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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第十一章 最強パーティーの誕生と果てなきグルメ旅への出立

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国王からの全力逃亡と、北の幻を求めて

大貴族の捕縛と邪竜の解体宴会から一夜明けた、翌日の早朝。

俺たち『スローライフ希望』の面々は、高級宿屋の部屋で旅立ちの準備を進めていた。


「ふわぁ……昨日はお肉食べ過ぎて、まだお腹がぽっこりしてるにゃ。」

ララが自分の虎斑の道着の上からお腹をさすっている。


「本当に、信じられないくらい美味しいお肉でしたウサ。」

ミミも幸せそうに微笑みながら、世界樹の杖を手入れしている。


「で、ユート。」

クロエが背中のバックパックを締め直しながら俺を見た。


「次はどこに向かうんだ。」

俺が新しいマップを広げようとした、まさにその時だった。


ドンドンドンッ。

「開けよ。」

「我らは王都近衛騎士団である。」

部屋のドアがけたたましく叩かれた。


「(……なんだ、朝っぱらから。)」

俺が警戒しながらドアを開けると、そこにはやけに豪華な鎧を着た騎士たちがずらりと並んでいた。


「おお、貴殿がユート殿だな。」

近衛騎士の隊長らしき男が、恭しく頭を下げる。


「国王陛下からの勅命である。」

「邪竜討伐の圧倒的な武功、並びに類まれなる料理の腕前を高く評価され、貴殿を宮廷料理長および名誉子爵として迎え入れたいとのことだ。」


「さあ、馬車へお乗り願おう。」

「「「えええええええええええっ。」」」

三人の弟子たちが素っ頓狂な声を上げた。


「師匠が貴族になるのか。」

「お兄ちゃん、お城に住むにゃ。」

「す、すごいですウサ。」

三人は目を輝かせているが、俺の内心は全く違った。


(冗談じゃない。)

(宮廷料理長だの名誉子爵だの、そんなものになったら毎日面倒な貴族の相手をさせられるだけだ。)

(俺の静かで平穏なスローライフが、権力闘争に巻き込まれて完全に終わってしまう。)

俺は一瞬で決断を下した。


「大変光栄なお話ですが、俺たちはただのしがない旅人です。」

俺は爽やかな笑顔を浮かべた。


「どうか陛下には、そのお気持ちだけありがたく頂戴するとお伝えください。」

「なっ。」

近衛騎士が絶句する。


「国王陛下からの恩賞を断るというのか。」

「それは許されん。」

「無理にでも城へ同行してもらうぞ。」

騎士たちが剣の柄に手をかけた。


(……やっぱりそうなるよな。)

「お前たち、荷物は持ったな。」

俺は背後の三人に小声で確認した。


「お、おう。」

「いつでもいけるにゃ。」

「はいですウサ。」

「よし、飛ぶぞ。」

「――【広域影移動】。」

俺が詠唱破棄で魔法を発動した瞬間、俺たち四人の足元に真っ黒な影の沼が広がり、体が一瞬で沈み込んだ。


「な、消えただと。」

騎士たちの間抜けな声を置き去りにして、俺たちは宿屋の部屋から完全に離脱した。


「にゃああああああああっ。」

「ひゃああああああああウサ。」

王都の屋根の上を、影から影へと跳躍しながら俺たちは全力で逃亡した。


「ちょっとユート。」

クロエが風に煽られながら叫ぶ。


「お城に行かなくてよかったのかよ。」

「当たり前だ。」

「権力者に関わってロクなことはない。」

「俺たちは自由気ままに美味いものを食う旅をするんだからな。」

俺の迷いのない言葉に、クロエは一瞬ぽかんとした後、吹き出すように笑った。


「あははははっ。」

「ユートらしいぜ、全く。」

「ララも、お城の堅苦しいご飯よりお兄ちゃんのご飯がいいにゃ。」

「わたくしも、ユートさんと一緒の旅が良いですウサ。」

朝日に照らされた王都の城壁を、俺たちは神速の跳躍で軽々と飛び越えた。

そして、王都から遠く離れた見晴らしの良い丘の上で、ようやく足を止めた。


「はぁ、はぁ……ここまで来れば追ってこないだろう。」

俺は息を整えながら、はるか遠くに小さく見える王都の街並みを振り返った。

勇者の健太や聖女のセレスティーナ、そしてギルドのコネットさんは今頃どうしているだろうか。


まあ、彼らには彼らの物語がある。

俺には俺の、この騒がしい弟子たちとの物語があるのだ。


「で、師匠。」

クロエが期待に満ちた目で俺を見上げる。


「これからどっちに向かうんだ。」

俺は北の空を指差した。


「はるか北の大地に、どんな怪我も治す伝説の温泉郷があるらしい。」

「そしてそこには、究極の調味料を造る『幻の醤油職人』がいるという噂だ。」

「「「究極の調味料。」」」

三人の瞳が、あのカレーを食べた時のようにギラリと輝いた。


「美味しい予感がするにゃ。」

「次はどんなお肉と合うのか楽しみですウサ。」

「よし、行くぞユート。」

クロエが元気よく駆け出す。


「遅れるなよ、お前ら。」

「待ってにゃー。」

「置いていかないでくださいウサ。」

俺は賑やかに駆けていく三人の背中を見つめながら、柔らかく微笑んだ。


俺の望んだ静かなスローライフとは少し違うかもしれない。

だが、未知なる食材と愛すべき仲間たちと共に歩むこの旅は、決して悪くない。

俺たちの果てなきグルメ旅は、まだ始まったばかりだ。


【第一部 完】

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