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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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第9話 未決の勝利

山賊戦、ついに決着です。

レイン vs ゴメス

ヨウ vs エルゼル

それぞれの実力差と、“今の限界”が明らかになります。

―ドンッ!!


爆音と同時に、重い剣が地面を砕いた。

「オラァァ!!」

力任せの一撃。

レインは冷静に距離を取り、かわす。

ゴメスは間を置かず、続けざまに剣を振るう。

荒々しい斬撃が、逃げ場を塞ぐように迫る。


ーレインとゴメスの戦いも、激化していた。


だがレインは落ち着いている。


通常の相手なら一瞬でカウンターを叩き込める。

だが、ゴメスも場数だけは踏んでいる。

簡単には隙を見せない。

互いに距離を詰め、引き、様子を探る攻防が続く。

だが、消耗しているのは明らかにゴメスの方だった。

次第に、焦りがゴメスの動きに現れ始める。

「ちょこまか逃げてんじゃねぇ!」

「オラ!」

その瞬間。

踏み込みが、わずかに甘くなった。


――レインは見逃さない。


瞬時に剣へ持ち替え、肩口を斬り裂く。

「ぐっ……!」

ゴメスが肩を押さえ、よろめく。

「マジかよ……」

その隙に、レインは弓へ切り替え、至近距離から放つ。

矢は、正確にゴメスの胸を貫いた。

「がっ……!」

地面に倒れ、悶絶するゴメス。

「……くそっ……この俺が……こんなところで……」

さらに視線をヨウとエルゼルの戦いへ向け、呟く。

「それにあの男……何者だ……?」

「既にボロボロだが、

 エルゼルと戦ってまだ生きてやがる……」

レインが静かに答える。

「ヨウは将来有望な男だからね」

「ここで終わらせる」

「お前たちの負けだ」

そして、剣を構え直し、静かな殺気を放つ。

「一つだけ聞かせろ」

「なぜ、ダークエルフと組んでいる?」

ゴメスは、苦笑した。

「もうすぐ死ぬ身だ……話してもいいか…

 あいつらは仲間じゃねぇ」

「ダークエルフは、人間社会に潜り込むために俺たちを利用してる」

「昔は、エルフ、ダークエルフ、精霊は別々だったのは知ってるだろ?」

「ああ」

「今は協力体制だが……本音は、上に立ちたいんだとよ」

「人間側に味方を作って、勢力図をひっくり返すつもりらしい」

レインの表情が凍る。

(……また、あいつらか)

過去の記憶が、胸を刺す。

(絶対に……止める)


「だがな……」

ゴメスは、血を吐きながら笑った。

「あのエルフは別格だ」

「お前ら2人がかりでも、無理だと思うぜ」


――その言葉が終わる前に。


レインは、迷いなく剣を振るった。

一閃。

ゴメスの言葉も、命も、そこで断ち切られた。

その頃、俺は――まだ追い詰められていた。


ーーそしてーー


「ヨウ! 加勢する!」

レインの声。

ゴメスが倒されたことを悟り、俺は一旦距離を取る。


ーー回復(ヒール)


淡い光が身体を包み、痛みが引いていく。

エルゼルは、静かに状況を分析していた。

「あの男負けたか…

 それに……回復魔法。2対1」

「面倒だな」

小さく舌打ちする。

「ここは撤退としよう」

その言葉に、俺とレインは一瞬、驚いた。

明らかにエルゼルが有利に見えたからだ。

「お前、人間にしては、面白い力を持っている」

エルゼルは、俺を見据え、冷笑する。

「次に会う時は……殺してやる」

次の瞬間。

風を切る音だけを残し、エルゼルの姿は消えた。


(……決着はついていない)

だが、依頼としては成功だ。

正直、今の俺では、あいつに勝てなかった。


レインが駆け寄ってくる。

「大丈夫か?

 回復魔法まで使えるとは思わなかったよ」

「とりあえずは依頼達成だ。喜ぼう」

笑顔で言うレインに、俺は小さく頷いた。

「……ああ」

だが、心の奥では別の感情が燃えていた。


――まだ、弱い。


――次に会った時は、必ず。


エルゼルを、殺す。

そう、静かに誓った。


山賊たちをすべて片付けた後、俺たちはアジトの内部を確認することにした。

まだどこかに残党が潜んでいる可能性もある。油断はできない。

壁際に背を預けながら、ひとつひとつ部屋を覗いていく。

だが、どの部屋もすでに荒れ果て、使われていた形跡すらほとんど残っていなかった。

「……あとは、奥の一室だけだな」

視線の先、廊下の突き当たりに重厚な扉がある。

おそらく、ゴメスの私室だろう。

俺は警戒を解かぬまま、ゆっくりと扉を押し開いた。


罠の気配はない。

だが、中へ足を踏み入れた瞬間、違和感が走った。

(……壁、怪しくないか?)

部屋の奥、石壁の一部だけが微かに歪んでいる。

魔眼を通して見ると、そこには薄く魔力の膜が張られていた。

「隠し戸か……」

試しに手を伸ばすと、指先が触れた瞬間、魔法陣が淡く光り、次の瞬間には霧が晴れるように消え去った。

石壁が音もなく開き、その奥から現れたのは――

積み上げられた金貨、宝石、装飾品の山。

「……よくも、ここまで溜め込んだな」

思わず呟く。

「被害者、相当な数だろうね……」

レインの声は、珍しく硬かった。

「とりあえず、この件はギルドに報告しよう。

俺が人を連れてくる。その間、ヨウはここで見張りをお願いしてもいい?」

確かに、俺たちが離れれば無人になる。

この財宝を狙う別の賊が現れないとも限らない。

「わかった。待ってる」

「助かる。すぐ戻るから」

そう言い残し、レインは街道の方へ駆け出していった。


――静寂が戻る。


俺は時間を潰すつもりで、改めて財宝の眺めていた。

そのときだった。

宝の山のさらに奥、壁一面に描かれた小さな魔法陣が目に入った。

明らかに、ただの保管用ではない。

「……なんだ、これ」

眼が、わずかに疼く。

吸い寄せられるように近づき、手を伸ばした瞬間――


魔法陣が脈動し、空間が歪んだ。

次の瞬間、壁の中から細長い箱がゆっくりと現れる。

それなりに大きく、だが異様なほど存在感がある。

箱を開けると中に収められていたのは――剣。

だが、ただの剣じゃない。

眼が強制的に情報を流し込んでくる。

剣の内部を巡る、膨大な魔力循環構造。

「……とんでもない魔力量だ」

これを振るえば、破壊力は想像もつかない。


――取れ。


――手に取れ。


耳元で囁かれた気がした。

眼が、剣を求めている。

気付けば俺は、無意識に柄へと手を伸ばしていた。

触れた瞬間――


剣から魔力が流れ込み、俺の体内の回路と接続される。

魔力が循環し始め、全身を駆け巡った。


――ゾクリ、と背筋が震えた。


自分の魔力格が、引き上げられたのがはっきり分かる。


<魔術: B → B++>


再び眼で解析する。

そこに表示された能力名を見て、俺は思わず息を呑んだ。


《魔剣アルティエルン》


――使用者の意志に応じ、形態を自由に変化させる万能武装。

――心亡き武具に宿る魔力を吸い取る。


「……ふざけた性能だな」

思わず、そう呟いていた。

剣にも、槍にも、弓にも。

理論上、ほぼすべての武器形態へと転換可能らしい。

これまで使っていたのは、グラディウスで強奪した安物の剣だ。

切れ味も耐久も、正直大したものではなかった。

それに比べれば――

この剣は、もはや同じ“武器”という枠に収めていい代物じゃない。

「悪いな……これは、俺がもらう」

そう呟き、代わりに今まで使っていた剣を箱の中へ収めた。

思いもよらない場所で、とんでもない代物を手に入れてしまったらしい。

だが、ひとつだけ引っかかる表示があった。


――心亡き武具。


「……妙な言い方だな」

武具に心があるわけがない。

少なくとも、俺の知る限りでは。

だが、この剣が示す情報は、無意味な言葉を並べているようにも思えなかった。

「……まあいい。後で誰かに聞けばいいか」

今は、それ以上考えるのをやめることにする。

そう結論づけた、そのときだった。

「ヨウ!戻ったよ!」

背後から、聞き慣れた声。

振り返ると、ギルド職員を数名連れたレインが立っていた。

「やっと戻ったか」

「お待たせ。状況は?」

「問題なし。財宝もそのままだ」


ギルド職員たちは素早く現場を確認し、うなずいた。

「こちらの物資は責任をもって回収します。

お二人はギルドへ戻って、依頼完了の報告をお願いします」

「よろしく頼む」

レインがそう答えて俺たちはその場を離れる。


こうして、後処理をギルドに任せ、俺とレインは再び街へと戻ることになった。


――――――――――――――――――――――――――

【陽】

種族:人間

称号:冥奪の眼保持者

加護:憎悪の神エルロキス

眼のレベル:Ⅱ


剣術:A

魔術:B++


魔法

 (ファイア)  火炎(フレイム)

 疾風(ブラスト) 暴風砕破(ストーム)

 回復(ヒール)


技能

 毒操作(ポイゾナー)


装備

 魔剣アルティエルン


ご覧いただきありがとうございます。

山賊戦決着、そして魔剣入手。

ここからヨウの強化が始まります。

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