第55話 ソルンの未知のダンジョン
早朝、ジンとヒューイとアリシアが外に出て素振りを始める。
ジンはバスターソードほどの大剣ではないが、アリシアが使っている使い慣れた剣ではなく素振り用に少し長く重たいアダマンタイト製の剣を作成して渡した。
一応魔法を付与して、実際に持つ時には羽のように軽く、相手に伝わる斬撃は30キロの大剣を振り下ろされたかのように衝撃が相手を襲う魔剣だ。
しかし素振りの時は凡そ10キロほどの重さの剣を振っているように感じるように調整してあげた。
ジンのバスターソード『剛力』は素振りの時も相手に斬撃する時もともに40キロの重さだが、戦う時はジン自身には羽ほどの重さにしか感じないで、鋼鉄さえも砕いてしまう剣だ。
アリシアはジンのような体格の男性が40キロの大剣を素振り5000回毎朝してるのを聞き信じられないと思っていた。
実際に目の前でやっているのを見て彼の剣の速さの秘密を垣間見た気がした。
腕が上がらない限界迄アリシアは素振りをして、やっと座禅に移った。
瞑想し心を無にして気を感じながら疲れも雑念も亡くなった時に初めてジンが「辞め!それまで」と合図して車に戻った。
アリシアを先にシャワーに入れてあげ、次にヒューイ、ジンが最後に入って着替え、二人に【ヒール】をしてあげて、悲鳴をあげていたアリシアの腕の筋肉を直してあげた。
朝食はピロシキを2個ずつ、ボルシチとアスパラベーコン巻き3本ずつを皆に出した。
王女がまたまた大声を出して「王宮の朝食よりも何倍も美味しい」と叫んでいる。
ジンが王宮に王女を送って行き、その後ジン達は王都を離れて、ソルンの街に向かった。
ソルンの街は王都に近い為、割と人の流れが多い街だ。
ここはアリシアが居るので門を通過するのに顔パスだ。
最もジン達も『王家の短剣』を持っているので何ら問題はないのだが・・・。
先ずはギルドに行ってクエストを見てみる事にした。
アリシアはここでは余りにも有名人なので、ドールと車の中で待つことにした。
しかし、これというクエストが無い。
ジンはおもむろに、ステータスと同期させている<タブレット>を表示させ、"ソルンでの面白い冒険、隠れたダンジョンは無いか?"ポチッた!
『ここには未だ発見されてない未知のダンジョンが有ります。場所は東門を出て南に2キロ程行った丘の岩場です』と表示された!
車に戻ってアリシアに未知のダンジョンの話をしたら驚いていた。
早速その場所に車で移動する。
岩場に着いたが見た所それらしき場所が見当たらないがジンが【サーチ】を掛けると大きな岩によって塞がれているが向こう側に入口が有る事が分った。
ジンが岩に手を当て、掌底破を放った!
大きな岩が砕け散って、人が2人は通れる洞穴が目の前に現れた。
この国のダンジョンに関しては殆ど知り尽くしていると自負していたアリシアさえも分からなかったダンジョンだ!
ドールが【ライティング】魔法で足元を明るく照らしてくれた。
階段が現れ、1階層に皆で降りていく。
1階層の周りには、蛍光草と云う苔の仲間が生えていて、中は割と明るい。
ドールが先頭で次に【サーチ】を駆けながら行くジン、イザベラ、イリーナ、イリア、アリシア、殿にヒューイの順で向かった。
アースモールが10匹程襲ってくる。
アースモールはモグラを何倍にも大きくした魔物で鋭い前歯をもった魔物だ。
ドールとジンが剣で何なくしとめて回収する。
2階層は平原ステージにグリーンウルフ30匹、オークが20頭にオークキングが1頭いる。
草原に火が移るとまずいので、イリーナとイザベラが【アイスアロー】で10匹倒し、アリシアが10匹、ドールが10匹共に剣で首を切り落とした。
オーク20頭はヒューイとジンで10頭ずつ首を落として、キングは盾ごとジンが肩から袈裟がけに切断した。
3階層は岩場に岩竜が2匹いる。
ジンが1匹の上に乗り、掌底破を放ち、殺した。
もう1匹はアリシアが岩を吐き出すタイミングを測って、首を出した刹那剣で切りおとした。
「さすがだね、剣の速さはまあまあたっだよ」
「ありがとうございます、師匠!」
ジンに褒められ、顔を赤らめたエルフの美女アリシア。
4階層はアースゴーレムが2体出て来た。
魔石を破壊するか取り出さないと、再生を繰り返す。
ヒューイが蹴飛ばして粉々にしても、また土が集まり出して再生してしまう。
イリーナが「イザベラ、右のゴーレムに集中してまずは【アイスボール】で全体を包み込みましょう。そのあと魔石の部分んだけ【ファイアスプラッシュ】で氷を溶かして、イリアが同じ土の【アースアロー】を強力打ち込んで!」
「もう1体はジン君に任せるわ」
「はいはい、しかと任されました!」と余裕でジンが魔石位置を【サーチ】で確認して、掌底破1発で破壊して回収。
もう1体の氷詰めのゴーレムもイリア叔母さんの【アースアロー】で魔石を貫いて倒した。
「お母様、わざわざ氷漬けにしなくても最初からイリア叔母様の【アースアロー】で破壊すれば良かったのでは?」
「それじゃダメよ、ゴーレムって意外に動きが早いから、まず動きを止めてからじゃないと防がれてしまうの」とイリーナがイザベラに言う。
ジンが「さすが年の功ですね、イリーナさん」
「あら、実年齢ではジン君と10歳ほどしか長生きしてないわ」と笑いながら答えた。
5階層は海のステージで『空飛ぶ車』に全員で乗り込み、海上2メートルに飛んで【サーチモニター】をかけると、巨大なシーサーペントが1匹いるのが掛かった。
ジンは『空飛ぶ車』のレーザー砲を打ち放ってそのあと、【アトラクト】で引き寄せて回収した。
「ジン君、今の魔法は何だね?遠くにいる魔物がこちらに引き寄せられて来たようだけど」とアリシア。
「あれはジン君の無属性魔法の【引き寄せ(アトラクト)】という魔法ね!この世界で数人できる人がいるわ」とイリーナが答えた。
”さすが元王立魔法学園の教頭先生だな”と思っていたら、イリーナがジンに豊かなバストをくっつけて来て、「お褒めに預かり光栄だわ」と抱きしめられてしまった。
「ちょっと、お母さんジンから離れてよ!ジンが嫌がっているわよ」
「何言ってるの、ジン君は私の胸で気持ちいいのよ嫌がってなどないわ」と親子喧嘩を始める始末。
とりあえず、5階層を終え6階層に行く手前に宝箱が置かれていた。
罠もなさそうなので、開けると『魔法を跳ね返すリフレクションリング』が入っていた。
ジンの仲間の5人の魔女達は全員『リフレクションリング』を持っているか魔法無効化を持っているので、アリシアにあげる。
これで、魔法を放つ魔物に対しても、そのまま相手にその魔法が襲うので対魔法としてはとてもいい『マジックアイテム』だ。
「ジン君、いいのかい?こんな高価な『マジックアイテム』を未だ弟子になって1日目の私に」
「何言ってるの、ドールもヒューイも耐魔法の体だし、3人のお姉様方はすでに『リフレクションリング』を持っているからアリシアだけだからな、持っていないのは」
「ありがとう!」と顔を赤らめるアリシア。
6階層は平原にグランド・スコーピオンが2匹、ダチョウに似た魔物アクスビーク1匹がいる。
グランド・スコーピオンをイリーナとイザベラが【エアカッター】2連発計4発をそれぞれ放ち、硬いスコーピオンの体さえも切り裂いて殺した。
魔力は魔力3倍のアイテムを使い、頻繁に魔法を放っているおかげで効率がかなり高くなって、威力が以前とくらべものにならない程上がっていた。
アクスビークはヒューイが『神龍剣』で首を切り落として、瞬殺した。
アクスビークは動きが早いので普通の冒険者では複数で打ち取るのだが、アクスビークよりも早く動くヒューイには全く問題ない相手だった。
7階層は瓦礫と廃屋のステージに、ガーゴイル3体とレイス1体がいる。
ドールとヒューイでガーゴイル2体を一瞬で羽と首を切り落とす。
アリシアはガーゴイルを剣で切るのを躊躇っている。
「どうした?アリシア、何故剣をつかわない?」
「ガーゴイルは通常の剣では剣の方が折れてしまうのだ、私の剣は馴染んではいるがごくごく普通の剣なのでおそらくガーゴイルを切ろうとすると剣の方が折れてしまうから・・・」
「そうか、あとでその剣を見せてくれ、バランス、重さを同じにした何でも切れる剣を作ってやるよ」
「剣を作る?何でも切れる剣?」
「アリシアさんジン君の話は深く考えてはだめよ、スルーするぐらいじゃないと驚きすぎて疲れるわよ」とイリーナがアリシアに言う。
そんな会話の間にジンが掌底破でもう1匹のガーゴイルを倒していた。
レイスはヒューイの『神龍剣』から放たれた【浄化魔法】で霧散した。
8階層は森林ステージでサウンドラー2匹、フォレストボア5匹が【サーチ】に掛かった。
アリシアは耳がよく聞こえる分下聴下音に弱く、ジンがストレージから耳栓を出してあげる。
イリーナ達はそれぞれシールドをして防御している。
ヒューイとジンで長い首の頭よりの所を切断して、止血し回収する。
フォレストボア5匹はアリシアが3匹剣で倒し、残りドールが『雷剣』で簡単に倒した。
9階層にはヒュドラがいる。
ジンはアリシアに【プロテクション】をかけてドールとヒューイにやらせようとしたら、「ジン君ここは私たちにやらせて」とイリーナ。
「イザベラ、一番左の火を吐いてる奴から【エアカッター】で首を切り落として、イリアは【ファイアスプラッシュ】で切り口を焼いて!」
手際よく支持するイリーナ、”さすがイリーナさんだ”と感心するジン。
イザベラの【エアカッター】も今ではすごい威力で、ドラゴンクラスでも切り落とせるほど成長していた。
時間は掛かったがイザベラとイリアで強敵ヒュドラを倒した。
10階層はボス部屋だ、中に入るまでラスボスかどうかコアを見るまではわからない。
ドールが重い扉を開けた。
中にいるのはミノタウロスの上位種でおそらく特別変異した耐魔法で剣技のレベルが800程あり、かなり強い。
アリシアが【縮地】で一気に間を詰め突きを出すが相手も強い、剣ではじきかえす。しかも、弾いた剣で上段から袈裟懸けに切り返してくる。
しばらくの攻防だが疲れが出てきたのはミノタウロスだ。
一瞬の隙を見てアリシアが飛び込みざま剣を持つ右手を切り落として、勝負あった。
あとは首を切り落として血止めして回収した。
ダンジョンコアが有るのでこの階層が最後のようだ。
戻る転移盤も有る。
宝箱を開けると『天使の靴』が入っていた。
ジンが【鑑定】すると、空を自由に飛べて、身体強化をかけなくても自由に速度を調整して走れる靴と出ていた。
アリシアは【飛翔】魔法が使えないのでこの靴を履いて自由に飛べるようになったらいい。サイズフリーで、履いた人に自然にフィットするようになっていた。
転移盤に乗って全員が出口から出てきて、外の空気を吸った。
ちょうどお昼を食べずに入ったので、岩場のそばでBBQ方式で、エールと果実ジュースを出し、オークやファングボア、マナバイソン、ソーセージ、あとは野菜などを焼いて、野菜コンソメスープとサラダに、クロワッサンを食べた。
大人数でしかも屋外で炭火焼のように焼いて食べると本当においしい。
イリーナとイリア、アリシアはエールを飲んでご機嫌だ。
食後は車の中でケーキにコーヒーをのみ、皆がのんびりした時をすごした。
アリシアはジンが出す飲み物やお菓子がこの世のものでないのでやはりジンは『迷い人』だと確信した。
イレーナ達もそれを知っていて受け入れて一緒に生活をしている。
アリシアも気にしないで剣を学び美味しいものを共にいただき2年間を楽しもうと決意するのだった。
ジン達はソルンの受付にダンジョンコアを持ち込んで未知のダンジョンを見つけて踏破した旨伝えるとソルンのギルドマスターが出てきて、「自分たちが認めていないダンジョンを踏破したと言われても清算はできない、ダンジョンコアと魔物は置いていけ」とバカな事を人に対して言ってきた。
流石にジンはカチンときて、ダンジョンコアも渡さない、今後二度とここのソルンの冒険者ギルドには来ないと啖呵を切って出ようとすると、冒険者達を使ってジンとヒューイを囲った。
ジンの帰りが遅いので、イリーナとアリシアが出てきて、ジンから内容を聞き、アリシアが前に出る。
「私を誰だか知っているよな?この国のギルドを統括するアリシアだ!この未知のダンジョンをジン殿と一緒に私も踏破したのに認めないだと?しかも狩った魔物を置いていけとはどういう事だ?」
「このジン殿は『王家の短剣』をお持ちになるSSクラスの冒険者だぞ!君ら冒険者が囲っても一瞬で殺されるがそれでもやるのかね?私は止めないよ。このギルが消えて無くなっても構わないからね、君たちはギルドが追い剥ぎ強盗と同じ事をしているのがわからないのか?」
「まさかアリシア様がご一緒とは存じませんでした」とソルンのギルマスが慌てていうが、ジンは既にヒューイと共にブチギレており、「ヒューイこんな追い剥ぎをするギルマスはクビだな」
「アリシア、とりあえず”未知のダンジョン”の入り口は再び塞いでアリシアが復帰するまで誰も入れないようにして、ダンジョンコアも魔物達もレンブラントに持っていくよ」
「わかりました、ジン殿のお好きなように」
「ちょちょちょっと待ってください」とギルマスがいうが、もう遅い。
「あのね、パパを見てどの程度の実力かわからない人がギルマスやってはいけないわ、私たちを囲んだ冒険者の人たちが一瞬で消えたらあなたのせいよ?それじゃ、さようなら」
「アリシア、行こう!」とジンが『空飛ぶ車』の戻りソルンからまっすぐ北に向かってレンブラント王国キースに向かうことにした。
車からアリシアは王都のギルドに『遠距離通話器』で副ギルドマスターに連絡し、即刻ソルンのギルドマスターを解職させ新たな人選をして送るように指示を出した。
ヒューイが憮然として「全く追い剥ぎみたいな事を言うから全部消してやろうかと思ったわ」と未だ怒っていた。
一方ジンの方はもう頭も冷めて、冷静に次にやる事を考えた。
「イリーナさん、ここで一旦レンブラント王国に戻り、キースに行って”魔女の道楽”の品物の補填やアリシアの剣造をしたり、マジックアイテムを整理したいと思うのですが・・・」
「そうね、”魔女の道楽”の補填もあるし、久しぶりに国に戻ってキースにいくかね!」
ジンは一旦キースに行って、色々やる事を整理しようと思った。
「それじゃ、キースに向かって一路北上して国境を超えますね、アリシアはレンブラント王国は初めてでしょ?」
「いいや、私はギルド統括会議で二度ほど行ったことがあるがダルゼの街しか知らない」
「キースは俺が一番最初に訪れた街なんだ!良いところだぞ」
そんな会話をしながら車は下を走りながら国境に向かった。




