門番と熊店主の会話
「うっわ!熊だ!熊!!」
「…」
「おい!!てめぇ!!誰が熊だ?!!」
「君に決まってんじゃ~ん!」
「俺は熊じゃねぇ!!」
「じゃあ、なんで店名を『小熊は熊』なんかにしたのさ?どう見たって君の外見から来てるよね~?」
「「「「ざわっ(おいおいおいおい!店名に突っ込むなよ)」」」」
「…熊なみに狂暴なのは、俺の娘だ」
「うわ!ちょっと顔近づけないでよ!気持ち悪い!!」
「てめえ…!!」
「で?熊の君の娘も熊なんだぞ!ってこと?」
「ばっか!声がでけぇ!!」
「…だれが熊ですって?」
「おわっ!!エレザ!!」
「で?誰が熊なのかしら?お父さん?」
「(がたがた…)」
「忙しい時間になに、サボっているの?」
「いや、その…ほら…え~。こいつら!!噂の北門の門番なんだぞ!!そりゃあ、あいさつしとかねぇと、と思ってな!!ご注文は?」
「…魚料理」
「あ!僕も魚~!!」
「へぇ~、あなたたちがねぇ…。ダイアウルフの群れを倒したっていうから、どんな男かと思っていたけど…。意外にひょろっとしてんのね?」
「おっと!見かけで判断しちゃいけないよ!僕はこれでも、力だけはあるんだよ!着やせするタイプなんだ!」
「はは…人は見かけによらないな…(そりゃそうだろうよ!!片手でダイアウルフを吹っ飛ばせる奴が、筋肉に自信がなかったらウソだろ!!)」
「ところで、魚料理でいいの?ウチは肉料理が有名なんだけど…」
「あ!いいのいいの!僕たち、肉苦手なんだ~」
「そうなの?」
「そうなんだ~!昔、しに…ぶっ!!」
「…」
「ぷは!ちょっと、テンコ!なんで手で口とついでに鼻まで塞ぐのさ!?」
「…ここで言うようなことじゃない」
「はぁ!わかったよ。じゃぁ、魚料理ふたつね」
「あ、は~い」
「酒はどうする?」
「水で…」
「僕も水~」
「お!なんだなんだ?英雄サンは酒が飲めねぇのか?」
「いや~、飲めるっていうか…」
「なんだ?歯切れが悪いな」
「いままで、どんなに強いっていうお酒をどれだけ飲んでも、酔えたことがないんだよね~。水にしか思えないっていうの?だから、同じ水に感じるなら安い方がいいじゃない?」
「…それは、勝負を挑まれたと思っていいか?」
「え?なんで?」
「王都の酒屋に生まれ、この街で居酒屋を開いて15年!酔わない人間がいるわけねぇ!待ってろ!取って置きのヤツを出してやる!酔えなかったら、お代はいらねぇ!」
「あれ?行っちゃった。あ~あ、無駄になるよ、絶対…」
・
・
・
「…何杯目だ?」
「10杯目かな?」
「9杯…」
「何で酔わねぇ?!生まれた時から酒に囲まれて、飲み比べでも負けたことのない俺でも、そいつは5杯が限界だぞ!」
「だから、酔わないって言ったじゃ~ん」
「くっそ!見てろ!!王都にはもっと強い酒もある!!そいつを取り寄せて、お前ら絶対酔い潰してやる!」
「…お父さん…?」
「(びくぅ!!)」
「な・に・を・取り寄せるって?」
「あ、いや、その…」
「ちょっと顔貸して」
「…はい…」
「…ぎゃああああああああ!!ごぶっ!」
◆◇◆◇◆◇
「あ~、おもしろい熊だったね」
「…」
「ねぇ、テンコ。この街はおもしろいよね~」
「正解だったな」
「あはは!その通りだよ~!」
「正解、正解♪大正解♪
あの場所から出てきて心底よかったよね~。ねぇ、テンコ」
「お前が楽しいなら、いい」
「ふふ!相も変わらずだね~。ちょっとは自分を優先してよね。
オニイチャン♪」
これで、始まりの話は終了です。
ありがとうございました。
続編書いているので、また投稿します。「黒白の門番と竜の襲撃」予定。