Ep.15 貿易都市アルノス
神代暦3525年、冬月16日。
フィル大陸南西部、貿易都市アルノス。
ここは貿易都市アルノス。
海外との貿易で栄えた、大陸南西部でも有数の大都市だ。
その入り口には、まるで要塞のような巨大な壁と門がある。
ソラ
「大きい門だね…」
リュウガ
「なんだか物々しいな…城塞都市でもないのに。」
門の方へ少し進むと、十数人ほどの兵士が武器を持って立っていた。
彼らの内の一人がソラ達の姿を見ると、こう話し掛ける。
兵士
「通行許可証はあるか?」
兵士はそう言って手を差し出す。
ソラ
「きょ…許可証?」
リュウガ
「おいおい、そんなの持ってねぇぞ。」
二人が困惑していると、エリアスが一歩前へと出てくる。
エリアス
「これで大丈夫ですか?」
彼の手には、どこからか取り出したのか一枚の紙があった。
兵士はそれを受け取り、少しの間眺める。
彼は顔を上げると、エリアス達に向かってこう話した。
兵士
「確認出来ました。
お連れの方々もどうぞ、お入り下さい。」
そうしてエリアス達は町の中へと通された。
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宿屋を取り、少し荷物の整理を行う。
ソラ達はここで少し長めの滞在を行うことにした。
エリアス
「まぁ一週間くらいはここにいる予定だよ。
ここは貿易の要所ってことで、魔物の襲撃に遭わないようにギルドの駐屯部隊が置かれてる。
あの入り口に立ってた強そうな人らだよ。」
リュウガ
「なるほどな。道理でこんな城塞都市みたくなってるって訳か。」
ソラ
「というかエリアスさん、いつの間に通行許可証持ってたんだね。」
エリアス
「あれね。
実はこの前にもここに寄る機会があってね。その時のやつだよ。
審査も厳しくなってたし通れるか心配だったけど…まぁ通れたし杞憂だったね。」
そう言いながらエリアスは辺りを見回す。
エリアス
「まぁ、ここにいる間は基本自由行動でいいかな。
僕は適当にお店でも回っておくよ。
じゃあねー。」
エリアスはソラたちに手を振ると、ふらふらとどこかへ消えてしまった。
ソラ
「…ねぇ、前の町でもこんな感じのことなかった?」
リュウガ
「レデーナに居た時か…」
エリーゼもどこか呆れたような目でエリアスの背中を見ていた。
─────
ソラは行く当ても無く町を歩いていた。
町の中央の広場に来た彼女は辺りを見つめてみる。
目に付くのは、ローブを身に付けていたり杖を持ち歩いていたりする、神官のような人々の姿だった。
明らかに数が多いのが見て取れる。
ソラ
(女神信仰があつい場所なのかな。
明らかに神官っぽい人が多い。)
そんなことを考えながら、ふと彼女は人の流れの先に目を遣る。
その先には、辺りの風景より一際目立つ大きな建物があった。
教会だ。
ソラ
「…やることも無いし、行ってみようかな。」
そう呟くと、ソラはその教会の方へと歩いていくのだった。
─────
中は豪華な内装で飾られており、煌びやかな雰囲気を感じさせる。
白の壁や柱には綺麗なランタンが飾られていたり、色とりどりのステンドグラスからは暖かい光が差し込んできている。
両脇に並べられた長椅子に人々が座り、祈りを捧げている様子だ。
教会というより、この規模だと聖堂と呼ぶ方が正しいだろうか。
そんなことを考えながら、ソラは奥の方に目を移す。
聖堂の奥には大きな女神像が佇んでいた。
女神ルミナリア。
フィル大陸のほぼ全域で信仰されている女神にして、ルミナリア大聖教の神だ。
大聖教の伝説は数多くに及ぶ。
天地開闢の神話や勇者の伝承などが主に挙げられる。
ソラ
(最近は魔物の動きの活発化だとかで、みんな不安な気持ちが大きくなってきてるのかな。
それに…)
ソラはふと、この前に出会ったあの魔族を思い出す。
ソラ
(私たちは魔族に追われてる可能性だってある。
魔王が本当に存在してるかもしれない。
明日、生きていられるのかも分からない。)
考えてみればそうだ。
あんな魔族に目を付けられて、どうして普通に旅が出来るだろう。
ソラは少し泣きそうになりながら、固く手を組んだ。
ソラ
(女神様…
もし本当に存在しているのなら、私たちを助けて…)
彼女がそうしている時だった。
後ろから声が聞こえる。
「こんにちは。
お隣、よろしいでしょうか?」
ソラははっとしてその方を見る。
そこには、一人の女性が立っていた。
おっとりとした顔。
金色の髪。
そして、神官のような服装。
「…何かあるようなご様子ですね。
私でよければ、お話を聞かせて頂けないでしょうか?」
ソラ
「え…?」
─────
「どうやら熱心に祈りを捧げていらっしゃったご様子でしたが、そういう事だったのですね…」
ソラ
「…はい。
魔族に追われてるなんてこんな話、にわかには信じ難いかもしれませんが…」
「…いえ。
信じますよ。」
彼女は真剣な顔でそう口にした。
「何故か分かるんです。
あなたの言葉には全くの嘘が無いと。
これこそ、女神様のお告げなのかもしれませんね。」
ソラ
「…」
「それに、困ってる人を見逃す訳にはいきません!
そんな人々を助けるのが、私たち神官の役目ですから!」
彼女は胸を張ってそう言った。
「…あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。
私、『千崎 光里』と申します。
あなたのお名前は?」
ソラ
「『明星 ソラ』です。
でも…私たちを助けてくれるって言っても、どうするんですか…?」
ヒカリ
「んー…
他にお仲間の方などいらっしゃいますか?」
ソラ
「はい。二人ほどです。
色々と訳あって、私たちは今旅をしてるんです。」
ヒカリ
「なるほど…
でしたら、
私もその旅に連れて行って下さいませんか?」
ソラ
「…え?」
─────
エリアス
「なるほど。
何と言うかかなりの急展開だね。」
リュウガ
「呑気かよ…」
リュウガは呆れたような顔で横のエリアスを見つめている。
ヒカリ
「ですが、皆さんのお役に立てればと思って。
私も実は、訳あって旅をしていた身なのです。」
リュウガ
「まぁ確かにな。
旅は人数が多い方がいい。
それにヒカリさん、見たところあんたは結構色々な知識を持ってるみたいだしな。」
エリアス
「助かるね。僕らも魔族とかに対してはあまりよく分からないからさ。
何よりパーティーに神官は居てくれた方がいい。
連れて行かない理由が無いよ。」
ヒカリ
「ありがとうございます!
では皆さん、これからよろしくお願いしますね!」
ヒカリは笑顔で頭を下げる。
ソラ
「感謝したいのはこっちの方ですよー。」
リュウガ
「本当にその通りだな。」
エリアス
「こちらこそありがとう。
これからよろしくね。ヒカリ。」
ヒカリ
「はい!」
ヒカリは笑顔でそう言った。
そんな彼女にエリアスがこう問う。
エリアス
「ところで、ヒカリはなんで旅をしてたの?
それも神官たった一人で。」
ヒカリ
「それはですね…
私、実はある人を探しているのです。」
ソラ
「ある人?」
ヒカリ
「はい。
『勇者』と呼ばれる人です。」
ソラ
「勇者?あの伝説の?」
エリアス
「じゃあ、ヒカリのその目的も頭に入れながら行こうか。
まぁまずは魔族を撒くところからだけどね。」
リュウガ
「そうだな。そうしなきゃ旅も続けらんねぇ。」
ヒカリ
「はい!」
こうして、ソラたちの旅に新たな仲間が加わった。




