表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第9章『きょうも、なんでもない一日。』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/195

『すっぴん革命』

朝。目覚まし時計の音が鳴ったのは、とうに登校30分前だった。


「う、そでしょ……!? なんでっ……!?」


ひよりは毛布を蹴飛ばしながら跳ね起きた。

寝坊した理由は、昨夜つい読みふけってしまった少女漫画の一気読みだ。

ヒロインが初めて彼氏にすっぴんを見せるシーンで胸がきゅっとなり、そのまま気づけば2時半――。


「あと15分で出なきゃ……顔、顔っ!」


急いで洗面所へ。鏡を見た瞬間、ひよりの脳内に警報が鳴り響いた。


《これは……マズい! いや、まずいどころじゃない!!》


いつもの“配信用ぱっちり顔”とは程遠い、むくんだ頬にバラバラの前髪、そして……なんとも素朴な素顔。

最低限、日焼け止めとリップくらいは塗りたい。だが、時間がない。


「ちょっとだけ、コンビニでお茶買うだけだし……い、いける、よね……?」


自分を鼓舞し、適当なパーカーとスカートを身につける。

髪を結ぶ間も惜しみ、キャップを目深にかぶった。


こうして“戦闘力5”のひよりは、自宅をそっと出発した。


◇ ◇ ◇


朝の街角は、妙に視線が気になる。


(いやいや、だれもわたしのことなんて見てないってば!)


ひよりは心の中で叫ぶ。

コンビニまでの道のりが、こんなにも長いと感じたのは初めてだった。


──だが。


「……ん?」


すれ違いざまに、ちらりと目が合った男性がいた。


キャップにマスク、パーカー姿。

その立ち姿に、どこか見覚えがある。


(ま、まさか……いや、違うよね? まさか、あのお兄ちゃんがこんな時間に?)


ふと、彼がスマホを取り出す。その動作までが妙に見慣れていた。


(嘘でしょ!?)


すれ違ったあと、ひよりはその場で立ち止まり、そっと振り返った。


けれど、彼の姿はもう角を曲がって見えなくなっていた。


「……え、今の、絶対そうだよね……?」


キャップの下で顔が真っ赤になる。

ひよりはそのまま、コンビニにも寄らずに走って帰宅した。


◇ ◇ ◇


リビングで座り込む。


(見られた……絶対見られた……部屋着ですっぴんで……。終わった……わたしの女子力、マイナスだ……)


膝を抱えて震える。


(っていうか、なんでこのタイミングで出会うの!? 世の中そんなに厳しいの!?)


スマホの画面が通知で光ったのは、そんなときだった。


『今日、どこか出かけてた?』


差出人:お兄ちゃん(天城コウ)


(うわあああああ!?)


思わずスマホを投げかけて慌てて受け止める。


手が震える中、返信はせずにそのまま様子をうかがう。


そして、数分後――


『さっきの、可愛かったぞ』


画面に浮かんだその一文。


「……へ?」


ぽかんとして、それから顔が一気に熱くなる。


「な、なななな、なに言ってんのよアイツはあああああ!!?」


顔を真っ赤にして叫び、クッションに顔をうずめる。


バクバクと音を立てる鼓動がうるさい。


(ばっ……かじゃないの!? なんでそんなこと言うの!? い、今のわたし、可愛くないでしょ!?)


布団にくるまりながら、画面をもう一度見返す。


『さっきの、可愛かったぞ』


短いその一言が、まるで呪文みたいに、心にじんわり染みていく。


「……ほんと、ばか……」


でも――口元は、なぜかゆるんでいた。


◇ ◇ ◇


その日の夜。

いつも通りの配信準備を終え、メイク道具を手に取る手が一瞬止まる。


鏡の前で、ひよりは自分のすっぴんをじっと見つめた。


「……うん。悪くない……かな?」


ほんの少しだけ、自信が芽生える。

そしてそのまま、優しくリップを引いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ