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公国への旅路



セリとフィリアは馬車に揺られて、ギレア公国へと向かっていた。



馬車に乗る人物は、二人以外に数名の姿がある。



「穣さんたち、ギレア公国に本当にいくのか?」



二人に問いかけてきたのは、馬の手綱を持つ御者の男だ。



「ギレアの国境付近は、アンデットの目撃情報が多発している。それもあの魔女の仕業らしいが……」



魔女という単語に、セリは不愉快さを覚える。


恐らくだが、カルディナを指しているのだろう。



「私達は冒険者……その件も含めて向かっている」



セリは適当に嘘を吐く。



「なるほどな、最近この辺りじゃ依頼は少ないからな。確かにアンデット狩りはいい仕事になりそうだな」



男は適当な嘘を、都合よく解釈してくれた様だ。






それからは御者の男とは会話という会話もなく、馬車は先へと進んでいく。




それから、半日程馬車を走らせた頃だ。



辺りの太陽は傾き、夕焼けにより辺りが赤く染まり出した。



もうすぐで夜になる。


話によれば、この辺りにある小さな町――ラス・カラスで一夜を過ごすらしい。



夜になると人間の視認能力は著しく低下する。


対するモンスターは、ゴブリンやオーガなど夜でも目が効く種族が大変多い。



そうなると、夜間の移動は日中と比べてかなり危険なものとなる。


できる限り夜は、安全な町で休むのがセオリーだ。




「ラス・カラスが見えてきたな。陽が落ちる前には着きそうだ」



そう男の指差す方向を見ると、城壁らしきものが見える。


あれが目的の町だろう。



「何か変だな……」



更に町に近づくと男は異変に気づいた。



外壁の辺りに、無数の人影がたむろっていたのだ。


それだけではなく、普段は閉められている城門が開いている。


中から見えるはずの、町の灯火の気配も見えない。




そして男は程なくして、それらの正体が人間ではないことに気づく。



それらは、動く死体だった。


最下級のアンデット――他のアンデットの呪いを受けた人間が慣れ果てる存在。


ゾンビだ。




蠢き、彷徨っていたゾンビ達は、馬車の存在に気づくと一斉に此方へ向かってくる。



「な、なに……! アンデットだど!?」



男はそれがゾンビだと分かったその瞬間、馬車を町とは反対方向に走らせる。



「な、なんでだ!? ここからギレアの国境までまだ距離はある。それなのになんでアンデットが大量発生しているんだ!!」



馬に鞭を打ち、その場から逃げ出そうとする。


しかし、その馬の足は早々に止まってしまう。



進行方向から、無数のゾンビが此方に向かってくるのが見える。



気づかないうちに囲まれてしまった様だ。




「あんた達、冒険者って言ってたよな!? な、なんとかしてくれないか!!」



同乗していた行商人らしき初老の男性が、セリに懇願してくる。


普通の冒険者であるならば、この数のアンデットの前には怯んでしまうかもしれない。


勿論、高位の冒険者なら話は別だが。



「――わかった」



セリは、前方のアンデットの群れに手を翳す。



神域流布セイクリッド・エクスパンション



セリがそういうと、白色の光が前方に広がる。


それを浴びたゾンビ達は、身体が灰になりだんだんと身体が崩れていく。


身体が崩壊しながらも、此方への歩みを止めようとしないが、やがて完全に灰と化し崩れ去ってしまう。


百体は居たであろうゾンビの大群は、一瞬のうちに灰塵と化してしまう。



「神聖魔法だと!? 人間で使えるものは殆どいない筈だ……ま、まさか神聖魔法の使い手に会えるなんて!」



御者の男は、そう驚いた表情を見せる。


やはり、神聖魔法が使えるのは相当珍しい存在らしい。




「ひ、ひぃ!!」



その時だ。


行商人が情けない叫び声を上げる。



荷台の反対側から、ゾンビが身を乗り出し、行商人の足を掴んでいた。



「ウオオォォ」



ゾンビは、足に噛みつこうと呻き声を上げる。



だが、その瞬間。



ゾンビの脳天に槍が突き刺さる。


頭を貫かれたゾンビは、ぴくりとも動かなくなり、偽りの生命が尽きる。



「大丈夫ですか?」



咄嗟の判断で槍を突き刺したのは、フィリアだった。



「す、すまないっ、た、助かったっ……」



行商人には、恐怖からか咄嗟にフィリアの足下に抱きついた。



それを見ていたセリは、何故か不快感を覚える。



しかし、反対側にいたゾンビ達もかなり距離を縮めてきている様である。



「に、逃げるぞっ!」



御者の男は、馬に鞭を打つ。



そうすると、全速力の速度で馬車は動き出した。


背後のゾンビの群れとも徐々に距離が離れていく。




しかし、あの様子だとあの町も完全にアンデットに殲滅させられているだろう。


一体なにがあったのだろうか。

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