第54話 王都シュベールで
ベルギア公国の騎士団長に剣の手ほどきをしてあげて、公爵様から友好の印としてダガーをもらい一路デイマール王国の王都シューベルに向かって走り出していた。
「イリーナさん、実は王都シューベルに着いたらヒューイはギルドマスターのアリシアに剣を教えて、俺がオレリア王女に魔法を教えることになっているんだ」
「取り敢えずシューベルの冒険者ギルドに行きましょう!」とジンが誘った。
受付に「ギルドマスターのアリシアさんをお願いします」と言ってカードを見せた。
「いま呼んで参ります、暫くお待ちください」と言って慌てて2階のギルドマスター室に上がった。
「ジン殿、遅いですよ!月一で来てくれると言っていたのに王女様が今か今かと煩いくらいです」とアリシアが降りて来て愚痴った。
「アリシア、紹介するよ、オレの冒険者パーティーの仲間のイリーナさんとイリアさん、それにイザベラさんだ。全員Sクラスの魔法師だよ」
「初めまして、シューベル冒険者ギルドのギルドマスターをしておりますアリシアです」
「こちらこそ、はじめまして、イリーナです。妹のイリア、と娘のイザベラです」
「ジン君の周りには何故か美人の女性ばかりがいますね」と笑いながらアリシアが言った。
「イリーナさん、ドールを連れて4人でクエストを受けて時間を潰していてください、オレはアリシアとヒューイと王宮に2時間ほど行って来ます」
ジンとヒューイとアリシアは王宮に行って、王女のオレリアに面会を頼んだ。
「ジン君遅いわよ!人に散々待たせておいて・・・」開口一番愚痴られるジン。
「早速競技場に行きましょう!」とヒューイとアリシアも一緒に競技場に行く。
アリシアとヒューイは競技場の中央で模擬戦をして、王女とジンは片側の塀に近いところから反対側の塀に向かって魔法を放つ。
最初は基本的な火の魔法を彼女の手のひらに出現させ、それを小さくしたり大きくしたりを繰り返しやらせる。
次に小さい【ファイアボール】を勢いよく向こう側の塀をめがけて飛ばさせる。
ジンは前もって向こう側の塀には【プロテクション】をかけて壊さないようにしているので、王女あたりの魔力では壊れることはない。
最初は小さい【ファイアボール】をだんだん大きくして尚且つ向こうがわの塀に届くまでやる。
次第に王女も慣れて来て、かなり大きな【ファイアボール】を向こう側の塀にぶつけられるようになった。
次に同じ火系の魔法【ファイアスプラッシュ】を作って見せて彼女にイメージを植え付ける。
「オレリア、オレが作った【ファイアスプラッシュ】を思い出してイメージしてごらん」
彼女は最初はうまく作り出せずにいたが、4回目あたりでできるようになり、次第に威力もましてかなりの破壊力になった。
「同じ要領で【ファイアボム】を作って見せるからイメージしてやってごらん」
今度は小さいながらも1発でできた。
それを繰り返して最後は完全に破壊力のすごい【ファイアボム】を放つことができるようになった。
次は土系だ。
何故かと言うと敵の槍や矢を防ぐのに【アースウォール】ができればかなり防御ができるのでまずはジンが見本を見せる。
これは彼女はイメージしやすかったのかすぐにできた。
その強固な壁にするイメージが難しいのかジンが壁を叩くと脆くも崩れるのでその辺を教え込んだ。
そして最後にはジンが勢いよくぶつかってもビクともしない土の壁を作ることに成功した。
次は【アースアロー】をやってみる。
これもイメージしやすいのかすぐにできて向こうの観客席の壁まで飛ばすことができた。
「オレリア、土の矢の代わりに火の矢をイメージして放ってごらん」
オレリアはすぐにできた。
今度は水系を教える。
水玉をイメージするように教えてジンが【ウォーターボール】を作って見せた。
これもイメージしやすいのかすぐにマスターして、次は水系でも氷を作る。
【アイスロック】を教えるのに、競技場に一脚椅子を持って来て、椅子の足に【アイスロック】をかけてみる。
「オレリア、オレがやったように同じイメージでやってごらん」
最初はなかなか氷を作り出すことが出来ない。
10回近くやってやっと椅子の足に薄い氷の幕を纒わせるところまでいった。
一度成功するとあとはどんどん強固な氷を作り出して成功した。
「オレリア、氷の矢、【アイスアロー】を自分だけで放ってごらん」
オレリアは観客側の塀に向かって勢いよく【アイスアロー】を放った。
かなりの巨烈な魔法が放たれるようになった。
「オレリア、今日はここまでにしよう。ずいぶん頑張ったね!」
「ジンのお陰だわ!こんなに沢山の魔法を私が打てるなんて自分でも信じられないわ」
ヒューイの方を見るとボロボロになって倒れ込んでいるアリシアがいた。
「アリシア、ずいぶんと手酷くやられていたな!Sランクが泣くぞ(笑)」
「ヒューイ先生は容赦ないのですもの」こんなに差があると思うとSランクを返上したいですわ」
「大丈夫だよ、十分君はSランク相当の腕前だよ、ただヒューイが異常なだけだ」
「でもヒューイちゃんがパパはもっと強いよ、と言って容赦してくれないのよ」と顔は爽やかな顔をしていた。
4人はそれぞれシャワーを浴びて王女の部屋でお茶をした。
王女から、宮廷に泊まる様に言われたが、仲間の魔法師が来ているのでギルドに戻ると言ってアリシア、ヒューイと帰ろうとしたら、王女も『空飛ぶ車』の1泊を経験してみたいと、王様にも許可を取り、さっさと、一緒に付いて来た。
取り敢えず一旦ギルドに帰ると、ちょうど食堂でイリーナ親子とイリアさんが納品書を待っている様で食堂にいた。
イリーナさん達にオレリア王女を紹介して、1泊だけ王女も『空飛ぶ車』に体験宿泊することになった旨伝えた。
えらくイザベラが対抗心を燃やしている様に見える。
クエストの清算が出来た様でイリーナが3人のカードと納品書を出して金貨98枚、銀貨86枚、銅貨50枚を受け取っていた。
「イリーナさん、ずいぶん稼いだ様だけど、クエストをいくつこなしたの?」
「難しいのが全然ないから、細かいのを6枚ほど討伐系を剥がしてクエストを受けた結果がこれなのよ」
「ジンがイリーナさんはレンブラント王国の王立魔法学園の教頭先生をやってらした方で、凄い魔法の先生だ」と王女にはなした。
「イリーナさん、お店を畳まなければもしかしたら王女も下宿したいと”魔女の道楽の2階に下宿するかもしれなかったのですよ」
「あらまぁ!そうなの?恋敵が多くなって大変だったわね(笑)」とイリーナ。
「取り敢えず夕食を『空飛ぶ車』で食べますか?それとも定食屋にしますか?」
「ジン君、今日はヒューイちゃんに指導を受けた授業料として私がご馳走しますよ」とアリシアさんが言い出した。
「それなら私がご馳走するわ、だって、ジン君のお陰で魔法が使える様になったもの」と王女が言い出した。
結局アリシアが折れて、王女が皆を夕食に招待する形でギルド近くで一番高級な食事どころの個室を予約して、ジン以下総勢7名で夕食を食べに行った。
「オレリア王女様は魔法師になる希望をもってらっしゃるの?」とイザベラが聞いた。
「はい、我が国の王立の魔法師軍団はジン君に上位3名が瞬殺されるほど弱いので、私はそちらには行かず、ただ父母と兄達家族を守るためにだけ魔法師になると決めて、ジン君の弟子にさしてもらいました」
「ジンは女性に優しいからね!」とイザベラ。
「なんだよ、イザベラ!そのトゲのある言い方は?」
「トゲなんぞございませんよ!ただ事実を言っただけですわ」とイザベラ。
「ジン君も大変だわね、私とイリアにイザベラにオレリア王女様では」とイリーナ。
「何でそこにお母様とおば様が入るわけ?」
「ジン君は熟女好みを知らないの?」とイリーナ。
「ええ?ジン君はそうなの?」と王女様が声を出した。
「取り敢えず、美味しそうな食事が来たので、さぁ食べましょう」とジンが話をそらした。
マナバイソンのステーキとファングボアの生姜焼きとケルピーのスープにサラダが食べ放題で、ヒューイはひたすら肉を食べてご満悦だ。
「王女様、私はやはり王都の冒険者ギルマスを休職してジン君に付いてこの車で旅をご一緒しながら剣術を習おうと思うのですが・・・」
「そんなの許しません、絶対ダメです」と王女。
「しかし、この国のSランクがこれほど弱いと外的に対して拙いので王様に期間を決めて修行させてもらいます」
「あらあら、ますます混戦模様になるわね!」とイリーナが笑った。
「ジンと比較してはダメよ、おそらくアリシアさんもこの国ではトップの剣士でしょ?ジンに簡単に負けたと言っても我が国のハリス侯爵も簡単に負けてしまった相手よ、誰も叶わないわ」とイザベラ。
「魔法ならもしかして、と思っていた私たちでさえ、ニースア公国でのスタンピードの対応をみたらとてもじゃないが叶わないと思ったもの」とイリーナが本音で言っていた。
「私たちはだからこそ、店を畳んでジン君とスキルアップのための旅に出ているのであって、追いつこうとは思わないで参考になる点を学ぼうとしているだけ」とイリーナ。
「だからこそ、イリーナ様、私もジン君に付いて行き少しでもヒントになる剣技を学ぼうと思って・・・」とアリシア。
「まぁ、王様が許してくれるなら車には余裕があるからいいけどね」とイザベラが珍しく妥協して言った。
「でも王女様はダメだわ!一国の王女様が一つの車でヒッチハイクみたいに冒険者と寝食を共にするなんて許されないですわ」とイザベラは何故か王女に対しては厳しい。
なんだかんだとわいわい言いながらも、食事が終わりジンと魔女4人と王女様は『空飛ぶ車』が止まっているギルドの裏の厩舎に行き、車を移動させて、城門の外の平原に【シールド】を施して駐車した。
「イリーナさん、皆んなで紅茶とケーキにしましょう」とジンがショートケーキを2個、チョコレートケーキを2個、サバラン2個を出して食後の別腹タイムとした。
「ジン君、このお菓子は何なの?こんな美味しいお菓子って王宮でも出てないですわ、それにこの紅茶は最高級の茶葉を使っている王宮のものより美味しいなんて・・・!」
「イザベラさんがジン君に付いて離れない理由がはっきりしましたわ!『愛』ではなく『味』なのね」と王女が爆弾発言をした!
イリーナとヒューイが腹を抱えて笑い転げている。
イリアも涙をこらえて笑っていた。
その頃、アリシアは再び王宮に向かい、王様に面会をお願いしていた。
「アリシア、何事じゃ?こんな夜遅く」
「はい、突然の夜遅くの訪問をお許しください、実は今日レンブラント王国のジン殿達がこの国を訪れ、王女様がジン殿に魔法を習い、私はヒューイさんに剣技を習ったのですが、ジン殿どころではなくヒューイ殿にも全く歯が立たず一方的にやられっぱなしの状態でした。これではこの国のSランクとして国を守る身としてはとてもお役に立てる状況ではなく、早急に私の剣技レベルを上げるべく、何卒2年間だけジン殿の元に修行に出ることをお許しください」
「それ程の技術に差があるか?」
「はい、大人と子供ぐらいの違いがあります、追いつかなくても善戦したいと思うのです、幸いギルドマスターは2年間は副ギルドマスターがやってくれますし、何かあれば『遠距離通話器』で連絡を受ければ、ジン殿に【転移】でこちらに一瞬でこれます」
「彼は【転移】もできるのか?」
「はい、実はこの国に来る前にベルギア公国の公都にスタンピードが起きて2万引きの魔物が押し寄せて来たのですがジン殿が【転移】で現れて一人で2万の魔物を灰にしたそうでございます。神級魔法の【インフェルノ】を放ったそうでございます」
「あの御伽話に出て来る魔法か?彼はそれを使えるほどの人物なのじゃな?わかった、お主がジン殿の愛弟子になれば我が国とジン殿が強い絆で結ばれるだろうし、頑張って修行せよ」
「ありがとう、ございます。必ずやご期待に添える剣術家になって戻って参ります」
そういうとアリシアは嬉々として城を出て、ジン達の車が駐車している平原に私物を持って訪ねて行った。
「結局アリシアさんは私たちと一緒に冒険者の旅をしながらヒューイちゃんやジン君から剣技を習うことを王様が許可をしたのね?」とイリーナ。
「はい、”2年のうちにしっかりジン殿の技術を盗んで立派なSランクになって戻って来なさい”との王様の命令でした!」とアリシアがニコニコしていう。
ジンは仕方がないと行った顔つきでイリーナの顔を見ながらどうします?的な顔をして眺めた。
「まぁ、ベッドもあるし、トイレもお風呂もあるから衣食住は問題ないけどね、競争相手が増えたわね(笑)」と言って寝る場所を確保した。
「アリシア、ずるいですわ!貴女だけジン君と一緒に生活をするなんて!」と王女がむくれている。
イザベラはニヤニヤして「王女様まで来るわけには行きませんわね?来月の訪問までお待ちくださいね!」と機嫌がすこぶる良くなった。
「アリシア、明日の早朝から剣の素振りから始めるよ、僕とヒューイは毎朝素振りをして精神統一の座禅をしてから朝食にしているからね」
「もちろんです、私も同じように朝練の素振りからさせていただきます」
そんなことでデイマール王国の城門の外の野原では『空飛ぶ車』という狭い空間の中で熱い戦いが勃発していた。




