デイケアーサービス
何度も何度も警察に迎えに行くうちに
区役所の福祉課の人が家に訪ねて来るように
なった。
その人達は繰り返しデイケアーサービスを
使うようにと勧めてきた。
でも僕は母の介護から逃げ出してしまう様で
はいと返事出来なかった。
とりあえず答えの出ないまま久しぶりに
ご先祖様に挨拶しようとお墓参りに行った。
住職は母が先代からの知り合いで僕達の家
のことをとても詳しく知っていた。
母の認知症と家の現状を話すと
住職はとても穏やかな口調で
「あなたがお母さんを看るという使命感は
お母さんにとってもあなたにとっても
必ずしも美徳になるとは限りませんよ」
と言われた。
僕の当時の心には深く深く突き刺さった。
その瞬間なにか張り積めていたものが溶けて
いくのを感じた。
僕は家に帰ると区役所の福祉課に電話をし
早速デイケアーサービスの依頼をした。
そして当日
朝に起こしにいくと前の日に
入れ歯を無くしたらしく
すっかり老婆の顔になっていて愕然とした。
介護施設の人が迎えに来て一緒に
エレベーターを降り車にゆっくりと
乗るのを見ていた。
住職の言葉が鮮明に思い出された。
少し解放された安堵感と
母に対して投げ出したような
感じの申し訳なさと
すっかりボケ老人になってしまった
母の姿を改めて感じて
走り去る車を見送りながら涙がこぼれた。




