リサイクルショップに行こう!後編
「お久しぶりですデザイナー先生。相変わらず元気そうで何より何より」
俺はわざとらしく望月茜に被せて応答する。
「久しぶりって…3日前にリモート会議しながらプロジェクトを共にしてたんだけどなぁ」
望月は苦笑いを浮かべる。
「すまない。現在俺は進行系で依頼を遂行しているので過去は忘却しがちなんだ」
俺はドヤ顔で言い放つ。
「ふーん。少し前まで仕事にありつけず泣きそうになりながら報告・連絡・相談してきたのはどこの誰だっけ」
望月は的確に事実を打ち抜く。
「うっ。その節はご迷惑をお掛け致しまして申し訳ございませんでした。何卒今後ともお力添えを頂きたくお願い致します」
俺は即座に謝罪する。
「素直でよろしい。私の方も最近はデザインの制作だけでなくスマホ向けのアプリに実装して欲しいって依頼が多くてさ。そん時は手を借りるんでよろしく」俺はわざとらしく望月の機嫌を損なわない様にペコペコする。
「望月ってさ。最近あの二人とは連絡とってる?」俺は前から気になってたことを聞いてみた。「藤崎君と由香ちゃんのこと」
「うん。そう」
「二人とはちょこちょこお仕事を共にしているよ
」望月は無邪気な笑顔でそう言った。
「そうなのか。やっぱグラフィックデザイナーは
重宝されるんだなぁ」
「まぁね」
俺は大人気なくもちょっとだけ望月のことがうらやましく思ってしまった。
俺が気になっていた二人は共に学生時代ここ
『アンサンブル』でバイトしていた同期だった。
つまり俺たち4人はそれぞれPC関係で
別々の道を進んでいるのだった。
望月が言った藤崎君と由香ちゃんについて説明しよう。
藤崎一成 はシンガーソングライターでありDTMつまりPC及び周辺機器で音楽やサウンドを制作し楽曲や効果音を制作するクリエイターをやっている。最近は動画配信サイト等で自身の楽曲を歌って一部のファンに人気のアーティストだ。
川瀬由香 は動画クリエイターであり普段は専門学校の外部非常勤講師兼配信者からの編集業務を引き受けている。
ちなみに偶然にもそれぞれが俺の拠点(自宅)付近に生息している。
4人が集まると学生時代のバイトの時の様に
面白おかしくも真面目に強力なコンテンツが作れるのだろう。
見知った仲間の方が意思疎通のとれた作品を作りやすいのだから。
学生を卒業するあの日俺たちはそれぞれの道に進んでいつか全員で再会して大きい仕事をすることを誓ったのだ。
「お客様宜しければコーディネート致しましょうか?これなんかお似合いだと思うんですが」
望月茜の営業トークが始まった。
「お客様ご一緒にこちらのシルバーアクセサリーはいかがですか?」
「結構です」俺は断固拒否する。
「これ着てみ!おーいいねー。
君!いいねー!!」
「お前いつもそうやって接客してんのか…」
「お客さん。最近いい物入荷しましたぜ」
「RPGの武器屋か!」
望月との他愛のないノリツッコミを繰り広げていたらいつの間にか時間が過ぎ去っていたらしく気づくと館内放送が流れていた。
《買取番号23番でお待ちのお客様!査定が終了致しましたので買取カウンターまでお越し下さいませ。本日もご来店頂き有難うございます》
俺は買取カウンターの前に向かう。
買取査定台には俺がキャリーワゴンに詰め込んできた大量のキャラクターグッズが積み上げられていた。
「お待たせー。合計査定金額が2万5,690円です。細かい内訳を聞いてく?」
「いえ。大丈夫です。このお店には色々とお世話になったんで。それに現在進行形でスタッフの望月さんにも大変お世話になっておりますので」
「そうかい。ならよかった。うちとしても貴重な商品を仕入れさせてもらって助かるよ。運営費の都合で買取金額が毎回そんなに出せなくて心苦しい限りなんだけど」
「そんなに気にしなくていいですよ店長。逆に俺も他所で買えない欲しい物を買わせてもらってるんで」
「では買取金額に同意頂ければこちらに
2万5,690円と記載してもらって横に
サインをフルネームでお願いします」
俺は店長が差し出した買取用紙に記載する。
ちなみに俺が買取してもらったキャラグッズは雑貨部門の商品になるので望月茜が責任をもって値付けと売り場にレイアウトすることになる。きっとお得意のイラストの入ったオタク心を理解し尽くした商品ポップを添えて。
「ではまた来ますね」
俺は店長から買取金額を受け取りキャリーワゴンをコンパクトに折りたたみスーツケースの様にゴロゴロと押してお店を後にした。
「ありがとうございました」
店員さん達の声がこだまする。




