アプデ後配信
「なんか配信は久し振りな気がしますね」
「アプデ挟んでたし」
『トキコがチャイナ服だ』
『かわいい』
「そう、可愛いでしょう? トキちゃんのマスコットのザクロと同じガーネットカラーなんですよ」
「ムギちゃん、まだマスコットの紹介してない」
「そういえばそうでした」
自分が知ってることだから相手も知ってると思い込んでしまった。
うっかりやりがちだから気を付けないと。
今日はログインしたタイミングでザクロとネヴァンが素材をくれた。
ログインボーナスみたいなものだろうか?
日付が変わると夜集めた素材をマスコットがくれるらしい。
ただ量に差があってアクセサリーの有無のせいかと思ったけれどマスコットとの親密度の差だと当人たちは言っていた。
どうも昨日沢山死んで素材をもらっていた行為がネヴァンとの親密度を上げていたらしい。
あれで? と思わなくもないが親密度が上がるに越したことはない。
「こちら私のサポートマスコットのネヴァンです。ワタリガラスで素材を集めてくれます」
「この子はドラゴンのザクロだよ。攻撃のサポートをしてくれるみたい」
『ドラゴン!?』
『マスコットにドラゴンなんているのか』
『小さくて丸っぽいから愛嬌があるね』
予想通り珍しくないワタリガラスより珍しいドラゴンへ注目がいく。
ネヴァンも黒い羽がつやつやできれいなんだけどこれは仕方ない。
「やっぱりドラゴン珍しいんだ」
「私の女児ゲー繋がりで確認してもドラゴンはトキちゃんだけしか確認してないし」
「ちょっと優越感」
正直だな。
ユニークは存在しないと思うけれどドラゴンは相当レアな気がするし気持ちはわかる。
「さて今日は新ステージで配信するのですが……人魚姫じゃないです」
「昨日いくつか報告があったらしい魔女から直接渡される別の童話だね」
『あったあった』
『あれマジ情報だったん?』
「マジだよ。どういう法則で童話が決まるのかわかないけれどうちはまた難しいステージでねえ……昨日は為す術なく死んだ」
「もし同じ童話もらってる人がいたら情報ほしいですね。太陽と月とターリアって童話なんですけど」
『知らねえ……』
『あー授業で習ったことあるかも』
『文系だけど知らない』
「やはりマイナーみたいですね。私も友人に大まかな内容は聞いたのですが女児ゲーの皮はちゃんとかぶってほしいところです、今更かもしれませんが。小さい頃純粋な気持ちで遊んでいた女児ゲーの曲が実はワンナイトラブな内容だったとかよくありますからねこの界隈」
『ムギさんが珍しく感情を露わに』
「幻想乙女工房は小中学生向けだし小学生も女の子は中学年くらいならそういう知識もありますけれどもあくまで女児ゲーですよ女児ゲー。いやもう幻想乙女工房は色々きな臭いから夢と魔法のキラキラ世界なんて望みませんけれども」
「ムギちゃん落ち着いて」
「大丈夫。私は落ち着いてる」
「ほんとかなあ?」
『狐面の下の表情がありありと想像できる』
『見えないのに不思議だね』
「それじゃ昨日と同じ感じで私が先行して、ザクロを盾にしつつ戦ってみるね」
「どうやらサポートマスコットには体力の概念がないみたいなのでエネミーから攻撃を受けても死なないんですよ。ザクロは攻撃に対する反応が素早くトキちゃんの盾になってくれます」
「防御はかなり楽になったけど昨日道中の通常敵倒すのにかなり手間取ったから今日はムギちゃんが作ってくれた新武器のお試しがメインだよ」
そう言いながらトキちゃんが余っている袖の中で拳を握り込むと大きめの爪が露出する。
遊色の光沢を持った黒くて大きな4本爪は暗器のようでかっこいい。
「曹灰長石之爪手、きれいでしょ?」
「トキちゃんかっこいいー」
「作った人がなに言ってるの」
武器そのものもいいけれど、やっぱり人が装備しないと武器って完成しない気がする。
トキちゃんに似合うと確認できた時点でやっとクラフトが終わった感覚というか。
先へ進むと昨日散々私を殺した影がトキちゃんを狙う。
トキちゃんは冷静にザクロが防御した瞬間の隙を縫うように影へ攻撃を仕掛けた。
「ちなみに曹灰長石之爪手の攻撃は物理攻撃と無属性魔法の混合みたいです。無属性は得意もなければ苦手もないので大体の敵に対処できるはず」
『無属性とかあるのか』
「あるみたいですね。使ってる素材がここのステージで手に入れたものなので他のステージに無属性の素材があるのかはわからないですけど」
あ、昨日より早く倒した。
トキちゃんの攻撃力は上手く増強できたようだ。
しかしザクロが攻撃を防いでしまうから防御の検証はできないな。
『ムギさんも新装備なの?』
「いや私は変わってないですね。このステージだとすぐ死にます。むしろ即死したほうが都合がいいです」
あ、視聴者さんたちが困惑している。
「私が死んでもネヴァンがランダムでこのステージで取得できる素材を集めてくれるので昨日は死にまくって素材集めてたんですよ」
『それはまた思い切ったプレイを……』
『ワタリガラス有能じゃん』
「そうなのネヴァンは有能でかっこいいんですよ。もっとほめてあげてください」
1体倒したトキちゃんが引き返してこないということはそれなりに満足できる攻撃力を得られたのだろう。
今度はさっきよりも早く倒そうと動きのキレがあがっている。
このままステージボスまで行けるだろうか?
いやトキちゃんのひとりプレイならいけるかもしれないけれど戦力の足しにならない私がいると厳しいかな。
適当なところで死んで今日も素材集めさせてもらうか。
BPLロスです。
でも来年も開催ありそうで楽しみ。
追加機種のDDRはeスポーツじゃなくてスポーツな気がしますが。




