蒼伊牧本線 東部州 の 4
「あのー、参考までに、昨日の昼から今までで一体いくら分だったんですか?」
「3千?」
「2500です。」
それっぽっちかという顔をしている神子さんだが、単位は万円である。
[高層ビル群の中にある牧場…臭くないのかな。]
「王国とその属国で培われた魔科融合文明は全次元世界中最高峰の物ですから。特定遮断結界なんて朝飯前ですよ。」
大騒ぎしつつ大和駅から改めて東へ向かう。
北から交差する路線が見えると列車は速度を落とし始めるが
「降りないんですか?」
なぜ降りるという顔できょとんとする神子さん。
「一応、2つの幹線が接続する駅だけど、町の中心駅じゃぁないんよね。伊勢大和新幹線も宇部新幹線も止まらないから。今計画中の伊勢高速新幹線も、停まらないからなあ。」「伊勢高速新幹線はこの星では、西海、伊勢、大和、日向原の4都市にのみ停車をします。
日向原の停車駅は、日向原駅は確定していますが、日向原新町を含めるかで協議が進んでいます。
日向原市、ブリアススペルキア惑星政府、東部州政府、神応鉄道東方管区統括本部、神応HD蒼明総合統括本部鉄道運行本部は日向原駅のみ。
神応HD蒼明総合統括本部高速運輸本部、神応HDブリアススペルキア運輸総局、神応百貨店、せんでんグループ、JRIは日向原新町もふくめると言う意見です。」
「地元の意見は無視か。」
地元はそもそもそんな計画知らない。(神応HDに属するKSBS紅蒼大州神応放送が、神応鉄道にとって都合悪いことまで含め、そこはイランだろうというところまで余すこと無く徹底的に紹介する番組を何度も何度もそれこそ月一レベルで放送しているのだが、逆に日常になり、どこぞのムーディにネタを歌う芸人さんでは無いが、右から左へ聞き流してしまっている。)
そうこうしているうちに列車は動き出す。
トンネルに入るとゆっくりと速度が下がる。
「江井も変わったけど、単純にビルが増えただけだからなあ。」
「エネイ。ですか。」
[此処も降りないと。]
降りても伊勢以上に高層ビルが駅に迫ってきて圧迫感がすごいというのもあるが、伊勢駅や蒼明駅よりもちっこいのに、構造が異常に複雑である。
江井駅には鉄道以外にもモノレールや神応交通のバスが乗り入れており、無駄に改札口をたくさんもうけすぎたのがある。
直すのも面倒くさくなり放置状態。と言うか、市内のバス停混雑対応が先の状態。
トンネルを抜けると海を渡る。行き交う船を眺めつつ、進行方向右手側に大きな高層ビル群に驚いたりしていると進行方向左手側に畑が見える。
「ずいぶんと海っぺりの畑だな。」
「奥の学校が持つ実習農場だね。」
ちょうど線路のすぐ横にあったことから駅を造る際のランドマークとなった東部州立央野農業高等学校。そのすぐ脇にある駅を横目に列車は大きな陸橋を抜けカーブに入る。
いよいよこの物語で最後に訪れる町、日向原である。
とはいえ。
「日向原駅で降りて、日向原新町駅から新幹線で帰ります。
海沿いだった線路が町中に入る。
再びの大きなカーブを抜けると、
[ぬお。でっかい船が空飛んでる。]
日向原陸港である。
「あれも移転予定が合ってね、今のうちに見といた方がいいよ。移転後はごく普通の海洋港湾になるから。」
『長らくのご乗車大変お疲れ様でした。まもなく日向原、日向原です。陸港経由、石谷、甲野方面ご利用の方は乗り換えです。』
アナウンスに合わせて降りる準備を始めた神子さんとリンさん。
「風が気持ちいいですね。少しべとつきますけど。」
「まあ、少し前までそこ壁で、その先は海だったからねぇ。」
改札口を抜け、駅の南東に出る。
「この線路は使われてないんですか?」
「まだ、使ってないね。あ、あの工事現場が陸港の移転先、日向原船舶旅客ターミナルの建設地。」
日富線という路線がある。現在陸港の移転先を建設する工事と、そこに組み込まれる駅の工事に合わせて、全線運休中。それがこの線路の正体だった。
その建設現場を見つつ町を南下する。エスカロイエントを縦に割ったとき、西半分の中心が伊勢で有り、東半分の中心がこの日向原であった。
[「…。」]
二人が声を出さない理由。
「なんで普通の電車が路面電車みたく道路を走ってるんですか。」
線路に沿って町を南下すると、大通りに出る。通りの真ん中に線路が敷かれており、路面電車だと二人は認識していた。に、してはホームが馬鹿みたいに長い。
やってきた電車は、普通の通勤電車。そりゃ突っ込みが出る。
高層ビル街にある大通りを走る普通の鉄道車両を使った路面電車。神子さん曰く、Style Transを運行システムに導入している場所ならよくやるとのこと。
伊勢でも平気でやってることだしね。
「伊勢のより長い。」
「伊勢にも、このクラスは居るよ。南側にねぇ。伊勢の地上は北側のビジネスガーデンぐらいしか見てないからなんともいえんか。」
やってきた電車は10両編成。高層ビルの間を走る。歩道を行き交う人々を見つつ、列車は日向原市の西側に入る。
「すげぇ乗車率。」
「バイパスの計画が難航してるからねぇ当分はこのままだねぇ。」
日向原新町駅
蒼明大社から出た列車の終着駅である。
「全部のホームが一並びとはなかなかに思い切りますね。」
「そう。…ま、お疲れ様。今日はここで一泊。明日10時発の新幹線で、蒼明に戻りますよ。
そじゃ、後はリンさんお願いします。」




