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収奪の復讐者 ~奪われた全てを取り戻す悪魔の眼~  作者: 冬野 ヨル


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60/60

第60話 想定外の戦力

第三区での戦いは続く。

潜伏する教団幹部を追い、さらに奥へと進む陽たち。

そして彼らの存在は、少しずつ戦況そのものを動かし始めていた。

第三区でも動きが激しくなっていく。


「一気に片を付けて、もう1人の幹部のところへ向かうぞ」

俺は剣を抜きながらサマエルへ視線を向ける。

「サマエル。

 お前は先に奥へ進め。

 幹部を特定しろ。

 可能なら、そのまま始末してくれ」

「かしこまりました」


サマエルは静かに床を這い、闇へ溶け込むように消えていく。

そして俺たちは、教団の拠点へ突入した。


ヒュンッ!!

先手を取ったのはレインだった。

「お前ら――」

教団員の1人がこちらへ気付いた瞬間、

矢が喉を貫く。

「がっ……」

そのまま絶命。

さらに続けて放たれた矢が、

周囲の教団員たちへ突き刺さる。


その隙を逃さず、

俺とセラも一気に踏み込んだ。


「ぎゃああっ!!」


悲鳴と共に教団員たちが倒れていく。

わずか数十秒で、

入口付近のフロアは制圧していた。


その間にも、

サマエルは奥へ進んでいく。


「おい!

 何の騒ぎだ!?」

音に気付いた教団員たちが、

奥から次々と姿を現した。

「っ!?

 侵入者だ!!」

「急げ!

 ゴラム様へ伝えろ!!」


1人が慌てて奥へ駆けていく。

それと同時に新たな教団員たちが押し寄せてきた。

「おい……

 この建物、どんだけ教団員がいるんだよ」

レインが呆れたようにぼやく。

「気にするな。

 目の前の敵だけ見てろ」


ズバァン!!

セラの魔法が教団員を吹き飛ばす。


シュシュシュシュ!!

レインの矢が次々と急所を射抜く。


そして――。

ズバッ!!

バシュッ!!

俺の剣が、

迷いなく教団員たちを斬り伏せていった。


「こいつら強すぎる……!」

「なんなんだよ、こいつらは……!」

完全に怯え始めた教団員たちを斬り伏せながら、

俺たちは階段を駆け上がっていく。


そして――。

ものの数分で最上階へ辿り着いた。

俺たちが到着した時には、既に幹部らしき男は、息絶えていた。

「……終わってる?」

セラが小さく呟く。


「ヨウ様、始末しておきました」

足元から声が響く。

いつの間にか、

サマエルが戻ってきていた。

「こいつがゴラムという幹部の1人です」

俺たちも急いでいた。

だが、サマエルはそれ以上だった。


蛇の姿による潜入能力と、強力な毒。

並の相手では、気付いた時にはもう手遅れだ。

ゴラムは胸を押さえ、

苦しみ悶えた様子のまま倒れている。


――ゴラム・レザ

魔術:B++


魔法

(ウォーター)

地震(クエイク)


(お、いいの持ってるじゃん)

(ウォーター) コピー>

これで俺も、水魔法が使えるようになった。


「よし、次だ。

 残りの幹部を始末しに行こう」

そう言いながら、

俺はふと思う。

(……最初からサマエルに任せておけばよかったかもしれないな)

今のサマエルは、

潜入と暗殺に特化している。

厄介な相手ほど、

表からぶつかるより、

サマエルに処理させた方が早い。

そう思わされる戦いだった。


建物を出た俺たちは、

サマエルの案内で、

もう1人の幹部が潜伏する拠点へ向かっていた。


だが、その直後――。

別の男が建物へ到着していた。

「こ、これは……

 いったい何が起きたんだ……?」

男は恐る恐る建物内を確認する。

転がる死体。

血の臭い。

そして――。

「ゴラム殿……!」

男の顔から血の気が引いた。

「これはまずい……

 急いで報告しないと……!」

男は慌てて建物を飛び出していく。


この時の俺たちは、

自分たちの行動が、

メル全体の戦況を大きく動かしたとは、

まだ気付いていなかった。


――俺たちが、

サマエルに案内されながら、

もう1人の幹部の拠点へ迫っていた頃。


「ケイム様!」

「どうした?」

「それが……」

「さっさと言え」

「ゴラム殿が殺されていました!

 それに、その場にいた教団員たちも全員です……!」

「……なんだと?」

ケイムの表情が変わる。

(どういうことだ……?)

ホライゾンとバスティオンは、

第一区と第二区の守備に回っている。

他へ戦力を割けるはずがない。

(となるとフロンティアか?

 ……いや、違う)

エリックとヴィヴィアンは、

今まさに第四区で戦っている。

それに、ここに来ていないフロンティアの残りは評議塔を守備しているはず。


ならば――。

(俺の知らない戦力が動いている……?)

ケイムの額に汗が流れた。

完全に想定外だった。

「……使いたくはなかったが、仕方ない」

苦々しく呟く。

「全員へ伝えろ。撤退だ」

「はっ!」

部下は即座に走り去った。

そしてケイム自身も、

ミーナの元へ急ぐ。


コンコン――。

「ミーナ様、ケイムです」

扉を開ける。

「どうしたのよ?

 まさか、もう終わっちゃったわけじゃないわよね?」

ミーナはつまらなそうに笑った。

「いえ。

 私の把握していない戦力が動いています」

「評議塔を落とす計画は崩れました。

 急ぎ撤退を。

 現場には既に伝えております」

「……そう。

 しくじったのね」

ミーナは呆れたように溜息を吐く。

「がっかりだわ」

「罰はいかようにも。

 ですが今は、ミーナ様の安全確保が先です」

「はぁ……まったく」

ミーナはゆっくり立ち上がった。

「わかったわ。

 急ぎましょう」


そして2人は、

《パイオニア》執務室の隠し通路へ姿を消していく。

同時に第四区でも撤退の狼煙が上がる。


「おいおい、マジかよ。

 いいところだったのによ」

テッドは肩を回しながら笑う。

「ケイムの野郎……」

そのまま、エリックへ視線を向けた。

「悪いな、エリック。

 どうやら今日はここまでだ」

そう言って背を向ける。

「おい!

 どういうことだ!?」

エリックが叫ぶ。

するとテッドは、振り返りながら口角を上げた。

答えは返さない。

そのまま走り去っていく。


一方――。

「ふん。ケイムの奴、しくじったんだね」

ミレーユはレイピアを下ろし、

呆れたように鼻を鳴らした。

「結局、あいつも無能だったってことかね~」

「ちょっと!

 あの狼煙は何なのよ!?」

ヴィヴィアンが叫ぶ。

だがミレーユは肩を竦めるだけだった。

「うるさいよ、小娘。

 あんたには関係ない話さ」

そう言い残し、

ミレーユも撤退していく。

「ちょっと待ちなさいって!!」

ヴィヴィアンの声を無視し、その姿は小さくなっていく。


テッドとミレーユの撤退に合わせるように、

アウトライダースの団員たちも撤退を開始する。


「なんのつもりなんだ……?」

「私たちが勝ったってこと……?」

エリックとヴィヴィアンは顔を見合わせた。


フロンティアの団員たちも困惑している。

「勝ったのか……?」

「逃げてったよな?」

「ってことは……」

「俺たちの勝ちだ!!」

「やったぞぉぉぉ!!」

歓声が上がる。


だが、エリックとヴィヴィアンだけは腑に落ちない表情を浮かべていた。

「みんな。とりあえず《パイオニア》も含めて第四区を調べるぞ」

「そうね。残党が潜んでるかもしれないし」

「連中の残りを見つけたら捕縛してくれ!」

「「はい!!」」


しばらくしてエリックの元へ報告が入る。

「このあたりには既に敵影はみえません。

 さっきの狼煙で全員撤退したものかと」

「そっか、わかった」

「ねぇ、エリック。

 これは一度報告しておいた方がいいんじゃない?」

「……そうだな、俺とヴィヴィアン以外はここに残すか」

「ううん、私が行ってくるからエリックはここで指揮をとらないと。

 何かあるかもしれないしね」

「わかった、頼む」


こうして――。

フロンティアによる第四区の戦闘は終わりを迎えることができた。




――――――――――――――――――――――――――

【陽】

種族:人間

称号:冥奪の眼保持者

加護:憎悪の神エルロキス

眼のレベル:Ⅱ


剣術:S++

魔術:S

槍術:S+

弓術:S

闘斧術:A

盾剣術:S


魔法

 (ファイア)     火炎(フレイム)   爆炎連焼(ブレイズ)

 放電(スパーク)     雷撃(サンダー)

 疾風(ブラスト)     暴風砕破(ストーム)

 岩石(ストーン)

 (ウォーター)

 回復(ヒール)

 隷従契約(サーヴァント)

 (ホーリー)


技能

 毒支配(トキシニオン)

 暗殺剣:Ⅱ

 隠密:Ⅱ

 魔法の理:Ⅰ

 精神感応(テレパシー)


装備

 魔剣アルティエルン


―――――――――――――――――――――――――

【レイン・ミスティールス】

種族:人間/エルフ混血


剣術:B

魔術:S

弓術:S++


魔法

 (アイス)   氷結(フロスト)

 (ウォーター)  洪水(フラッド)   激流断砕(トレント)  災厄潮波(タイダルウェーブ)

 回復(ヒール)  状態回復(レスト)


―――――――――――――――――――――――――

【セラ・ルクシア】

種族:人間

称号:聖陰の光魔術師

加護:愛憎の神


魔術:S+


魔法

 光の雫(ライトドロップ) 光線(レイ)   月の旋律(ルナハープ)

 閃光(フラッシュ)   癒光波(ヒールウェーブ)

 (ライト)    光粒(フォトン)  光鏡反射(リフレクション)

 (ホーリー)   聖域(サンクチュアリ)  断罪執行(ジャッジメント)


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第三区での陽たちの行動をきっかけに、戦況が大きく動き始めました。

第四区で続いていた戦いにも、ついに変化が――。

次回もよろしくお願いします!

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