蒼伊牧本線 北部州 と 東部州 の 1
『長らくのご乗車お疲れ様でした。まもなく牧丘、牧丘です。
お乗り換えのご案内です…。』
牧丘という町は大きな山脈の南に築かれた街だった。
街の南部と中央部を鉄道によって貫かれている街。と言うより、鉄道によって生まれた街だった。
「あれが、この州境の街、惑星メルエストの中枢。牧丘を統べる、牧丘合同庁舎。またの名を神応HD牧丘支社メルエスト牧丘運輸局管区牧丘鉄道管理局ビル
駅を挟んで反対側が神応HD牧丘支社。
この牧丘はね、神応鉄道によって生まれた街では無く、かつての紅蒼国が、環境省をこの地に移転することを決め、それに合わせて、神応鉄道が施設の建設に必要な資材の運搬を委託されたためある程度出来ていた街に路線を延ばしたという形。
ちなみに名物料理は無い。」
神子さんの最後の言葉で一気に興味を無くした相模。
「この牧丘駅には我々が乗ってきた、蒼伊牧本線の他、冥牧本線、山脈線と大森線の計4路線が乗り入れており蒼伊牧本線以外は、この牧丘駅が起終点です。ですが、冥牧本線は、この先蒼伊牧本線に乗り入れ、蒼伊牧本線の終点まで運転する列車がほとんどです。」
『まもなく-番線に蒼伊牧本線特別快速御魂ヶ原行が12両で参ります。危険ですのでホームドアに近寄らないようお願いします。』
「あれ?今の電車に乗るんですか?」
「うちだけね。御魂ヶ原で会おう。」
神子さんを見送った3人は入ってきた急行快速に乗って牧丘を離れる。
「この先急行快速は通過する街に有る高校で姉の同窓生が先生をしています。
生徒からの人気もあるのですが、まあ、ストレスも多い仕事です。爆発したら我々と同じ種族である以上近隣自治体が壊滅しますから、なだめにいっているわけです。」
列車が牧丘がある惑星メルエストを出てから、何本目かのトンネルを出ると、進行方向左手にThe海辺の地方都市といえる町並みが現れる。
「海岸線が見えますよね。後ろの方に目線を移してもらうと海辺に沿って、山にへばりつくような高低差のある、敷地を持つ学校が見えると思います。あれが、紅蒼大州北部州立南崎高等学校です。そして姉が向かった場所です。まあ、この景色を見たら話は耳には入りませんね。」
きらきらと光り輝く海と野暮ったい高層ビルが一切無くせいぜい10階建て程度の町並み。
三崎地区は大きな扇状地であり、列車は北崎駅を出てトンネルに入る。
東龍駅以東で10km以上のトンネル=惑星間移動となっているこの路線。
一体何本のトンネルをくぐっただろうか。水面に反射す光が見え始め大きな湾に当たる。列車はそのまま会場を渡る橋を渡る。
隣を走っていた線路は湾に沿って大きく右へそれていく。
「湾の最奥にあるのが古代ヶ丘港湾海底遺跡群で、その側に海底遺跡研究所駅があります。この駅は神応大学海洋考古学総合研究所に直結していて、研究の町として発展を遂げています。
そして、橋を渡りきった先にあるのが、この地域の中心である古代ヶ丘です。」
「やあ、やあ諸君、御魂ヶ原名物の御魂団子と、名産の柑橘類[魂鎮]だよ。相模君、御魂団子は決して一口で食べちゃ駄目だよ。のどに詰まるから。」
ふわふわの餅生地で煮卵を包み醤油だれを塗った御魂団子を以前一口で飲み込み、代行演算という生命時装置のお世話になった、神子さん。
ボリュームを見てそんな無茶をするのはあんただけだと思いつつ海野が相模を見ると丸々一口で口に放り込みもきゅもきゅしている様を見てそういや、この人お団子とかお弁当とかの米系に目が無かったなとあきれた。
列車は静かな住宅街を抜けトンネルを抜ける。
「御魂ヶ原はかつて、惑星中の死者を埋葬する墓地がありました。あまりに広大なため墓守や各宗教関係者たちの集落が生まれ、それを墓地の西側にまとめて生まれたのが御魂ヶ原です。その墓地も現在は山を挟み北に移転改葬され跡地に先ほど通過した奥御魂ヶ原という住宅街となりました。死者の町から死者が守る命あふれる町として奥御魂ヶ原は住宅街としての人気が非常に高いことで有名です。」
宇治原地方
紅蒼大州東部州の北部一帯に広がる地域で、永野宇治原と本宇治原に分かれる。
神応鉄道の東部州開発は永野宇治原から始まった。
今回は途中の宇治原駅にのみ列車が停車する関係も有り省略するが、基本すごい山の中によくもまあ、これだけ通したねという形になっている。
「伊勢原は連邦帝国海軍が整備陸港をおいている町です。あのフェンスで区切られているのが陸港。」
海軍といっても運用されているのは航宙艦。そして、とにかくばかでかい。
「あー、相変わらずでかいですねえ。」
諸元策定者のあんたにだけはいわれとうないと思う海野君でした。
「さて、次の停車駅からこの路線最後の星、エスカロイエントです!」
このお話もこの路線と、次の路線で一区切りになります。
今回は短いですがここまで




