イケメンに告白されたけどイケメンが残念
ざわつく男子。いろんな意味で悲鳴をあげる女子。
さすが綾月先輩。一瞬で食堂の空気を塗り替えた……ってそうじゃねぇ!?
「リョウちゃん! 僕は気づいたんだ!」
「何にですか。その前にとりあえず着替えましょうか」
「リョウちゃんが女の子が好きだと言うことに!」
「今更ですね。とりあえず着替えましょうか」
「だから僕は思ったんだ!」
「とりあえず着替えましょうか」
「僕が女の子になればリョウちゃんに好きになってもらえるって!」
「世界中の女の子に謝れ!?」
ねぇよ。二つの意味でねぇよ。
「え……綾月先輩が好きってことは生徒会長ってやっぱり女」
「あれ? それだと生徒会長レズってことにならない?」
外野から私を窮地に陥れるざわめき。
真実を言っても嘘を言っても生徒会長変人説というどんづまり。女装暴露といい、ろくなことしないなこの野郎。
「だからリョウちゃん。改めて僕と」
「寄るな変態」
間合いをつめる綾月先輩から距離をとり、いつでも迎撃できるよう構える。
変態と言った瞬間「お前が言うな」と一部生徒が唱和したけど無視。
「何故!?」
「化粧がケバいどころか化粧になってない、服が体格にあってない、声も話も男のまま。女装なめんな!?」
「古雅くん。気持ちはわかるけど、そこじゃないと思うの」
女装のなんたるかを語りかけた私にアオイ先輩からのつっこみ。
……うん。確かに。
「性別関係無く綾月先輩という存在が無理です」
「存在全否定!?」
がくりと膝をつく綾月先輩。太ももがチラリズムして後ろにいた生徒たちが一斉に目をそらす。
「容赦無いですわね古雅さん」
「いえ、あの綾月さ……先輩は私も無いと思うわ」
顔がひきつっている藤絵さんと、綾月先輩の女装にドン引きな北条さん。敬称が様から先輩に格下げした模様。
「……百年の恋も冷めるでしょう?」
「……ええ。ごめん古雅さん。もう貴方を敵視するのはやめるわ」
そして何故か決着した北条さんとの確執。
……微妙に喜べないのは何故だろう。
「……分かったリョウちゃん。僕はもっと女装を勉強するよ!」
「やめれ!?」
食堂を恐怖のズンドコに落としといてまだやる気か!?
というか美形は大抵女顔だから女装しやすいはずなのに、どうやってそこまで失敗した!?
「じゃあ行ってくる!」
「何処に!?」
スチャッと手をあげると、颯爽と食堂を後にする綾月先輩。
制服が小さいせいで嬉しくないパンチラ大サービス。食堂に居た男子たち(私含む)が口を押さえて崩れ落ちた。
「だ、大丈夫古雅くん?」
「あ、アオイ先輩。綾月先輩が勢い余って性転換してきたらどうすれば!?」
「それは無い……とは言い切れないわねマサトだし」
幼なじみのアオイ先輩をしても綾月先輩は読みきれないらしい。
次に会うときにはどうなっているのか。ある意味恐怖の時間が始まった。




