表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/43

赤い矢

「昨日ひたすら熟練度を上げた結果素材が枯渇しつつあるので今日は素材集めと検証にいきたいですね」


「見て見てーこの『銀狼の着ぐるみ』めっちゃ可愛くない? ムギちゃんが私にプレゼントしてくれたの!」


「トキちゃんが昨日お仕事頑張ってたから私も頑張っちゃった」


『テクビ配信見てたよ』

『メインのフィグじゃないのに詳しかったね』

『リアルトキコ美少女過ぎた』


 テクビはテクノビーツトリロジー、フィグはフィールグルーヴの略だ。

 昨日配信してたのがテクビのプロリーグでフィグはトキちゃんのメインプレイ機種である。


「視聴ありがとー。テクビはトップランカーじゃないけどそれなりにやってるしクリアラー気味だけど一応最高段位は持ってるんだよ」


「クリアするだけでもすごいのに出場してる選手はスコアも高くてやばかったですね」


「あそこは会場に怪物しかいない」


『わかる』

『あいつら人間やめてるから』

『トキコもあちら側だろ』


「昨日の私の衣装を全員に着てもらって勝負したらいい勝負になるかもね」


「いくら空調がきいてるからといって昨日のゴテゴテしたフリルワンピースはトキちゃんの魅力を殺してたので今度から衣装持ち込みにさせてもらいましょう」


 フリルはもっと小ぶりなほうが似合うし、色もパステルピンクにするくらいなら白のほうがいい。

 ロココ調? 美少女だから似合わなくはないけどもっとはっきりした柄のほうがいいよ。

 パステルカラー使うならキャンディストライプとかあるじゃない!


「ムギちゃん、声に出てるよ」


「おっとついうっかり」


『トキコガチ勢がいる……』

『全くわからん』


「うちは家族全員洋服は着られればいいタイプだから買い物に行くとムギちゃんが可愛い服選んでくれて助かってるけど。私の可愛さはムギちゃんによって支えられてるよ」



 さていつもの赤ずきんの森。オオカミを狩りながらトキちゃんのテンションが上がりまくっている。


「みだれひっかき超楽しいんだけど! 攻撃力めちゃくちゃ高いし範囲攻撃だし炎のエフェクト出るし」


「流石にもうここのオオカミじゃ簡単すぎるみたいですね」


「数は多いけど紙装甲にしか感じないよ」


 オオカミは最大4頭出てくるけれど単体攻撃から範囲攻撃になったお陰で反撃されることなく倒せるようになったようだ。

 私は範囲外のオオカミだけ狙えばいいからかなり楽。

 全身装備だから攻撃も防御も素早さも上がっているし通常赤ずきん相手なら苦戦しなさそう。


 オオカミを倒しながら森の奥へと進むと前回接敵地点に赤ずきんのシルエットが見えた。

 周囲に前回なかった黒いオーラを漂わせパワーアップしていることは確実なのでトキちゃんの装備もケモノ装備判定されたんだね。


「あちらさんパワーアップしてるけど行く?」


「折角だから戦ってみたい。道中のオオカミじゃ物足りないもん」


「じゃあ行こう」


 赤ずきんとの距離を縮めるとこちらに気付いた赤ずきんが口を開く。


[もうすぐ死ねた筈なのに……私を殺してくれるオオカミたちをどこへやったの?]


 そして表示される『希死念慮の赤ずきん』の文字。

 手に持つ武器は前回と同じサバイバルナイフだ。


 攻撃モーションへ移るより先にトキちゃんが飛び出し一撃を入れる。

 装備のおかげで一撃でも前回より大きなダメージが入っているようだ。

 そして息つく間もなく連撃を繰り出しハイペースで削っていく。


「わあすごい。前回より楽かも」


「速さも赤ずきんを上回ってるね。トキちゃんひとりで倒せちゃいそう」


 赤ずきんもサバイバルナイフを振り回し応戦しているけれど難なく回避するトキちゃんにその刃は届かない。

 一方的な攻撃でゲージ技へ移行する前に倒しきるつもりなのだろう。ステップを踏み相手を翻弄しながら攻撃の手を緩めることがない。


 そのままHPを削り切り、赤ずきんに消滅エフェクトがかかる。


「やった! 完全勝利!」


「すごい。速攻だったね」


 これで新しい素材がドロップするはずなのでまだ新しい装備が作れるかな?


[……ゆるさない]


「え?」


 倒したはずの赤ずきんの声が響く。

 赤ずきんは消滅したのに……おかしい、HPゲージは真っ赤なまま表示されている。


「え、なに第2形態?」


「そんなの情報なかったよ。倒したらその次があるなんてどこにも……」


 会話の途中でトキちゃんのアバターが消えていく。

 いつの間に刺さったのかわからない赤い矢が心臓辺りを貫いている。


「トキちゃん……?」


「どうして……いつの間に……?」


 そして次の瞬間私の体も赤い矢に貫かれていた。

 痛いくらいに熱い。

 痛覚設定は控えめだから温度で痛覚を表現しているのだろう。


 消えてしまう前にどうにか射手を確認しようと周囲を見回すと、赤いずきんを被り弓を構えた相手を目の端に捉えることができた。


「幽山深谷の……赤き狩人……」


 アレに勝てだなんて女児ゲーとしてどうなのよ?




「しーにまーしたー」


「この防御突き破って一撃死ってどういう攻撃力してるのあれ」


 工房内にリスポーンしたけれど、ふたりしてまだ混乱している。


「防御無視とかありそう。いや本当に全く情報がなかったんだけどなにあれ」


「なんらかの条件を偶然踏んじゃったせいだとは思うけどなんだろう。ノーダメで倒しきったせいか、ケモノシリーズじゃなくて銀狼素材の装備のせいか、他にあるとしたら赤ずきんの森にしか行ってないせいか」


「検証してもいいけど次も為す術なく死ぬと思う」


「だよね」


 情報にない敵とはいえ全く反応できなかったからなあ。


「配信だと相手映ってるのかな?」


「私がなんとか視界に入れたから残ってるかも」


『映ってたよ』

『遠かったけど一応見えた』


 コメントを見ると配信にも相手は映っていたみたい。

 じゃあ切り取って攻略サイトの掲示板に投げておくか。


「まだ制限時間までは余裕があるけど今日はここまでにしておきましょうか。他にアレが出てる人がいないか情報収集したいですし」


「そうだねーなんか精神的疲れちゃったから甘いもの食べたい」


 次にやるとしたら普通のケモノシリーズ装備に変更しておこう。

 一番有り得そうな条件は装備関係だと思うし。

 他にも出てる人がいるといいけれど私がクラフトに特殊アイテム使ってるから望みは薄いだろうな。

とても丁寧な感想をいただきました!

ありがとうございます!


今週はワクチン2回目接種にのぞむ同僚が多くて忙しいけど頑張る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ