことのように思える。
「食べないんですか?」
「いやいただきます。」
それでも食べない選択はないので口を開けて、光さんにたこ焼きを放り込まれる。
ふわとろの生地に歯ごたえのあるたこに舌鼓をうつ。
「やっぱり美味しいですね……」
「それはよかったです。」
その後は他愛もない好物の話をしながらご飯を食べ、あーんにドギマギしながら食事を終えた。
「「ごちそうさまでした」」
「食事もしましたし服を買いに行きますか!」
ここからショッピングの本番だとはこの時知る由もなかった。
ご飯を食べるときは基本口が緩んでいるエイナちゃん
更新は明日