第40話 「決戦part2」
ーレイス領ワールの執務室ー
《良し‼ではドラグの在室を確認し魔導具を発動させよ!》
《畏まりました‼》
ビレイは監視用オウルを操る魔導師にドラグの動向を探らせる
《…ドラグ王は執務室におります…魔導具は目の前にあります…》
《よし、今だ‼魔導具展開‼》
《魔導具展開‼》
ついにワール達の魔導具が発動した
ープシューーーッ‼ー
『な、何だ?これは?』
ドラグ王は机の上に置かれた魔導具から煙が噴出された事に驚いている
『ぐっ⁉うぐぐ…』
ドラグはその煙を吸い込み苦しみ出した
『だ、誰かあれ…』
ーガターンッ‼ー
ドラグ王は兵を呼ぶ暇もなくその場に倒れ込んだ
その音を聞き付けた健二達ドラウグルが私室に入ってきたが健二達も直ぐに昏倒してしまった
《ワハハッ‼やったぞ!》
その様子をオウルの目によって見ていたワールは歓喜の声をあげた
ワール達が用意した魔導具、それはカズヤが指摘した生物兵器に近かった
カズヤの前世での認識に照らし合わせるとその兵器は「ナノ兵器」とでも呼べば正しいだろう
ワールの部下はナノサイズの「魔物」を誕生させ
それに毒性を持たせ空気中に散布する事で生体を持つドラグ達を暗殺する事を可能にしたのだ
勿論バンパイアもアンデッドで不死性はその中でもかなり高位だがワールは禁術の中で
肉体の組成を崩壊させる毒を発見し、それを兵器へと昇華させる事に腐心していた
これは中立的なゴーレム族と自身達レイス族(肉体を持たない種族)を除いて
全てのアンデッドを殲滅可能にする大量殺戮兵器なのだ
勿論この兵器を使えば人気も魔物も獣も殲滅可能でワールはドラグ王を排除した後
全世界の覇王として討って出るつもりであった
《良し、オウルに中和剤を散布させろ‼証拠を残さん様にな》
《はっ‼》
これでワールの企みは完遂した
後は白々しく登城して下手人を突き出し処刑せしめれば全王の座は自ずと転がり込んでくる
《登城後直ぐにカズヤを捕縛して有無を言わさず首を刎ねてやろうぞ》
ワールの執務室には彼の卑屈な笑い声がいつまでも響いていた
ーネクロポリス場内ー
「じゃあ皆さんはこちらで待機していて下さい。あ、ドラグ王様達はちゃんと隠れていて下さいね?」
カズヤはいずれドヤ顔で登城するであろうワール達を待ち受けるべく配置を進めている
「ワシはここで良いのかの?」
「あ、フェルトさんは玉座の後ろでスタンバって下さい」
「「すたんば」?…良く分からんが待機という事で良いのか?」
「あ、そうですそうです‼」
この場には捕縛され洗脳されている筈のフェルトが何故かいてカズヤの指示に従っていた
カズヤはフェルトが故意に握らされたニセ情報をもたらした時、口封じに殺されるかも?と
「分身体」を発現しワール達にわざと捕縛させていたのだ
予想は外れ殺されはしなかったが洗脳され下手人に仕立てあげられた事を考えればある意味正解であった
「グズリ王様とガイア王様はこちらから指示するまで城の外で待機して下さい。
お呼びしたらさも今馳せ参じた体で謁見の間に入って下さいね」
《ゲゲッ‼カズヤは面白ぇ見せ物を用意するなぁ‼》
((…分かった。これもワール王に自身の罪を自白させる為だからな))
二人と彼等の私兵達は各々城壁の外で待機する為一旦城から出て行った
「えーっと、これでやり残しはないかな?あ!念の為にドラグ王様達の遺体をここに用意しなくちゃ!」
そう言うとカズヤはドラグ王と健二達ドラウグルの遺体を具現化し謁見の間の床に横たわらせた
『これは…何と言う能力なのだ?』
「あ!ドラグ王様、出てきちゃダメですよ?次の間に控えていて下さいね?」
『む。分かった。』
ドラグ王はカズヤが発現した自分の遺体に驚愕して思わず出て来てしまったが
カズヤにたしなめられて謁見の間の隣にある次の間に慌てて引っ込む
《カズヤ様、ワール達がもうじき城に到着するようです》
「あ、じゃあ皆さんスタンバって下さい‼ラクルさんは如何にもな感じで此処で泣いていて下さいね」
《フフッ、了解☆》
(い、色っぽいなぁ…)
カズヤはラクルの悪戯な笑顔に危うく魅了されそうになりながら自身の部屋に戻る
これで準備は整った。後は白々しく参上するワール達を出迎えるだけである