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ゲルトレイル視点1

 俺はゲルトレイル。【斧術】の【戦士】だ。ダチからはやさぐれ冒険者なんて言われているが、そんなことは断じてない。


 スキル継承やジョブ継承で見事に戦闘系の印象が強くなってしまったが、俺は頭を使う仕事がしたい。だけど戦闘系の俺にそんな仕事は任せられない。だからしぶしぶ冒険者になった。


 15歳で冒険者ギルドに加入した。当時は見合った仕事がなく、苦労したもんだ。王都民が依頼を出すものを中心にこなしていた。例えば、人探しや荷物運搬、建築などの日雇い助手などだ。


 そのうちスキルを使用する仕事にも手を出した。討伐依頼だ。


 スライム、ゴブリンを対象にしていたが、オークにも勝てることがわかってきた。スキルの強さと【戦士】のジョブの相乗効果が俺を酔わせていた。


 オークの討伐にシフトしてからはギルドの受付嬢からアドバイスを貰えるようになってきた。解体の時に"この部分は貴重"とか、"ここを綺麗にできるともっと高く買い取れる"などだ。半信半疑だったが、言われた通りにしてみると確かに受け取り額が変わった。


 パーティーという制度を利用して成功しているものも多い冒険者だが、なかなか自分に合う人がいなかった。俺は自分で言うのもなんだが綺麗好きだから、汗臭さや汚れたままの状態でいるのが嫌なんだ。着替えはいつも何着か常備している。冒険者に向かないとよく言われたもんだ。


 ダンジョンに潜ったり、遠征したり、やむを得ない事情を除いては清潔を保っていたい。だから汚いままでいる冒険者を見るとウンザリするし、依頼終了後に汚いままで酒場に直行して飲む、とかは俺にはムリだ。だからパーティーを組めずにいた。


 そんな時に受けた依頼がポーター。タイミングがとても良く、あの有名な【鷹の爪】が出した瞬間の依頼書を手にしたんだ。受付嬢が掲示板に貼り出す直前に手に入れた貴重なもの。俺が邪魔でなかなか貼り出す機会を見いだせずにいたようだ。真剣に掲示板を眺め回して、効率よくできる複数の依頼の組み合わせを考えていたから受付嬢に気づかなかった。


「ゲルトレイルさん、コレ……受けてみませんか?」


 珍しい申し出だなと思った。普段から受付嬢は俺に仕事を勧めては来なかったからだ。何枚かの依頼書を手にする俺を見て"とても効率がいい"と言っては処理していたから。概ね、俺に斡旋する事を控えていたのかもしれない。


 だからだろうか? この依頼に興味が湧いたのは。


 9階層にいる【鷹の爪】がポーターを3人必要としているらしい。1人は既に決まっていて、あとの2人は依頼に出して、ある程度ギルドが人柄や態度がいい者を選別してから彼の冒険者に紹介するとのこと。俺はギルドに紹介するに足る人物だと認められたようで、誇らしい気持ちになったものだ。


 転移結晶という高価な魔道具を使って10階層へ飛ぶ。俺には手の届かない代物だ。【鷹の爪】のランクにまで登れば俺もきっと転移結晶を惜しげも無く使う冒険者になることだろう。パーティー組めればだが……。なんか考えるだけで凹むな……仲間ほすぃ。


 結局のところポーターはあとの1人が見つからず、アレクセイという2つ下の奴と俺の2人になった。アレクは不思議な奴だ。【鷹の爪】と対等に話しているだけでなく、時には罠解除を手助けしたり助言を求められていたりした。そのくせ戦闘になると彼らの戦い方を食い入る様に見ている。


「……戦い方に興味あるのか?」


 俺はついに自分の好奇心に負けてアレクに聞いた。アレクは目を戦闘中の【鷹の爪】へ向けながらも答えてくれる。


「うん、勉強になるからね。身のこなしとか連携とか? まぁソロだから連携学んでも活用できる気がしないけど。たまに臨時パーティー組めれば役立てられるでしょ? 流石はランクBだかAだか知らないけど、彼らは凄いよね!」


 王都随一の冒険者パーティーに対してなんと言う評価だろう……"BだかAだか"とは。こいつランクC以上の価値をわかってないんだろうな……。駆け出しっぽいし。にしてもどんな関係なんだろう。口端を上げただけでソレに答えてはくれなかった。


 10階層から逆戻りに9階層に着くと、彼らは"隠し部屋"という部屋へ俺たちを招いた。女盗賊エチュレーラが、自分で張った罠、目隠し等を解除していく。【盗賊】スキルの鮮やかな身のこなしを見て驚いた。改めてジョブの多様性がパーティーの価値を上げるという事実を知った。ダンジョンにおいて【盗賊】は本当に真価を発揮するジョブなんだろう。


 時折、自分たちが見つけた"隠し部屋"にある宝を確保して守るために、他の冒険者達に横取りされないように、こうして罠や目隠し等をして宝を守ることも大切な要素だ。戦闘だけでなくこうした技術もなければダンジョンを潜り続けることはできない。転移結晶自体も高価だし、装備や消耗品等を揃えるのにも資金が欠かせない。ダンジョンから得られる物は、探索を続けるための大事な収入源でもあるのだ。


 部屋へと入ると、そこには鉱石があった。鉄、銅、金、銀だ。原石らしきものもあったし、延べ棒の様な加工品もある。確かにポーター1人では持ちきれない量だ。3人は要りそうだけど……。


「貴重な物から入れていってくれ、余ったら捨て置く」


 リーダーからとんでもない発言を耳にした。なんて事だ! 全部貴重じゃないか! それを持って帰らないとかどういう事だ!? 怪訝そうな顔の俺にパラディンのディーバが応えてくれた。


「俺達はな……宝より先に進む方が優先なんだよ。9階層なんかで躓いてる場合じゃないんだ。こんなもん宝のうちにも入らんし」


 なんだと!? 色々な意味で衝撃だった。この金属達を宝じゃないと言い切る豪胆さや志の高さに驚いた。


「『何がダンジョンドリームだ!』だっけ?」


 可笑しそうにポーターアレクが拳を握って手をかざして言う。どうやら彼らの真似をしているようだった。


「おまっ……それ言うなよなぁ」


 ディーバは恥ずかしそうに頭をかいている。


「この人たちね……宝の見過ぎで麻痺してるんだよ。病気だからね、気にしちゃ負けだよ?」

「「誰が病気だ誰が!」」


 理解が追いつかないが、どうやら大量の宝を見て感覚がおかしくなっているんだそうだ。慣れるとそうなってしまうのだろうか。アレクはポーター慣れしているようで、いや、【鷹の爪】慣れしているようで、ポンポンとテンポよく会話を繋いでいる。こんな年下と接したのは初めてだ。


 高ランクの冒険者パーティーを相手に物怖じせずに喋っているし、気を使っている様子もない。不思議な奴だ。それでいて不遜な訳でもないし。


「じゃあ、コレ貰うね? 言質は取ったよ? 捨て置くんだよね? 二言は無いね? 誓ってくれると嬉しいけど?」

「「持ってけ泥棒!!」」

「はい、いただきまーす」


 余っていたはずの金属が目の前から消えた。何した!?


 ホクホク顔のアレクと哀愁漂う【鷹の爪】のメンバーを俺はあっけに取られながら見つめるのだった。



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