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第3話 【新環境構築】アナエルを抜くべき理由3選#リミテッドワン

「制限カードだからとデッキから抜くなんて……

 切札とは遊びだったんですか?(ウルウル)」


「はいはい、キャッチコピー回収ね」


 アナエルは口では泣き落としのような声をしているが、

 実際はきれいな顔を動かさず、表情一つ変えていない。


 まったく、ポーカーフェイスな女の子だ。


「(そんなことより、も……)」


 二人で部屋中に散らばったカードを回収すると、

 主良しゅらはカードの枚数を数えていく。


「いち、に、さん、よん……」


 集めたカードを1枚ずつ、

 プレイマットの上に置いていった。


「何をされているのですか、マスター?」

「ディール・シャッフルだよ」


 デッキ枚数は40枚だから、

 4つの山に分けると数えやすいのだ。



------------------------------------------

【アナエル神造(禁止制限改定前)】


スピリット――13枚

《ザイオンの始祖》×4

《血達磨将軍ヴィヴァント》×4

次世代神造姫(ネクス・ハート)アナエル》×4

《メトロポリスの工匠、ハダリー》×1


スペル――4枚

《チーム・レコンキスタの栄光》×4


コンストラクト――23枚

神造核ゲノム・コア》×4

《神造の糸車 アリアドネ》×4

《ドラコニアの銅像》×4

《神造の祭祀 イノセント》×4

《神造の番犬 ケルベロス》×4

《神造の歪鏡 カレイドスコープ》×3

------------------------------------------



 ざっとカードを眺めて、主良は安心した。


「良かった、カードは大丈夫そうだ。

 40枚ぴったり。

 見たところ、折れたりもしてないし。

 うん。ありがとう、アナエル」


「ひ、否定します。

 元はといえば……切札のせいです。

 カードが散らばってしまったのは。

 お礼を言われることなど……」


「それはそれ、手伝ってくれたから」


 ずい、とアナエルは身を乗り出した。


「マスター……。

 やはり、切札とマスターは……

 ラブ、なのですね?」


「ラブかどうかはわからないけど、

 とりあえずデッキからは抜かせてもらうよ」


「殺生な! いけず! あくま!

 説明を求めます、納得のいく理由を!」


「いいだろう……!」


 なんだかんだと問われたら、

 答えてあげるは世の情けだ。


 アナエルには悪いが、心を鬼にする他ない。


「では、軽く説明していく。

 こほん。

 禁止制限改定後の【神造】において、

 アナエルを抜くべき三つの理由がある!」


 主良は三本の指を立てた。


「まず、一つ!

 デッキに1枚しか入れられない以上、

 アナエルの効果は充分に発揮できない!」


「切札の、効果……!」

「アナエル、君ならわかるだろう?

 自分の強みが、どこにあるのかを……!」


「ええと……思案しますね」


 アナエルは一瞬だけ静止すると――

 次の瞬間、

 自分の豊満な胸をむにっと持ち上げた。


「ここです」

「違うッッッ!」


 反射的に突っ込む主良の声が、部屋に響く。


「カードとしての効果!

 効果テキストのことだよ!」

「…………?」


 アナエルは首をかしげたまま、

 胸を支える手を離さない。


 蛍光灯の光を反射して、シルバーに輝くボディスーツは……まるで生き物のようにぴったりと肌に吸いついて、服の下に潜んだ柔らかな肉感を再現している……!


「でも、マスター」

「でもじゃなくて」

「マスターは、ずっと見てます……」

「見てないっ!」


 嘘である。

 嘘だが、こう言うしかなかった。


「アナエル、君には2つの効果があるよね。常在効果で【神造】と名のつくカードのコストを1つ下げる効果――そしてもう一つは、デッキから【神造】カードをサーチして手札に加える効果だ!」


 どちらも【神造】デッキの核となる強力な効果である。


 自分で【神造】カードをサーチして、自身の効果で【神造】カードのコストを下げてプレイできるようにする――全ての動きが自己完結している。


 いいや、()()()()()()()()()()()()



「《次世代神造姫(ネクス・ハート)アナエル》自身が【神造】テーマに所属するカードである以上……アナエルがアナエルをサーチして、アナエルをプレイすることが可能となる。それだけじゃない。アナエルをプレイするごとにアナエル自身のコストも下がっていく――アナエルのエナジーコストは2。2枚をプレイした時点でアナエルのコストは0となるため、3枚目と4枚目はどちらも0コストでプレイできるようになる。妨害が無ければ、3ターン目には4体のアナエルが場に並ぶことになり――さらに、全ての【神造】カードがコストをマイナス4した状態でプレイ可能になるってわけだ。つまり――」



 主良は一気にまくし立てた。


「アナエル、君の強みは同名カードがデッキに4枚存在することにある! リミテッド・ワンになってしまい、デッキに1枚しか入れられなくなってしまった以上は……君の最大の強みは消失したんだよ……!」


「否定……否定、できませんッ!」



「さらに二つ目の理由! アナエルによる大量展開コンボが出来なくなった以上、【神造】は以前のようにコンストラクトを並べた上で、全体スピリット除去のスペルを多用したコントロールデッキにならざるを得ない。そうなった場合、コンストラクトではなく(全体除去に巻き込まれやすい)スピリットであるアナエルは、場持ちがしづらくなるッ!」



 ハイ、とアナエルは手を挙げた。


「ザ・待ってください!

 あまりに早計な判断と申し上げます……!」


「早急、というのは?」


「たとえ1枚だけになっても、【神造】デッキにおける切札は万能サーチ兼コスト軽減! 明白でしょう、どのタイミングで引いても強いカードであることは。ならば……1枚ぐらいは、切札を採用してくれたって……」


 主良は考える。


「(俺も最初はそう考えていたさ……でもな)」


 リミテッド・ワン。


 スピリットキャスターズNEXTにおける禁止制限改定は、通常のカードゲームとは異なるルールとなっている。


「いいかい、アナエル。三つ目だ。

 リミテッド・ワンになったカードは、

 デッキに1枚しか入れることができない。

 そう、

 ()()()()()()()()()()()()()1()()……だ!」


「…………ああっ!」


------------------------------------------

《メトロポリスの工匠、ハダリー》×1

------------------------------------------


「【神造】のリミテッド・ワン枠は、

 既にハダリーで確定しているんだッ!」


「ハ、ハダリー……

 そんな、考え直してくださいマスター!

 ハダリーなんて、

 序盤に引いたら初動になって、

 中盤に引いたらリソース確保できて、

 終盤に引いたら、

 フィニッシャーになるだけのカードですよ!?」


「えっ、なんで急に

 ハダリーの良いところ全部言ったんだ……?」


「うわああああん……!

 と、号泣しますっっっ!」


 なんて、言いながらも。

 アナエルは泣き真似をするだけで、

 涙一つ流していないんだけど。


 それでも――


「(なんだか、気の毒になってしまったな……)」

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