第22話 「突然の再会part1」
ー荒野の果てー
「…と言う感じで良いですね?」
「うむ、ではこの場合は…」
カズヤ達は先にあるネクロポリス(多分)に入る前に十全な打ち合わせをしている
「もし受け入れられなかったら手詰まりですね…」
「その時はその時じゃ。今度は大地の果てを目指すなり以前の様に洞穴を見つけて暮らすのも悪くなかろうて」
「そうですね、ネガティブになっても今更ですしね」
二人の気持ちは既に達観していた
お互い拾った命が尽きる迄せめて誰かを傷付ける事なく過ごせば重畳、と考えていたのだ
「それでですね、ダメだった場合…」
ーシュンッ‼ー
「?カズヤ?何処じゃ⁉」
フェルトが気付くとカズヤが目の前から音もなく消えていた
「…ってしようと思って…あれ?」
カズヤは目の前にいたフェルトが消えた事に気付いた
それどころか周りの景色も消え今は「真っ白な空間」にいる
「…ここは…」
「ふむ、カズヤよ。久しぶりじゃのう」
「お、大神様っ⁉」
カズヤは驚き過ぎてアゴが外れそうになった
いや、実際外れて地面に転がった
ーカララ~ン…ー
「驚くのも無理はないが身を挺しての全力ギャグはいらんぞぃ?」
大神様はカズヤが落とした顎の骨を拾ってカズヤに手渡した
ー…カポッー
「ふぅ…大神様、何故此処に?というか良く俺が分かりましたね」
「バカ者、ワシを誰じゃと思っておるのだ?「円環を護る存在」じゃぞ?」
「そうでしたね…じゃあ…?」
「うむ、全て見ていた訳ではないが此処までの経緯はある程度把握したぞぃ、ついさっきな。」
「と言うと?」
「お主も知っておろうが。ワシは全ての事象を把握はするが認識はしておらん。
己の意識を1つの事象に向ける事なぞ滅多にないからのぅ」
「あ、そうでした。では何故今回俺の所に?」
「…気付いておらなんだか…お主、少し前に「魔術」を使おうとしたろう?」
「…あー、確かに。ショボい火が出て諦めましたけどね」
「…ふぅ~、お主…別の世界では何をやっとった?」
「え?ゾンビからデミ・ゴッドになって…神になりましたよね?」
「疑問符で返すでない。お主は確かに神の一員じゃったぞぃ」
「だけど…気付いたら転生「したて」に戻ってて…ノアに避けられパージは…人間に討たれました」
「ふむ。その様じゃの…ところでカズヤよ、何か気付かんか?」
「え?…まぁ初めからおかしいな、とは思いましたけど…気付いたか?と言われると…」
「お主は神の域に達して何を学んどったんじゃ?全く…リリスは何をしとったんじゃ…」
大神様から説明された「このターン」の話はカズヤの耳(無いが)を疑うモノだった
そもそもカズヤが転生された世界が「表面」だとすると今カズヤがいる世界は「裏面」なのだそうだ
ーパラレルワールドー
そう言われてカズヤも何となく事情を飲み込めた
カズヤが成り上がって(?)人々を助けたあの世界の裏で
「選択次第ではそうなっていた可能性」があった幾つもの世界が折り重なって存在している
カズヤの選択が、行動が生んだ「結果」が「前のターン」だったのだ
しかしカズヤは人として死んで異世界を渡りゾンビとして転生しその後神へと至った「特異」な存在だった
その影響は円環のバランスを崩し一時大神達によって消滅させられる程の存在だったのだ
カズヤが「完璧な存在」として在れば問題はなかったが人としての弱さが
「揺らぎ」となって己の存在自体をタイムパラドックスへと無意識に投じてしまったのだ
「もし」何の能力も持たないゾンビだったら?
「もし」神様に出会わなかったら?
そういう「恐れ」がいつしか「世界」を作りある日突然引き込まれてしまったのだ
「…そんな事が…なら元に戻れるんですか⁉」
「勿論じゃ。じゃがお主の心の中に「迷い」があればそれは叶わん」
(続く)