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プロローグ

ディシントランシアが最後にいつ使われたのか、覚えている者は誰もいない。老人たちは、その闘技場が自分たちの曾祖父が若かった頃にはすでに死んでいたと呟くだけだ。ディシントランシアはかつて、クラン(氏族)同士の対戦の中心地だった。賭け、命の削り合い、そして勝者の哄笑が響く場所。しかし、その残虐さは次第に敬遠され、各クランは平和を選んだ。ディシントランシアは封印され、忘れ去られ、数世紀もの間、塵の中に埋もれていた。


 だがある日、「スーパーノヴァ」クランがすべてを揺るがした。

 彼らは数千年の間、特筆すべき点のないクランだった。誰も彼らを脅威とは見なしていなかった。しかし彼らは密かに、失われた足跡を追っていたのだ。全宇宙のあらゆるクランの源流である最古のクラン、「エンシェント・ワン(古の者)」の血統を。それは、この世に残された唯一の希望だった。


 彼らはついにそれを見つけた。手の届かぬ次元の果てで、半分は塵、半分は光となった存在が微かに脈打っていた。それこそがエンシェント・ワンの最後の残滓だった。スーパーノヴァはその遺志を掴み取った。しかし、彼らが告げたのは真実ではなかった。

 すべてのクランに招集が送られた。次元の隅々にまで、かつて自分たちが同胞であったことを忘れた文明たちに。その内容は、短く一文だけだった。


「エンシェント・ワンの遺言。来るか、滅びるか」

 来ない勇気がある者など、一人もいなかった。

 かつて「中央アリーナ」と呼ばれた虚無の空間に彼らは集まった。大クランの代表たちは高座に座り、中堅クランは石のベンチに。そして地球のような弱小クランは、大男たちの肩の隙間から覗き見ることしかできない最後尾に立たされていた。

 スーパーノヴァのリーダーが中心に立った。その表情は穏やかだったが、瞳は空虚だった。


 彼はエンシェント・ワンの遺言を読み上げた。その言葉は重く、謎に満ちていた。要約すればこうだ。「平和はお前たちを弱くした。強き者が支配し、弱き者は淘汰されるべきだ。さもなくば、滅亡のサイクルが繰り返されるだろう」

 場が静まり返った。


 すると、スーパーノヴァのリーダーは微笑んだ。

「聞いた通りだ」彼は静かに言った。「エンシェント・ワンは、ディシントランシアを我々に託した。そして我々は、これを復活させる」

 いくつかの中堅・大クランが立ち上がり拒絶したが、スーパーノヴァはすでに準備を整えていた。彼らは予期せぬ軍勢、未知の兵器、そして全員を凍りつかせる事実を突きつけた。

「我々はディシントランシアを完全に制御している。もし参加しないのであれば、弱小クランから順に一つずつ滅ぼしていくだけだ」

 小規模なクランは騒然となり、大クランは無力感に唸った。彼らは悟った。選択肢などないのだ。

 こうして、新しいルールのもと「ディシントランシア・ゲーム」が幕を開けた。


 ルールはスーパーノヴァによって作られ、脅迫の下で承認された。各クランはその勢力に応じて代表者を送る。

大クラン(圧倒的な力): 代表者はわずか1〜2名。

中堅クラン: 代表者3名。

弱小クラン: 代表者10名(選ばれし精鋭5名、ランダムガチャによる抽選5名)。


 各代表者はポイントを集める。目標は自クランのために1000ポイント。ポイントは、死に至る直接対決、レアアイテムの探索、ミステリー・ミッションの解決、さらにはドラゴンの討伐などによって得られる。すべてはディシントランシアという、ゲームの必要に応じて姿を変える擬似世界の中で行われる。


 そして最も恐ろしいのは、生き残れるのはポイントの高い上位10クランのみ、という点だ。残りは容赦なく抹殺される。

 小規模なクランはパニックに陥った。彼らには強力な戦士も、高度なテクノロジーもない。彼らにあるのは、老人から剣を握ったこともない子供までが選ばれる可能性のある「ランダムガチャ」という薄っぺらな希望だけだった。


 人で溢れかえった部屋の隅に、ポケットに手を入れた一人の少年が立っていた。彼は何が起きているのか理解していなかった。ただ、自分の名前が無作為に呼ばれたことだけを知っている。彼は地球クランの5人の「ラッキー・ドロー(幸運の抽選)」の一人だった。

 逞しい筋肉もなければ、伝説の剣もない。魔法も戦闘用アンドロイドも持っていない。


 彼が持っているのは、自分自身ですら完全には理解していない一つの秘密——幼い頃からその身に宿る「呪い」だけだった。

 その呪いは、決して沈黙することはない。眠っている間に耳元で囁き、周囲の物を勝手に動かし、理由もなく人々を遠ざけた。彼の名はザカ。


 そして今、その呪いも共にディシントランシアへと足を踏み入れた。


 誰にも知られることなく、ザカ本人ですら気づかぬうちに、その呪いはゲームのルールを書き換え始めていた。

 公平で致命的なはずの完璧なシステムが、不具合を起こし始める。ポイントが異常に跳ね上がり、ミッションが勝手に変更され、敵が突然理由もなく無力化される。


 スーパーノヴァは何が起きているのか分からず、大クランたちは互いに疑心暗鬼に陥る。そしてザカは? 彼はただ、自分の中に眠る呪いの正体を知るために、生き延びることだけを考えていた。

 だが、その問いへの答えは後回しだ。ディシントランシアに、ゲームの開始を告げる最初の鐘が鳴り響いた。

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