0 プロローグ
この世界には、精霊がいる。
山に、海に、風に、炎に——あらゆる自然の裏側に、精霊たちは息づいている。人の目には見えない。声も聞こえない。ただ、ごくまれに、精霊の気配を感じ取れる者がいる。彼らを「精霊契約士」——セイレンと呼ぶ。
セイレンは精霊と契約を結ぶことで、その力を借りて戦う。契約した精霊が強いほど、セイレンとしての格も上がる。精霊にはランクがあり、下位から上位、そして上位を遥かに超えた「高位精霊」と呼ばれる存在まで、その差は天と地ほどもある。
王立セイレン学院は、次代のセイレンを育てるための全寮制の名門校だ。国内各地から選抜された少年少女が六年間を過ごし、卒業時には正式なセイレンとして認定される。入学から卒業まで、すべての節目に試験がある。中でも最も重要とされるのが二つ——入学直後の「召喚試験」と、卒業前の「人型試験」だ。
召喚試験では、生徒が初めて精霊を召喚し、契約を結ぶ。ここで誰と出会うかが、セイレンとしての三年間を決める。人型試験では、パートナーの精霊が人間の姿を取れるかどうかを問われる。精霊が人型を得るには長い時間と、契約者との深い絆が必要だ。人型になれない精霊とのパートナー契約は、卒業と同時に解消される。




