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場末と斬咲

 かくして始まった、俺の「株式会社ゾンビバスターズ」での社会人生活。

初日の事務所前で少し高揚した気持ちを抑え、深呼吸して事務所の戸を開く。


「こんばんは、新入りの叶海です」

入りざまに挨拶をすると、秒もしない内に「よっ、新入りくん」と男の声がした。

筋骨隆々…この言葉がこれ程までに適正な人間は他にいないだろう、そんな身体をした髭面のオッサンが椅子に座っていた。

思いの外事務所は狭く、このオッサン基準だと5〜6人入ればギリギリであろう、中学の部活動の部室を彷彿とさせる狭さだ。


 室内には椅子が3つ、灰皿が置かれた小さなテーブルを囲むように用意されており、1つは髭面のオッサン、もう1つの椅子には無口そうな銀髪の15歳くらいの少年が、もう1つが空席となっている。


「そいつがお前さんの席だ、お前さんの為に社長が用意した新チャラだから壊さないように座んな。ま、お前さんは細身だから座っても壊れないだろうがな」

オッサンは気立て良く振る舞うと「ガハハ」と見た目通りの笑いを付け加えて親指で俺の椅子を指した。


「ありがとうございます、今日の仕事は3人で行うんですか?」

俺は疑問を投げ掛ける。

当然だ、ゾンビ退治の職場は動きはトロいが油断が過ぎると殺られる、そんな相手との命の取り合い…だと勝手にイメージしている。ゾンビと命の取り合い…と云うとやや可笑しな表現だが、戦地に3人で赴くのは流石に不安が残る。


「それがなぁ…他の連中は皆殺られたよ、まあお前さんが入ってきて心強いぜ。お前さんの目…悪くねえからな」

訂正しよう、油断が過ぎると殺られるは間違いだ。普通に殺られる、そんな業界に足を踏み入れてしまった事に戦慄した。


「まあそう緊張すんな、あん時は相手が悪かっただけだ、雑魚には俺がいれば誰一人殺られねえよ」

オッサンはまた「ガハハ」と笑うと席を立つ。

俺はただただ唖然としていた、このオッサンは死地を潜り抜けて来た歴戦の勇士だ。

よくよく見てみるとオッサンの腕には無数の注射痕があったが、そこには敢えて触れなかった。


「おっと自己紹介が遅れたな、俺は場末(バスエ) (ゴウ)、んでそこの銀髪のチビが斬咲(キリサキ) 壊斗(カイト)だ」

場末が自己紹介ついでに斬咲を紹介するが、斬咲は相変わらず無口を決め込んでいる。


「さあ、余談はこれまでにして出掛けるぜ、ゾンビ狩りにな」


この時、俺はまだ死地に赴く覚悟が足りなかった。という事を後ほど後悔する羽目になる。

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