第30話 精霊石が選んだ者
遺跡探索回です。
ついに地下遺跡の奥へ。
そして今回は、レインに大きな変化が。
3人の連携も。
俺たちが通路へ足を踏み入れた、その瞬間だった。
――ゴォン。
背後で、鈍く重たい音が響く。
振り返ると、解除したはずの石扉が、ゆっくりと閉じ切っていた。
「……閉じたな」
「完全に、退路を塞がれたみたいだね」
(歓迎ってわけじゃなさそうだ)
気を取り直し、前へ進む。
通路を抜けると、そこは朽ちた神殿のような広間だった。
天井は高く、太い石柱が規則正しく並び、
壁際には人型の石像がずらりと立ち並んでいる。
長い年月を経たはずなのに、不思議と崩壊は最小限に抑えられていた。
「……こんな場所、表の遺跡からは想像できないな」
「でっかい石像、いっぱいあるよ……」
レインもセラも、素直に驚きを隠せない様子だった。
それも無理はない。
ここだけ、別の遺跡に迷い込んだかのような空間だった。
慎重に進むと、広間の中央に台座が置かれているのが見えた。
その上には――淡い青色に輝く石。
「綺麗……」
セラが思わず声を漏らし、近づこうとする。
その瞬間だった。
「待て、セラ」
レインが、息を呑んだような声で制止する。
「……それ、精霊石だ」
「精霊石?」
俺が聞き返すと、レインは石から目を離さずに続けた。
「高位精霊だけが作れるって言われてる代物だ。
エルフ族、ダークエルフ族、精霊族……限られた存在しか扱えない。
魔力を封じ込めて、使う者に力を貸す石だよ」
「そんなものが、なんでこんな場所に?」
「……わからない。
でも、古代遺跡なら、何かしらの因縁があってもおかしくない」
俺は無意識に“視た”。
――水の精霊石
水の力を行使することができる
(水……か)
次の瞬間、精霊石が強く輝き始めた。
「っ……!」
光が一気に広がり、視界が白に塗り潰される。
魔力の奔流が、はっきりと感じ取れた。
そして――その流れは、レインへと集中していく。
「……っ、うぁ……!」
レインの身体が光に包まれ、石の輝きが急速に失われていく。
やがて光が収まったとき、台座の上には、ただの鈍い石が残っていた。
俺はすぐにレインを視る。
――レイン・ミスティールス
剣術:B
魔術:S
弓術:A++
魔法
氷 氷結
水 洪水 激流断砕 災厄潮波
回復 状態回復
(水属性魔法の拡張……いや、これは完全に適合している)
「レイン……強くなったみたいだ」
俺がそう言うと、レインは少し呆然としたまま、自分の手を見つめる。
「……たぶん、エルフの血が反応したんだと思う」
「すごいよ!レイン!」
セラが嬉しそうに声を上げた、その時だった。
――ゴゴゴゴ……。
低く、地鳴りのような音が広間に響く。
台座の奥、壁の一部が砕け散り、瓦礫の向こうから“それ”が現れた。
人型。
だが、明らかに人ではない。
岩と岩を積み上げたような巨体。
手には、石で作られた大剣。
「……まさか、守護者ってやつか」
「洒落にならないサイズだな……」
石の巨人は、何も言わず、ただ俺たちを見下ろすと――
一歩、踏み出した。
ドンッ!!
床が揺れ、衝撃が足元から突き上げる。
「来るぞ!」
「やるしかないね」
「うん……!」
俺は前へ出る。
「レイン、後方支援!
セラは詠唱優先、無理はするな!」
石の巨人が剣を振り上げる。
その一撃は、風を切る音すら重い。
――激流断砕
レインの詠唱が響き、激流が石の巨人の脚を打ち据える。
だが、完全には止まらない。
「硬っ……!」
「なら――」
俺は踏み込み、剣を振るう。
石の表面にヒビが走るが、致命打には至らない。
「セラ!」
「うん!」
――光粒
光の粒子が、石の巨人の胸部を焼く。
光と水、そして剣。
三人の力が噛み合い、徐々に巨人の動きが鈍っていく。
「今だ、レイン!」
――災厄潮波
巨人を覆うかのような水流が、巨人を押し流す。
バランスを崩したその瞬間――
俺は全力で踏み込み、剣を振り抜いた。
轟音とともに、石の巨体が崩れ落ちる。
……静寂。
崩れた瓦礫の中で、もう動くものはなかった。
「……倒した、のか」
「どうやらね」
息を整えながら、俺は広間を見渡す。
(力を得る場所には、試練がある……か)
精霊石。
石の巨人。
そして――
巨人が現れた壁の奥へと続く、まだ途切れていない通路。
「……この先、どこに繋がってるんだろうな」
俺が呟く。
「出口、とか?」
「だったら助かるけどね」
そんな会話を交わしながら、
俺たちは崩れた石壁の向こうへ、再び足を踏み入れた。
通路は、緩やかな下り坂になっていた。
遺跡のさらに深部へ潜っていく感覚とは違う。
どこか“外へ抜けていく”ような、空気の流れを感じる。
しばらく進むと、前方に淡い光が見えた。
松明でも、魔法灯でもない――自然光だ。
歩みを進めるごとに、光は少しずつ大きくなっていく。
胸の奥に、確かな予感が生まれる。
そして――
通路を抜けた先は、外へと続いていた。
「……ここは……」
レインが息を呑む。
同時に、俺も理解した。
「え? どこなの?」
セラだけが、まだ状況を掴めていない様子だった。
俺たちが立っていたのは、森に囲まれた斜面の一角。
振り返れば、遺跡の出口は岩壁に溶け込むように口を開けている。
「エントラ島だ」
俺がそう告げる。
遺跡は高所に入口を持ち、
内部で地下へ潜り、
そして――下った先で、再び地上へと抜ける構造だったらしい。
少し進み、森を抜けると、視界が一気に開けた。
そこはエリシアとテーヴァの国境沿いに広がる広間だった。
「まさか、こんな形で戻ってくるとはな」
レインが苦笑する。
「一方通行の出口だけど……」
そう言って周囲を見回し、
「アマツカ山脈へ向かう俺たちには、むしろ都合がよかったかもね」
(確かに、戻る手間はかなり省けた)
「やっと外に出れた~」
セラもホッとして伸びをしていた。
「ここからは、いよいよアマツカ山脈だ」
俺がそう言うと――
「うん! 早く行こう!」
セラは、先ほどまでの激戦が嘘だったかのように元気だった。
その背中を見ながら、俺は一歩踏み出す。
こうして俺たちはエリシアを後にし、
次なる目的地――アマツカ山脈へと向かった。
その先に、さらなる試練が待っていることを、
まだ誰も知らないまま。
――――――――――――――――――――――――――
【陽】
種族:人間
称号:冥奪の眼保持者
加護:憎悪の神エルロキス
眼のレベル:Ⅱ
剣術:S
魔術:A+
弓術:E
闘斧術:A
魔法
火 火炎
疾風 暴風砕破
回復
隷従契約
聖
技能
毒支配
暗殺剣:Ⅱ
隠密:Ⅱ
魔法の理:Ⅰ
装備
魔剣アルティエルン
―――――――――――――――――――――――――
【レイン・ミスティールス】
種族:人間/エルフ混血
剣術:B
魔術:S
弓術:A++
魔法
氷 氷結
水 洪水 激流断砕 災厄潮波
回復 状態回復
―――――――――――――――――――――――――
【セラ・ルクシア】
種族:人間
称号:聖陰の光魔術師
加護:愛憎の神
魔術:A
魔法
光の雫 光線 月の旋律
閃光 癒光波
光 光粒
聖 聖域
読んでいただいてありがとうございます。
エリシア編、ひとまず一区切り。
遺跡の奥で手に入れた新たな力。
そして、次の目的地はアマツカ山脈。
ここから先は、さらに危険な土地や新たな出会いも増えていきます。
引き続き、ヨウたちの旅を見守っていてください。




