第20話:東方への険路と、狂気の先導者
1. 旅を阻む闇の概念
蓮たち四人を乗せた馬車は、王都を避けるように東方へと急いでいた。しかし、各地で**『闇の概念』**による病の影響が出始めており、旅路は予想以上に困難を極めた。
検問の町では、衛兵たちが次々と倒れ、里への立ち入りが厳しく制限されていた。
「神崎殿。このままでは、神の塔への到着が大幅に遅れます。病はすでに、人々の**『信頼』や『希望』といった『概念』**までも汚染しているようです」ユリアが深刻な表情で報告した。
蓮の**『強化された鑑定』でも、町の空気中に、佐野瑛太から検出されたものと同じ『憎悪の闇』の残滓**が漂っていることを確認していた。この闇は、人々の恐怖や絶望を糧に増殖している。
「僕たちが立ち止まるわけにはいきません。この闇を払うには、僕たちの光が必要です」
蓮は、木の枝を構え、馬車の周囲に**『浄化の概念』を無限に積み重ねた結界**を展開した。結界は、闇の残滓を焼き払い、一行は難なく町を通過できた。
しかし、この事態は、フィーネとの再会が遠のくことを意味していた。国家的な危機が拡大すれば、里の警備も強化され、フィーネの立場はさらに厳しくなる。
(フィーネさん。必ずこの闇を断ち切る。それが、あなたとの誓いを守ることになる)
2. 残された者の熱意と忠誠
その日の夜、野営地にて。フィーネの不在は、残されたリサ、ユリア、セラフィナ三人の蓮への**「特別な制御」をさらに鋭敏にしていた。彼女たちの間で、蓮の傍を離れることへの強い不安と独占欲**が渦巻いていた。
リサが、焚き火の炎を見つめながら口を開いた。
「ねぇ、神崎。フィーネがいない間、私たちがあなたの**『護衛』**として、より完璧になる必要があるわ。ね、セラフィナ、ユリアもそう思うでしょう?」
「ええ。この不安定な状況下で、神崎殿の**『安全』を確保することは、私たちの『騎士としての使命』**です」ユリアは真面目な顔で答えるが、その声は微かに震えていた。
セラフィナは剣の手入れをしながら、冷徹な口調で続けた。
「神崎。私は、あなたの**『断罪の概念』を担う剣。常にその力を維持するため、『制御』が必要よ。特に、闇の概念が蔓延る今、あなたの熱**を絶やしてはならない」
三人の言葉は、蓮への尽きることのない忠誠と、フィーネの不在を利用して蓮を独占したいという感情が入り混じっていた。
蓮は、彼女たちの熱が、この闇に対抗する強い絆の概念であることを理解していた。
「わかりました。あなたたちの**『絆の概念』は、僕の『全能化』の『光』そのものです。この旅路の間、その熱を絶やさないよう、僕が常に『特別に制御』**し、安定させます」
蓮の言葉に、三人の瞳は満足と歓喜に輝いた。
3. 狂気の先導者、佐野瑛太
同じ頃、蓮たちが向かう東方の道筋から外れた場所。闇に堕ちた佐野瑛太が、一人、荒野を彷徨っていた。
彼の全身から放出される**『闇の光』は、周囲の魔物や動物を狂気に陥らせ、彼らを「憎悪の傀儡」**に変えていた。
瑛太の意識は、もはや憎悪の念に支配されており、彼の心には、蓮への復讐というただ一つの概念しか残されていなかった。
佐野 瑛太(低い、耳障りな声で)
神崎蓮……お前が、僕をこの闇の底に突き落とした……。お前のせいで、僕の光はゴミになった……。許さない……!
彼のそばには、彼を監視し、闇の概念の拡散を指示する闇の魔術師の影が寄り添っていた。
闇の魔術師の影
よろしい、勇者よ。お前の憎悪は、我らが計画の最高の動力源だ。神崎蓮たちは、神の塔へ向かっている。先回りし、そこで**『光の概念』**を完全に汚染する儀式を完成させるのだ。
瑛太は、汚染された【闇の光】を大地に放ち、蓮たちが通る予定の街道を、「通行不能な憎悪の空間」へと変貌させた。彼は、蓮が辿る道、全てを絶望で満たそうとしていた。
闇に堕ちた元・光の勇者の狂気的な先導により、蓮たちの旅路は、さらに険しく、そして危険な予感に満たされていった。
4. 神の塔への予感
蓮は馬車の中で、東方から流れてくる闇の概念の増大を感じていた。
「佐野瑛太が、僕たちの旅路を邪魔しようとしている。そして、その背後には、この世界を根本から変えようとする、強大な闇の存在がいる」
蓮は、懐の**『治癒の根源』の宝珠をフィーネに預けたことが、彼の最も正しい選択であったと再確認する。フィーネが里を守っている間、自分たちは世界の概念**を守らなければならない。
「リサ、ユリア殿、セラフィナ殿。東方の神の塔へ向かうルートを変更します。佐野瑛太の狂気が、僕たちを待っている」
蓮の瞳には、闇の概念と、それを操る黒幕、そして憎悪の傀儡となった元・光の勇者への、冷徹な断罪の決意が宿っていた。




