襲撃者
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セリは目を覚ますと、ベットの上で横になっていた。
窓から陽光が差し込んできており、辺りを明るく照らしていた。
どうやら、風呂で寝落ちしてしまってから朝まで眠っていたらしい。
「おはようございます」
近くのテーブルに腰をかけていたフィリアが声をかけてきた。
「んっ、昨日はお風呂で寝たような……」
「そうですよ。あの後大変だったんですから、ゆすっても声かけても起きないんで、ベットまでなんとか運んで来たんです」
フィリア曰く、相当深い眠りに落ちていたようで、何をしても起きなかったらしい。
「ごめん、迷惑かけちゃて」
「いえ、セリさんも疲れていたと思いますし……仕方ないですよ」
そう言えばだが、リッタの姿が見えない。
「そう言えば、リッタは?」
「あぁ、リッタさんなら一階で働いてます。一応、安全のために部屋の中に暫くいてほしいとの事でした」
窓の隙間から、太陽の位置を見てみるとかなり上まで登っていた。
どうやら相当長い時間眠っていたようだ。リッタが受付嬢として働きに出てかなり時間が経っていると思われる。
『しかし、これからどうするんですか? 面倒ごとになる前に、デスタという冒険者を殺してしまって方が良い気がします』
確かにあのデスタと言う冒険者さえ居なくなれば全て解決する。
それに、特級冒険者の能力を奪えるチャンスというのはかなり美味しい。
レヴィンの言う通り、こっちから倒しに行くのはありかもしれない
「そう言えば、セリさんの服干しておいたんですけど、乾いたみたんでとってきます」
フィリアはそう言い残し、部屋の外へと出る。
セリは自分の格好を見てみると、随分とぶかぶかな寝巻きを見に纏っていた。
恐らくリッタのものだろう。
ともかく、服も乾いているならそっちに着替えよう。
そう思っていた矢先――。
ガラスが割れる騒音が響き渡る。
「うっ……!?」
それと同時にセリの胸元を何かが貫いた。
視線を下に向けると、そこには太い矢が突き刺さっていた。
赤い鮮血が床にぽたぽたと零れ落ちる。
だが、不思議なことに痛みはない。
ストレイルから奪った加護の能力が発動しているのだろう。
恐らく、この矢を引っこ抜けば、綺麗さっぱり傷口も消えて無くなる筈だ。
胸に刺さった矢に手をかけた瞬間だった。
飛翔してきたもう一本の矢がセリの額を貫いた。
「いっ……あっ……」
セリは脳天を貫かれた衝撃で、床に倒れ込む。
加護のおかげで、なんのダメージもないとは言え、その瞬間的な衝撃は凄まじい。
セリは、倒れ行く中、窓の外の景色が見える。
砕け散った窓ガラスの先――向かいの屋根の上でクロスボウを構える冒険者風の男が見えた。
『これは少し復帰に時間かかりそうですね。加護の力でなんのダメージにもなってない筈ですから、早く起きてくださいね』
レヴィンの呑気な声がぼっーと貴方の中に響いてくる。
ストレイルのこの加護も全くの弱点が無いわけでもない様だ。
頭なんて吹き飛ばされたら、再起にはそれなりに時間がかかりそうだ。
この冒険者らしき男は、明らかにデスタの関係者だろう。
恐らく、昨日の夜にでも尾行されていたのかもしれない。
だとすれば、フィリアの身も危険だ。
だが、脳を貫かれるのは初めての感覚だ。復帰には少しだけ、ほんの少しだけ時間がいりそうだ。
「こんな小娘に奇襲とはなぁ」
クロスボウを担いだ男は、割れた窓から跳躍で部屋に飛び入ってくる。
その背後に続くように、もう一人の冒険者が窓から侵入してくる。
「正面から潰した方が早かったんじゃないですか?」
背後にいた冒険者が話しかける。
「デスタさんの話では、それなりに動ける奴だったらしいからな、念の為だ」
間違いない。デスタの配下の者の様だ。
尾行されていたするなら、もう少し気を配っていれば、後をつけられていた事に気づいていたかもしれない。
そしてセリはそれを可能にする能力を持っていた筈なのに怠っていた。
明らかに自分の失態だ。
「さぁ、ハーフエルフを連れて来いとのご希望だ。さっさと捕まえにいくぞ。他の奴らに遅れをとるな」
二人の男は部屋から出て、フィリアを探しに行こうとする。
だが、二人は気づいていなかった。
額と胸から血を流し、身体中を真っ赤に染め上げている血塗れのセリが、立ち上がっている事に。




