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サリアラーラ視点1

サイドストーリーです。本編読まないとさっぱりわかりませんので、「鍵屋無双~いや、強いんですよこのスキル~」をご覧いただけると嬉しいです。

 私はサリアラーラ・コネット。


 森の魔女として妹と一緒に生きてきた。両親は既に他界して3年になる。私たち姉妹は本当に仲が良く、楽しく生きてきた。苦楽を共に3年を過ごす。スキル【魔道】を得てからは修行に明け暮れていた。どういう訳か妹も【魔道】を得て2人で大いに喜んだ。神殿から逃げるように冒険者登録をしてこの森に住み着く。


 そんなある日、妹は忽然と姿を消した。


 パニックに陥った。何が起きたのかわからない。部屋はクローゼットを残して全てもぬけの殻。そして妹の魔力がクローゼットから発されていた。だんだんと弱くなっていく妹の魔力が他の魔力に塗り替えられていく。


 膨大な魔力がクローゼットから溢れだしてくる様子に戦慄した。結界を掛ける。しばらくすると魔力は鎮静していった。安堵も束の間、私の結界は別の結界へと昇華している。結界が解けなくなっていたのだ。絶望が私を襲う。


 私は冒険者ギルドへ依頼を出しに走った。ありったけの銀貨をギルドに預ける。トータルすると何金貨の価値はあるはずだ。それを報酬に結界を解いてもらおうと思った。正直、無理だと思っていたが、諦める訳にはいかない。妹を助けたい。【魔道・極】の私が施した結界を誰が解けるのだろう。藁にもすがる思いだ。


 直ぐに多くの冒険者達がやってきた。多種多様なスキルを持つ人々の集合に、少しの希望が芽生える。これならいけるかもしれない。こんなに集まってくれたのなら、あるいは誰かが解いてくれるかもしれない。


 希望はあっさり砕かれた。


 誰もクローゼットを開けられなかった。結界は健在だ。私は落ち込んだ。妹を助けたい。そんな想いで研究を開始した。焦りで上手くいかない時間が過ぎていく。魔法陣結界を試してみようと思ったのだ。床に広げた布に、筆で陣を書いていく。


 陣を書くために用意した塗料缶や魔導書、各種道具が所狭しと部屋を埋めつくしていた。準備は万全。私は魔法陣を起動した。失敗だ。私の魔力と融合した魔力結界は私の魔力で築いた魔法陣結界では到底及ばなかったのだ。ガックリと肩を落としていると、一際大きな声が外から聞こえた。


「こんにちは~!!」


 びっくりした。それはもう盛大に。身の回りの数々の道具達がびっくりした拍子に暴れた私を襲ったから。


 ドンガラガッシャーン!


 いろんなものと共にひっくり返った私は慌てて外へと出て怒鳴った。


「ビックリしたでしょーが!!」


 目の前には銀の髪を後ろで括った綺麗な碧い目の少年が立っていた。背中に預けた長剣と新品だろう光り輝く革鎧に身を包んでいる。少年は怒鳴った私にも怖気ずに殊更丁寧に挨拶をしてきた。そして帰ろうとする。私は慌てて彼を招き入れる。"鍵屋"と名乗ったアレクセイにダメ元で試してもらおうと思ったのだ。


 小さな少年に何ができるのか。屈強な冒険者達でさえ解くことができなかったクローゼットの結界を、果たして彼は……あっさり開けた。


 ぇぇぇぇ!!


 声にならない驚きと、妹を助ける希望が掠め、私は自然に笑顔になった。いつぶりだろう、こんなに喜べる日が来たのは。でもアレクセイはとても怒っていた。何故? 私はクローゼットが開けられる事に意識が傾いていたが、彼の様子も気になった。しかしあの子は帰って行った。


 私はクローゼットを直ぐに開ける。


 何もなかった。


 あるのは魔力の残痕と違和感。魔導書を調べた。この違和感は確か、"アンドレールの魔導書"の後半に書かれていたはず。この書は結界や陣の専門書だ。アンドレールとその弟子達が書き残した魔導聖典5書の一冊。


 明快な答えは載っていなかった。"そこにあるのは結界門、転移門、何かしらの門が関係しているのだろう"だった。わなわなと怒りが湧いてくる。また振り出しに戻るのか。


 はたと気が付く。あの少年ならなんとかしてくれるのでは? あの小さな肩に身を任せるには少々気が滅入るが、そうも言っていられない。妹の安否が優先だ。私は直ぐに汚れた服を着替え、顔を洗った。ギルドへ走る。


 シェイナという受付嬢に彼の居場所を尋ねたが、会議室に入れられた。そして彼の心境を聞かされる。騙されたと思っているのだ。間違いではないだけに私は心を痛めたが、自分の状況をシェイナさんに話すことにした。進まない事態に焦りばかりが募る。


 シェイナさんはわかってくれたが、彼の居場所は教えてはくれなかった。ギルドの信用に関わることだから。私はギルドで待たせてもらうことにした。ソワソワして酒場で待つ。別の受付嬢が私に飲み物を入れてくれた。


「アレク君はとてもいい子だから、言葉を尽くせばきっとわかってくれるわよ。頑張って」


 受付カウンターに戻りがてら、そんな声をかけてくれた彼女に自然と頭を下げる。


 身を屈めて助けを乞う私を彼は許してくれた。そして協力も。


 妹を助けるためにこの身を捧げると誓った。もう私に自由はない。でも後悔もない。私の人生で妹を救えるのなら安いものだと思えたから。


 不思議な感覚だった。


 彼に触れられると不安が払拭されたから。


 不思議な感覚だった。


 彼に話しかけられると気持ちが安らかになったから。


 アレクセイが気になり始める。


 私はいろんな意味で彼の虜になっている。



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