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襲撃者-8



「せ、セリさんっ、もしかしてお父さんを、倒したんですかっ!?」



フィリアは驚愕した表情を浮かべる。



「見ての通りに倒した」


「セリさんが強いのはわかってましたけど、まさかここまでなんて……」




まさかこの都市最高と言われるデスタに勝てるほど強いとは思っていなかった。



一体何者なのだろうか――セリに対する疑問はますます深まる。




「二度も助けて頂きました。もうだめかと思っていました」




フィリアはそう言うと、深く頭を下げる。




「気にしなくていいよ。私もそこまでの事はしたつもりはないから」



「セリさん......!」




フィリアはセリに抱きついてくる。




「あ、あのっ……ちよ、く、くるしっ」




フィリアは本気で抱きしめてきている様で、かなり息がしづらい。



「す、すみません。少し、嬉しくてっ」



フィリアは、身体に自然と力が入っていた事に気づくと、その手を緩める。



その時だ。



「た、助けてくれるん……だよな!?」




そう懇願してきたのは、デスタだった。




「ねぇ、どうする?」




セリはそう言い、フィリアに目配せする。



フィリアはセリの視線に気付き、デスタが倒れ込む方に一歩前に進む。




「……一つ聞きたいことがあります」


「な、なんだ??」


「なぜ、お母さんが貴方みたいな人に惚れてたんですか?」


「んなこと言っても、そんなまぐれだってあるんだよ」




その時だった。



セリは、デスタの左腕目掛けて、剣を振り下ろす。




「いぎあぁぁ!?」



切断された左腕が、床にごろっと落っこちる。



「嘘つかないで。まぐれとかなんだとか知らないからさ」




セリは冷たい眼光をデスタに浴びせる。



「わ、わかった……! ほ、本当はマジックアイテムで洗脳したんだ!!」



「なんでそんなことを?」



回復魔法でデスタの傷口を塞ぐと、更に問いかける。




「20年前、エルフ狩りをやってる時だ……一人めちゃくちゃ強い奴がいたんだっ、精霊術の使い手だった。だから、そいつを手籠にしたんだ。見てくれも良かったからな、生まれてくる子供だって、利用価値があると思ったんだ!」



セリは剣を振り上げる。



「こんな奴、殺してもいいよね?」



セリはフィリアに問いかける。



「た、助けてくれるって言ってただろ!?」



「あれ嘘だよ。私に欠損した身体を治す能力はない。私の身体を見ればわかると思うけど」


「ま、待ってくれ、エルフ狩りは命令されてやったんだ。そうエルトに、神人のエルト公に!!!」


「エルト!?」




エルト・ギレア――デスタが口に出したのは、いずれ殺すべき一人の名前だ。




「なんでそんな命令をしたの?」


「わからない、でも……エルフの死体が欲しいって頼まれたんだ!」



このデスタと言う男が、エルトに関して深く何かを知っているわけではない様だ。



「セリさん……剣貸してもらえませんか?」



デスタを睨み付けるフィリアは、おもむろに手を伸ばす。



「別に構わないけど……」




セリはフィリアに剣を渡す。



フィリアの細い腕で剣を構える。



しかし、鉄の重量物とあってか華奢な体躯では、少しよろけてしまう。



フィリアより小さく細いセリは、取り込んだ経験のおかげで、なんとか扱うことはできる。


と言うよりかは、他者を吸収する度に少しずつ肉体的強度が増していると感じる。




「な、何をするんだっ、ふぃ、フィリアああぁぁ!!」




喚き散らすデスタの胸あたりに剣を突き刺す。



「うっ……ぐっ!!」



「ふざけるなっ、お前のせいでお母さんと私はどれだけ辛い目にあったと思っているんですか!!」



フィリアは怨嗟の声を投げつける。



「うっ……かっ……貴様っ……」

 



今まで溜め込んできた、恨みや憎悪が一気に爆発したのか、何度も剣をデスタに振り下ろす。



二度目に剣を振り下ろしてからは、デスタは完全に死んでいたのだが、フィリアの怒りが収まることはなかった。



暫く意味のない死体斬りを続けていると、フィリアは力を失いその場に倒れ込む。



「フィリア……」




セリは、フィリアの背後に寄る。



こういう時、どの様に言葉をかけるべきなのだろうか。



フィリアの知る痛みは、自分の知っている痛みとはまた違うものの筈だ。



それを知った口にして励ますのも反吐が出る。






「うっっ、せ、リさんっ……」





振り返ったフィリアは、涙を流していた。



つい先程まで、怒りの表情を浮かべていた顔から大粒の涙がこぼれ落ちていた。




フィリアはそのまま、セリの足元に抱きついてくる。



セリはそれを無言で抱き返した。




特にかけれる言葉も待ち合わせいない。



できるのは、残された片腕で抱き返してあげるだけ。




なにかと、フィリアとは長い付き合いになってしまった。





生きることを諦め、全てを失って――



そして復讐だけを心残りに、歩み続けることを決めたその矢先、フィリアと出会って少し気が楽になった。




この数日間の間で、フィリアに愛着が湧いてしまった。

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