予言
セリは目を覚ます。
昨日は、夕食を食べた後ベットで眠りについたはずだ。
辺りはすっかり明るくなっており、部屋に陽光が差し込んでくる。
両脇では、リッタとフィリアが眠っていた。
一つしかベットがない部屋だ。
昨晩は、私達は床で寝るから広々と使って欲しい――と言い出した二人をベットの上まで引っ張ってきた。
そうして、日の光を浴びていると、ふとある事を思い出した。
影の力加減の練習をしなければ。
無くなった片腕の代わり程度にはなって貰わないと困るのだ。
セリは、影を出現させて目の前のテーブルにあるコップを掴もうとする。
黒い影はコップを半分程度包み込むと、プルプルと宙へ浮く。
だが、此方へ引き寄せようとした瞬間、影の隙間からコップが床に落ちる。
幸いにも堕ちた地点がそう高くなかった為、割れる事はなかった。
やはり、相当練習しなければ影を腕がわりに使うのは難しそうだ。
『おはようございます』
その時だった。
脳内にレヴィンが話しかけてきた。
「どうしたの?」
『それがですね、少し問題がありまして』
問題とは一体何なのだろうか。
あまり良い予感がしない。
『簡単にいえば、ある輩がそう遠くないうちに命を狙いにきます』
「命を狙うって……誰に?」
確かにセリは命を狙われる立場である。
だが、世間には"神人として覚醒した存在"としてのセリは認知されていないはずだ。
この段階で誰に狙われるのだろうか。
『簡単にいえば、私と同格の存在です。神……に一応は分類されるはずです』
「レヴィンの知り合いの人?」
「いえ、知らぬ仲ではありませんが、敵と言っていいです」
「そもそも、その神格存在になんで狙われてるの?」
と言ったもののセリが狙われる通りは数え切れないほどあるのだが。
「それは世界に巨大な影響を与えかねないからでしょう。あの様な存在は普遍を好みますから」
「私はどうすれば良いの?」
「正直今の貴方では勝ち目がありません。奴と相対した時、身体を少し貸してください」
「身体を貸す……?」
「一時的に身体の支配権を私に譲渡するんです。上手くやり過ごしますので、勿論ことが終わったら身体はお返しします」
「で、でも、そんなことどうやって……?」
身体を貸す――と言っても一体どうやってそんな芸当を行えば良いのだろうか。
「言葉では説明は難しいのですが、身体を私に委ねる事を強くイメージしてみてください。そうすれば、すんなりできるはずです」
「わかった……どうしようもなくなったら、そうしてみる」
他人に身体を預けると言う一抹の不安はあるのだが、レヴィンがわざわざ忠告してくるくらいだ。
きっと、その神格存在はとても厄介な敵だと言う事はわかる。
「その私の命を狙ってくる奴ってそんなに強いの?」
今のセリは世界屈指の猛者に分類されるだろう。
少なくとも二人の神人の加護を扱え、更には一流の魔術師や戦士の技や魔法を複製しているのだ。
「えぇ……神人が束になっても勝てるかどうか怪しいくらいです。と言うよりか、全盛期の私よりも強いのではないでしょうか」
神人の祖たるレヴィンですら勝てない存在だ。
少なくとも、レヴィンこと救世神の逸話を聞く限り、並の神人を凌駕する存在というのは分かる。
勿論、山脈を消し飛ばし、海を割り、何度事切れても蘇り、万象の出来事を操る――この逸話が嘘ではないと言うのであるのならだが。
一体何者なのだろうか。
兎も角、一人また厄介な存在に目をつけられてしまった様だ。




