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第80話 全宇宙の意思

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「……もう降参したら?」

 エレーナが軽く首を傾げる。

「私のおじいちゃんの結界、解いてくれない?」

「……みくびるな」

 デュランが、ゆっくりと片手を天へ掲げた。

 次の瞬間――

 〝バリバリバリバリッ!!〟

 空が裂ける。

 〝バリバリバリバリッ!!〟

 それは〝ただの雷〟ではなかった。

 触れた瞬間、存在そのものを削るような圧。


 倒れる者、膝をつく者……

「くっ……身体に張った、

 エルフィーの結界でも防ぎ切れないのか……」

 マックスは口元から血が滴る。

「だから、みくびるなと言った。

 これを見て更に絶望するがいい」

 デュランが笑う。

 稲妻の煙が晴れてくると、

 そこには、陸……空……

 視界を覆い尽くす魔物の群れが現れていた。

 先ほどの数十倍の魔物。

「数千年掛けて用意したと言ったであろう?

 あれが全てだと思ったのか?」


「と、とにかく、全員でこの神を倒すぞ!」

 マックスが叫ぶ。

「ハァ〜ハハハ!!!」

 デュランが高らかに笑う。

「あの程度で傷つくお前達が?

 私に勝てるとでも?」

 鼻で笑う。

「私の力は――エルフローラに匹敵する」

「ママに匹敵?いつのママによ?」

 エレーナが冷めた目で言う。

「今のママは、もう〝神〟ですらないよ?」

「何を言っている?」

 デュランが眉をひそめる。

「あの邪魔者は既に消滅した……」


「えっと…………邪魔者って……私?」

 ――ポン。

 肩を叩かれる。

「失礼ね」

 振り返るデュラン。

「……!」

 そこにいたのは――

「ママ!」

「エル姉!」

「エルフィー!」

「お嬢!」

 消滅したはずのエルフィナだった。


「な……なぜ……」

 デュランの目が見開かれる。

「消滅したはず……」

「あのくらいの攻撃で、消滅するわけないじゃない」


「……っ!! ならば――!!」

 デュランが攻撃を放つ。

 連撃……乱打……殺意の塊。


 〝ガンッ!ガンッ!ドスッ!!〟

 だが――

 エルフィナは、

 レイピアをチアリーダーのバトンのように、

 くるくると回すだけ。

 まるで遊ぶようにすべて弾く。


「……終わり?」

「舐めるな!私の力はこんなものではない!」

「……ほんと?」

 静かな声。

「じゃあなんで……」

 一歩踏み込み言う。

「真正面から来ないの?」

「……!」

「隠れて、不意打ちして、誰か使って……そればっかり」

 目を細める。

「怖いんでしょ?

 ……私に勝てる自信、ないんでしょ?」

「だ……黙れ」

 デュランの顔が歪む。


「…………見ていろ……私のぜんりょ……」

 〝グシャッ!〟

 言い終わらないうちにエルフィナの膝が顎を砕いた。

 〝ゴホゴホゴホッ……〟

 何やら口から吐き出す。

「あら?神も血、出るのね」

「……お前は……」

 よろめきながら立つ。

「血を出さないのか……?」

「出すわよ?」

 さらっと言う。

「人間だもの」

「人間?」

「そうよ?」

 にこっと笑う。

「どこから見ても人間……

 とっても可愛い普通の女の子じゃない」

「……ふざけるな……!

「なぜだ!私とお前は、同等のはず……

 私は更に力をつけ……」

「いつの私と比べているのかしら?

 私もうレベル150よ?」

「ファハハハ……エルフィナよ。

 人の尺度のレベルを言っても仕方ないじゃろ?」

「フフフ……お父様……冗談です」

「お……お前達……もう戦いが終わったかのように……」

「そうだったわ……ごめんなさい。

 貴方が、デュランさん?」

「だ、だったらなんだ?」

「……ありがと」

 軽く頭を下げる。

「……何が〝ありがと〟だ!!」

 怒りが爆発する。

「馬鹿にしているのか!!」

「ううん」

 静かに言う。

「あの時――」

 少しだけ遠くを見る。

「貴方の放った光の攻撃魔法?

 あの瞬間、私の魂は全宇宙に飛び広まったの……」

「……は?」

「そのおかげで分かった」

 一歩踏み出す。

「私が何なのか……

 何のために存在しているのか」

「……」

「だから」

 微笑む。

「ありがとう」


「お前は神だろ?他の何者だと言うのだ!」

「じゃあ見ててね。〝消えてなくなれ〟」

 すぅーー

 音もなく忽然と消える魔物の大群。

「き、貴様何を……これでも喰らえ〜!」

 片手を上げ、先ほどの魔法を撃とうとするデュラン。

「動かないで!」

「グッグッグッ……」

 デュランの動きが止まる。

「お父様の結界、消えなさい」

 〝パキン〟

 キューブが砕ける。

「皆んなの傷、治りなさい」

 光が広がる。

「「「「「「「「おおお〜〜〜〜!!」」」」」」」」

 一瞬で回復。


「どお?」

 振り返る。

「神の貴方にできて?」

「だ……だからお前は……危険なのだ……」

 震える声。

「貴方、本当は〝悪〟じゃないわね?」

 エルフィナが静かに言う。

「全宇宙の為……そう考えているのでしょう?

 ただ、私と考えは違うけど……」

「あ、当たり前だ……私が正しい……私が宇宙を守る……

 お前は秩序を守れ……その力を何に使うつもりだ?」

「私は……」

 振り返る。

「エルフィーを守れればそれで良いの……

 私の家族を守りたいだけ。

 マックス、エレーナ、スカイ、チッチ、アンカー、ティアにブルズ……

 皆んな私の家族」

「俺が入ってないyo~」

「ふふ……貴方は違うでしょ?」


「家族か……」

 デュランが呟く。

「その為には、

 お前は躊躇なく宇宙のルールを越えるだろ?

 それが危険なのだ……」

「違うわ。私が全宇宙の意志なの」

「何を言ってる?全く意味がわからん……」

「貴方に飛ばされて分かったの。

 私の家族は全宇宙の善良な生けるもの全てよ」

「お前の、規格外の魔力量は、

 その全てを守るためだからとでも言いたいのか?」

「それもちょっと違うわ。私は魔力が多いんじゃなくて、

 私が魔力の源だったの」

「……バカバカしい……」

「やっぱりあなたには理解できないわよね?

 だったら、もう終わりにしても良い?」

「私も消し去るのか?だが……

 これで終わったと思うなよ……

 お前を排除したいと思っている神々は、

 まだまだ沢山残っている」

「う〜ん……消さないかな?

 私の唯一普遍の秩序……それは〝愛〟よ?

 〝悪〟ではない貴方を消すのは愛じゃない……」

「……綺麗事を……だったらどうするというのだ?」

「そうね…………貴方の神の力……

 それを返してもらうわ」

「お前から授かったものではない……」

「そうね……

 でも貴方にその力を授けたのは全宇宙の意志……

 そして私も宇宙そのものの意志なの……

 貴方の神の力……消えてなくなりなさい……」

 ふっとデュランから力が抜ける。

「……あ……」


「では、さようなら……」

 優しく言う。

「貴方の宇宙に帰って静かに……

 そして、できれば幸せに……」

 デュランは、消えた。


 ************************


「どうしてもやるのですか?」

 全宇宙の神々の半分……数百の神がエルフィナを囲む。

「力の差を理解出来ないのですか?

 貴方方の様な神々でも、

 いなくなれば貴方方の宇宙も混乱しますよ?」

「お前が、我らの理想には邪魔になるからだ……」

「神の理想って?……地上の幸せを願うことなのでは?」

「そんな小さな事ではない!

 我らは宇宙全体の秩序を守るのだ」

「〝秩序を守る〟? あなた方が考える必要ないの……

 なぜなら……私が宇宙そのものの意志……

 たった一つの普遍の秩序……それは〝愛〟」

「そんな綺麗事では宇宙を守れん!」

「そう……ですか……仕方ありません……

 消えて無くなりなさい……貴方達の神の力……」

 〝あっ…………〟

 力が抜け膝から落ちる神々。

「それでは……静かに……そして平和にお暮らし下さい……」

 神々は静に消えた。

「神々の上に立つもの……全宇宙の意思……それが私の力……

 そうなんでしょ?アカシック……

 いえ、全能の神……アカシックレコード……」


 ~endだyo~

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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