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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第2章 ヤンキー女子高生の下僕はNEO麗のメンバーにさせられました
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警察が真下に居るのに××しちゃいました

 人から見れば、俺は警察に向かって突っ込んで行っている様に見えるだろう。


 実際警察が駆け寄ってくる方向に向かって全力で走っているのだからそう勘違いされても仕方が無い。


 だが、俺は警察と百メートル程離れた距離で足を止めると、俺は目的の物を拾い上げ、くるりと警察に背を向けてUターンすると、裏校舎の方に向かって走り出した。


「待て!」


 警察は数人で俺一人を追いかけて来た。


 待てと言われて待つ馬鹿は居ないだろ?


 普段からやっている50メートルダッシュや100メートルダッシュのお陰で、相手が警察と言えど、容易く捕まらない自信はあった。


 俺は裏門方面を確認すると、既にバイクは一台も無く、負傷等の影響で逃げ遅れた首師高校ひとごのかみこうこうの連中ぐらいしか残っていなそうだ。


 この連中は良い盾になった。


 倒れている人間を放置出来ない、あるいは検挙が容易いという事もあるのだろうか?


 俺を追う警察は分散したので何とか逃げれそうだが、一台の白バイが俺を追い抜いた。


 俺を捕まえようと思えば捕まえることが出来たはずの白バイの意図を直ぐに理解出来た。


 裏門にバイクを止め、逃げ道を塞いだのだ。


 マズイな。


 ここで俺が捕まってしまっては危険を冒してまで()()を取りに戻った意味がない。


 如何すれば良いのか判断に迷っていると、「武っチ!」と言いながら流麗が俺に声を掛けてきた。


 まだ逃げていなかったのか?


 誰の為に俺が残ったと思っているんだ?


 そう怒鳴りたいところだが、今はそれどころではない。


「こっちよ!」


 流麗が俺の手を引くと、共に旧校舎の中に逃げ込んだ。



 ◇



 俺達はつい先まで喧嘩していた連中の本拠地である旧校舎の中に入った。


 こんな状況でも無ければ御免こうむりたい場所だが、幸い敵連中も警察に追われ、俺達との喧嘩どころじゃない状況だ。


「如何する?」


 流麗は校舎の中に導いた癖に、ノープランだった。


「仕方ない……取り敢えず屋上に逃げよう!」


「如何して屋上なの?」


 屋上ならば下を見下ろして全体の様子を見る事が出来る事と、下手に教室に隠れても見つかった時に狭い為に逃げるのが難しいからだが、説明の時間が惜しい。


「説明している暇は無い。とにかく来てくれ!」


「分かった!」


 流麗もこの状況でそれ以上俺に理由を訊ねると足を引っ張る事を察してくれた。


 至る所にヒビが入った階段を駆け昇る。


 2階……3階……4階。


 そして屋上まで辿り着いた。


 幸い、屋上の出入り口のドアのカギは首師高校ひとごのかみこうこうの連中によって既に破壊されていたみたいなので屋上に出ることが出来た。


 俺は屋上を見渡すと、出入り口の上部には給水タンクが設置されており、そこに昇る為の梯子が付いていた。


「ここにも来るかもしれないし、念のために上に昇っておこう」


「うん! 分かった!」


 恐らく脚立を使って梯子に乗る設計なのだろうか?

 梯子はジャンプしないと手が届かない位置にあり、おまけに錆ついているから強度が不安だが、俺は先に飛びついて梯子に乗り、安全である事を確認すると流麗も上に来るように促した。



 ◇



 流麗が梯子を昇り切った直後の事だった。


(伏せろ!)


 何者かが階段を昇ってくる気配を察したので、俺は小声で警告を発しながら流麗の頭を押さえつけ、地面に伏せると同時に出入り口のドアが開かれる音が鳴り響いた。


 もう追手がこんな場所にまで来ていやがったのか。


 数人の警察が屋上に出てきた。


 マズイな。


 俺は流麗に目配せすると、匍匐ほふく前進で給水タンクの裏に移動した。


「何人か校舎に逃げ込んでいたよな? 見つかったか?」


 見つからない様に身を隠しているので姿が見えないが、中年のものらしい警察の声が聞こえてきた。


「いや、1階から何人かに別けて全部の教室を探させている」


「そうか……見た感じじゃ屋上には居なそうだな」


「如何だか……確か、ここのドアが閉まる音が聞こえたような気がするけどね」


「でも見当たらないな。お前さんの勘違いじゃないのか?」


「いや、ここの上怪しくないか?」


 ヤバい。


 梯子を昇って来られたら逃げ場がない。


 このままでは見つかる。


 如何するか?


 咄嗟に思いついたのは、警察が梯子を昇り出す前に、俺だけ自首して流麗を隠れさせたまま逃がす事だった。


 俺は流麗に小声で耳打ちをした。


(流麗……俺が囮になって自首する。だから警察が居なくなるまで隠れていてくれ)


 すると、流麗は首を振って今度は彼女から俺の耳に手を当てた。


(駄目だよ。あーしに作戦があるから、任せて)


 何か作戦があるのか?


 内容は告げられていないが、細かい話を聞く時間も無い。


 (分かった。)


 と、軽く頷くと、流麗は少しだけ身を起こすと、俺の首に抱き着いてきた。


(えっ?)


 流麗の意図が全く理解出来なかったが、こんな事をしている間にも警察達の声が聞こえてきた。


「クッソ! 高くて梯子までジャンプしても届かないぞ!」


 俺も流麗も身長こそ低いが、日頃の鍛錬のお陰でジャンプ力は高かった。


 だから梯子迄なんとか手が届いたが、俺達よりも長身であろう警察はジャンプしても梯子迄手が届かない様だ。


「大山さん。一番背がデカイ貴方がジャンプすれば届くでしょ?」


「ああ。俺に代わってみな」


 警察の中でも長身の人物が居る様だ。

 このままでは昇って来てしまう。


 俺は流麗を突き放し、一人で自首しようかとしたが、何を考えているのか流麗はチェストガードを装着した胸をはだけていた。


 警察が真下に居るのに何してるんだ?


 とても正気とは思えない行動に俺は思わず声を上げそうになった。


(流麗! 何してんだ……むぐうっ!)


 俺の警告は声にならなかった。


 月の光を受け、綺羅に輝く潤った唇が俺の唇を塞いでいたからだ。

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