おまけ話(フロードラン家の人々)
単なる使用人達の会話だけです。
「遅いわねぇ。ヒューイット様ったら間に合ったのかしら」
「間に合わなかったら、帰ってくるのは早いでしょ。だから、うまくマリーンを捕まえたんじゃないの?」
「ヒューイット様、詰めに失敗したりしない? 女口説くの下手そうだもん」
「だいたいお貴族様の恋愛術なんて、恋愛じゃないから下手でも仕方ないわ。ヒューイット様が変に遊ぶ技術を磨いてなくてよかったわ。貴族様の口説きなんて、ベッドへ誘うか無理やり迫る以外ないじゃない」
「それもそうね。マリーン、心配」
「さすがにヒューイット様は真面目な方だから、結婚もせずに囲うってことはないよね?」
「ないない」
「でも、ヒューイット様、出掛ける前に旦那様と奥様にもう一週間のんびりするようにって伝言頼んでいたじゃない? 結婚するつもりなら早く帰ってきてもらうべきでしょ?」
「そこが、わからないのよね」
「案外、マリーンを説得するのに時間がかかるかもしれないって思ったのかもよ」
「えーっ、ヒューイット様もマリーンがヒューイット様激ラブなのは知ってるのに?」
「恋愛と結婚は違うもの。身分違いだからマリーンが尻込みするかも、とか」
「いやー、マリーン、鈍いから尻込み以前にポーっとなってすぐ頷くと思うけどな」
「確かに」
「それにしても、私のお茶。効果抜群だったと思わない?」
「そうね。あのヒューイット様がマリーンを襲うとは」
「えーっ、私がマリーンにつけさせた水の効果かも」
「庭で膝枕だから、そっちの惚れた相手を落とす水効果の方が効いた可能性の方が高い?」
「どっちも怪しいと思ってたけど、意外に効果あるのね。私も使ってみようっと」
「何よ。マリーンを実験台にしたの?」
「そういうわけじゃないわよ。お店の子は効果抜群っていってたし、あれ結構高かったのよ?」
「私も買ってみようかな、惚れた相手を落とす水。なんか名前は胡散臭いけど」
「つけてから1時間後くらいが最高に匂うらしいわよ」
「じゃ、私も買ってみよ。お茶は、家に呼ばないと使えないもの」
「いつまでお喋りしているの。休憩はもう十分でしょう。マリーンが辞めて忙しくなったんだから、さあ早く仕事してちょうだい」
「はーい」
「じゃぁ私はヒューイット様の部屋に行ってきまーす」
「私は旦那様の部屋へ行きまーす」
「私は一階へ行きまーす」
◇◇◇◇◇
「ふうっ」
「連中は元気ですね」
「ほんとうに」
「あの子達は、あの同僚が見染められるのなら、自分の方がとは思わないんでしょうかね」
「思ったでしょうよ」
「ならば、なぜあんなふうに彼女を応援するんでしょう。ヒューイット様に自分を売り込もうとせずに。ヒューイット様に憧れていたのは彼女だけではないでしょう」
「そうですね。ヒューイット様はこの町の独身女性の憧れの的ですし。マリーンは確かに美人ではなく、他の子の方が若くて綺麗で積極的ですし」
「なのに?」
「毎日毎日ヒューイット様の部屋で祈って、こちらへ滞在期間中は一心にあの方を見つめ続ける彼女に、幸せになってほしかったんですよ、きっと。一生懸命な同僚を、応援したくなるものなんです」
「そんなものですかね」
「そんなものです。みんな、いい子達ばかりですから」
~The End~
ここまで読んでくださって、どうもありがとうございました。
ヒューくんがプロポーズしてない、と思われると残念なので補足です。
彼は一応マリーンにプロポーズしたつもりです。
「帰ろう(僕達の家に)」で。
そんなんマリーンでなくともわかるかーという方、誠に申し訳ない。
ははははっ(^~^;