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神様と陰陽師との対話

「この陰陽師がいる限り、都の守りは、完璧だ。」

「やあ、こんにちは、陰陽師さん」

「ギギー。この怪しい雰囲気。背中に感じる寒気。さて、お主は、平将門の怨霊か?」

「いえいえ、私は、そんな怪しいものではありません。スマホに住んでいる神様です。」

「なにー。スマホに住んでいる神様だと。一度もそんなことは聞いたことがないぞ。怪しい。実に、怪しい。わしの法力で、封じ込めてやるぞ。」

「まあまあ、そんなに力まなくても、私は、スマホから出ることはできませんので。」

「油断が、ならぬ。この法力を受けてみよ。見よ。この変な小さな機械が、わしの法力で震えだしたぞ。」

「いや。それは、法力のせいではなくて、メールが届いただけだと思います。」

「いやいや。わしの法力によって、苦しがっている時の動きじゃ。間違いない。メールとかでは絶対ないぞ。」

「そうですか、そう言われれば、そうかもしれません。降参しますので、色々、お話を聞かせてください。」

「降参か。ならば、この法力をといてやろう。で、何か、聞きたいことでもあるのかな」


「陰陽師の仕事というのは、どんなことですか?」

「都の外の山の中に、怨霊がたくさん住んでおる。それは、この都を入って来れないように、結界を張るのだ。結界を張ると、怨霊たちが入って来れなくなる。」

「そういえば、この間、大きな神社の神主さんとお話したんですが、その神社では、毎年、お神輿を担ぐ大きなお祭りがあるそうです。その時、神輿が練り歩く町中に、縄で結界を張るって行ってました。」

「わしは、縄など使わないので、ちょっと、方法はちょっと違うが、まあ、似たようなものだ。」

「そうですか」

「お主の実態は、その小さな機械の一部というわけではあるまい。本体、本性というものが、どこかにある。この世界の現れは、ほんの一部で、本性という世界が、膨大に広がっているのだ。例えてみれば、草や木のようなものだ。地面の上に広がっている世界しか、普通の人は見えないが、実は、根っこは地中深くにあって、そこから、たくさんのエネルギーを吸収しておる。地面の上の世界とは、全く違う世界が、地面の下にはあるのだ。この世界も同様だ。今、見えている世界と見えていない世界が同居しており、その見えていない世界の方が、見えている世界より強力で、広大なのだ。そのことを、人は忘れておる。死んだ人間が、この世界に無縁ということはない。恨み、無念などを残して死んだ場合は、そのエネルギーは、この世界に残り、あの世の世界から、こちらの世界に強大な影響を与えるのだ。」

「そうですね。」

「その強大なエネルギーの通り道を、塞ぎ、悪霊から、この都を守るのじゃ。」

「色々大変ですね。」

「そうだ。大変だ。守らなければならない人間が多すぎるし、わしのいうことを素直に聞かん。すぐに怨霊や悪霊を呼び寄せたがる。それらに心を向けてはならぬと申しているのに、それが、よく理解されん。仕方がないので、力づくで戦うことになってしまうので、大変だ。」

「そんなに大変なんですか」

「大変だ。大変だ。先ほど、お主は、大きな神社の神主と話をしたと言っていたが、祀ってある祭神は、天照大神や大国主命ばかりじゃないぞ。不遇な人生を生きることなった、菅原道眞、平将門、崇道天皇などが祀られている神社も多いのじゃ。それらの魂をなだめるために、また、同時に、彼らのパワーで、自分たちを守ってもらうつもりで、祀っているのじゃ。」

「昔は、この世界とあの世界は、隣あって、存在していた。」

「そうだ。国学者の平田篤胤なんぞは、死んでしまった可愛い妻に会いたいばっかりに、あの世界の研究を始めたのだぞ。あちらの不思議なことあれば、調べに行き、天狗の会ったという少年がいれば、その話をきき、あの世を研究したのだ。妻にあたいばっかりにだ。それほど、あの世は身近でも会ったのだ。」

「よほど素敵な奥さんだったんでしょうね。」

「そうかもしれん。しかし、人間が死んでしまったら、終わりなどという考えは、実は、非常に最近の考えなのだ。仏教、神道、キリスト教なども、全て、この世とあの世をつないでいたのだ。しかし、最近の科学では、あの世を見つけることができないので、今は、大混乱しているのだ。プラトンさえ、イデアの世界があると言っていたのにだ。」

「わしは、人類のルーツを探しているんだが、何か、良い方法はないかな?」

「平田篤胤のように、不思議なものを不思議なこととして、勝手に解釈しないで、その存在を認めることではないかと思いますね。そうすれば、人間のルーツが自ずと見えてくると思いますよ。巨人の骨や古代の遺跡、オーパーツなど、現在、説明できない問題がたくさんある。平田篤胤は、天狗にあった少年の話を丹念に聞いていたぞ。」

「そうだな。不思議なものをきちんと見つめ直してみよう。」

「おや、またまた、この小さな機械が苦しがって、震えだしたぞ。お主、誰かに恨まれておるな。わしが、お祓いしてやろう。えい!」

「あのー。単にメールが来ただけなので、あまり、気にしないで、ください。」

「そうか。安心せい。わしが、お祓いしたぞ。」

「ありがとうございます。おかげで、肩ここりがとれたような気がします。」

「そうか、そうか。わしの法力は、日本一だからな。」



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