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迷宮レストラン  作者: 悠戯
小さな恋の物語
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閑話・手紙


『拝啓、ライムさま。寒さも日毎に増します今日この頃、如何お過ごしでしょうか』



 ある寒い日の昼下がり。

 ライムはいつもの訓練を始める前に、アリスから渡された一通の手紙を読んで、珍しく困惑した様子を見せていました。



「……これ、だれ?」



 読み書きは習っているので手紙の文章はちゃんと理解できているのですが、だからこそ戸惑いを隠せないようです。



『ご無沙汰しておりますうちに、ひときわ冷え込むようになって参りました。お風邪など召されてはおられませんか』




「ひとちがい?」


「いえ、合ってますけど……シモンくん、やけにカッチリした手紙を書きますね」



 手紙の差出人はシモンでした。

 リサに託した手紙がアリスに預けられ、こうしてライムの手にまで無事届いたのですが、そのお堅い文面からはとてもシモンの姿を想像できません。

 恐らくはクロードによる監修が大幅に入ったのでしょうが、それにしたって子供が同世代の友人に送るような内容ではありません。


 その後ろの文章も、近況を伝える言葉が時候の挨拶を交えながら風雅な筆致で綴られており、ちゃんとしている分だけ逆に妙な不気味さがありました。



「なぐりすぎた?」



 ライムとしては、自分が殴りすぎたせいでシモンの人格面に重大な異常が発生してしまったのではないかと、思わず心配になってしまいます。

 責任を取って、次に会った時にでも彼が元通りになるまで殴っておくべきかと悩んでいると、



「あら、よく見たら封筒の中にもう一通ありますね」



 蝋で封印されていた大きな封筒の中に、目立たないような小さな手紙がもう一通入っているのにアリスが気付きました。

 こちらは一瞬で読めるような短い文章だったので、アリスはさっと目を通し、それから苦笑しながらライムに渡しました。







『わはははは! バカめ、驚いたか。お前が戸惑うのを想像しただけで笑えてくるぞ!』



 どうやら最初の手紙は、ライムを“釣る”ための小道具だったようです。先程のライムの反応まで見越した上での、ちょっとしたイタズラのつもりだったのでしょう。手紙の文章で『わはははは!』なんて書いてしまうくらいですから、きっとノリノリだったのに間違いありません。


 いいようにしてやられたライムの手には怒りのあまり力がこもり、手紙がクシャクシャに握り潰されかけています。


 そして二通目の手紙にはもう一文だけ、こう書かれていました。


『追伸。もうすぐそっちに戻る』



ここまでで今章の前半戦が終了です(多分)。

そして後半戦に入る前に、本編を一旦お休みして二百回記念の企画をやろうと思います。


百回の時と同じく『キャラ名』&『料理名』のお題を貰ってSSを書くのと、それとは別に今回は作中に登場した中で一番人気のメニューを決める、料理の人気投票をやります。集計後にそのメニューのSSも書きますので。

詳しい内容や応募方法などは作者の活動報告ページに書いてありますので、そちらをご参照ください。


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