神様と地質学者との対話
「あの、アトランティスを探しているんですけど、どこにあるんでしょうか?」
「アトランティスか。そりゃ、難しいぞ。」
「やはり、難しいですか?」
「難しい。わしが跡形もなく粉砕してしまったからな」
「でも、たった1万2000年前のことなんですよ」
「思えば、昨日のように思い出すなぁ」
「ほんとうにあったんですか?」
「ほんとうにあった」
「どこにです?」
「太平洋の真ん中じゃ」
「でも、現代の大陸移動説に従えば、アメリカ大陸とアフリカ大陸が一つだったのが、分離して別れたということになっています。そのすきまに、アトランティス大陸があった兆候はありません。」
「そうだな。やはりないか?」
「あきらめましょう。探すのは無理です。」
「そうか、仕方があるまい。」
「でも、プラトンは、アトランティスというのがあったことを思い出したんです。だから、あったのは、間違いないと思うんです。」
「たしかにあったぞ。なぜなら、わしは、そこに生きていたからな」
「神様、アトランティスは、海に沈んだのではなく、氷河期が終わって、海面が上昇したため、水没したというのは考えられませんか」
「それもあるかもしれないな」
「頼りない神様だ。それでも、神様ですか?あなたたちには、知識のデータベース、歴史のデータベースみたいなものは無いんですか」
「あるぞ。過去は消滅したものでなく、その時空にそのまま存在するのじゃ。だから、時空を超えてそこへ行けばすべてがわかるぞ。」
「では、いってみましょうよ」
「そうか、行って探してみるか」
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「アトランティスは、ちゃんとここにあるぞ」
「これが、アトランティスですか?美しい国ですね。ほんとうに素晴らしい、豊かな国ですね」
「そうじゃろ、そうじゃろ」
「この美しいアトランティスが消えてしまったんですね。」
「そうだ、消えてしまったんだ」
「どうやって消えてしまったんですか?」
「いままで、海底に沈んだばかり思っていたのだが、ちがうぞ。時空の裂け目に飲み込まれるという宇宙規模の事件であったのだ。だから、痕跡が見つからないのだ。」
「そうだ、たんですね。でも、アトランティスが時空の裂け目に飲み込まれたということを、誰に話しても信用されないし、証明もできませんよね。」
「どうしたらいいんだろう?」
「え!、神様が困っているんですか?」
「そうだ。わしは困っている」
「あれまあ」




