表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/80

第77話 前世の記憶

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「――待って」

 穏やかな声……

 だが、逆らえない声だった。

「二人とも……逃げないで」

 夜空に、エルフィナの声が響く。

「どうして逃げようとするの?」

 その問いに、アストラルが息を呑む。


「……あの邪神を消したのは……エルフローラ……か?」

「えっ?エルフロ――」

 言いかけて、止まる。

 違う。その名前は――

「……エルフローラ……」

 ぽつりと呟く。

「そう……私の名前は――エルフローラ」

 その瞬間。


 パキッ。

 エルフィナの身体から、微細な光の粒が漏れ出した。

 ひび割れ。まるで〝殻〟に亀裂が走るように。


 〝ピシ……ピシピシ……〟

 音が広がる。

 全身を覆っていた〝何か〟が、崩れていく。

 そして……砕けた。

 光の破片となって、消える。


「……何だったの、今の」

 自分の手を見つめる。

 でも、分かる。

 これは初めてじゃない。

「……2回目ね、この感じ……」

 ふっと息を吐く。

 視界が、澄んでいく。

「……ああ……そうだ」

 懐かしい感覚。

「エルフローラ……それが私の名前だった」

 ゆっくりと顔を上げる。

 その瞳は、もう〝エルフィナだけのもの〟ではなかった。

「……前世、だけどね」

 微笑む。

「なんか……雲が晴れたみたい。スッキリした」

「……記憶が戻ったのか?」

 アストラルが問う。

「ええ」


 そして――

 その視線が変わる。

「お兄様」

「……!」

「何、こそこそ逃げ回っていたの?」

 次に、ジュリアナを見る。

「久しぶりね」

 優しく――でも、どこか寂しげな声。

「ジュリアナ」

 ゆっくりと、一歩踏み出す。

「……貴方よね?」

 問いかける。

「私に貯めさせていた神聖魔力を使って、

 第12宇宙を破壊したのは」

「……っ」

 ジュリアナの顔が強張る。

「そ、それは……」

 その後の言葉が出ない。

 2人の距離が詰まる。

 一歩、また一歩。

「ちょ、ちょっと待ってくれ……エルフローラ」

 アストラルが止めようとする。

 だがーー止まらない。


 エルフィナは、

 ジュリアナの目の前まで来ると、

 両手を広げた。

 その魔力は、明らかに〝神だった頃〟を超えている。

 とてつもない圧。

 エルフィナの存在そのものが、重い。

 ジュリアナが震える。

 そして――


 〝ぎゅっ〟

 抱きしめた。

「……え?」

 ジュリアナの思考が止まる。


「……何で、あんな事をしなきゃいけなかったのか」

 優しい声。

「私には分からないけど……」

 少しだけ、力を込める。

「……辛かったわね」

「……え? エルフローラ……?」

「今はエルフィナよ」

 くすっと笑う。

「そう呼んで?」

「……なんで……」

 震える声。

「なんで……怒らないの……?」

「だって……」

 当たり前のように言う。

「貴方が、自分から進んであんな事するわけないじゃない」

「……っ」

「ジュリアナは優しい子だもの」

 ぽつり。

「……よく、知ってる」

「エルフィナ……」

 涙が溢れる……止まらない。

「うっ……うぅ……」

 その場に崩れ落ちる。

 泣き崩れるジュリアナを、エルフィナは優しく支えた。

「行こ?」

「……え?」

「創造神様(おとうさま)のところ」

 にこっと笑う。

「話はそこで全部聞く」

「で、でも……怒ってらっしゃるわ……」

「そんな事ない……大丈夫よ?

 創造神様(おとうさま)も私と同じ思いなんじゃないかしら?」

 少しだけ遠くを見る。

「〝落ち着いたら来なさい〟って言われたけど」

 ジュリアナの手を取る。

「今すぐ行こう?」

「ちょっと待って……心の準備が……」


「2人が揃ったのを見るのは、久しぶりじゃな」

 突然創造神の声がする。

「あれ?創造神様(おとうさま)?」

「〝創造神様(おとうさま)〟か……

 そう呼ばれるのは何年振りかの?

 記憶が戻ったようじゃな……」

「神界に帰られたのでは?」

「懐かしい聖魔力を感じたんでな……

 暫し成り行きを見守っておったんじゃ」

「そうだったんですね……」

「2人が揃う……なんとも、安心する光景じゃ。

 アストラルは……事故以来か?久しぶりじゃの」

「……申し訳ありません」

 アストラルが頭を下げる。

「創造神様……」

「よいよい」

 軽く手を振る。

「エルフィナが気にしておらんのじゃろ?」

「もちろん」

 即答するエルフィナ。

「ならば、それで終いじゃ」

 あっさりだった。


「さて」

 ジュリアナを見る。

「何があった?」

 静かに問う。

「……ある程度は、想像つくがの」

「分かるのですか?創造神様(おとうさま)は?」

「フォッフォッフォ……多分じゃよ?多分」

 軽い。

 だが、確信している声。

「……実は……」


 ーー

「やはりな」

 話を聞き終え、創造神が頷く。

「アストラルは、

 第12宇宙に100年拘束されておったか」


「拘束を解くと言われ……戸惑っていると、

 今度は、協力しないと、

 アストラルを消滅させると脅されて……

 まさか、エルフィナの魔力を、

 あんな恐ろしいことに使うとは……」

「……知らなかったのね」

 エルフィナが静かに言う。

「それにしても……

 貴方たちが、そんな関係だったなんて」

「……おかしいでしょ?神なのに……」

 ジュリアナが笑う。

「ううん、人となった、今の私には良く分かるわよ?」

 優しく微笑む。

「一つ聞いても良いかしら?」

「何?」

「エルフィナ、私を探してたって……

 何故?前世の記憶はなかったんでしょ?」

「ああそれ?」

 少し考えてから言う。

「ジュリアナ……貴方、

 私が呪いに掛けられてたの知ってる?」

「ええ、エルフィナが5歳位の時かしら、

 貴方の神聖魔力を感じて驚いたの。

 この世界に転生してたんだって分かって、

 様子を(うかが)いに、

 何度か貴方をこっそり見に行ってたの」

「……そうだったんだ……で、その醜く見える呪い……」

 エルフィナが続ける。

「ジュリアナにも少しだけ掛かってたのよ?」

「?私、醜いとか言われた事ないわよ?」

「そうなんだ?でもね」

 一瞬、間を置く。

「でも貴方をモデルに描いた絵を見た人の中には、

 オークに見える人がいたのよ?」

「知らなかったわ」

「私がたまたま、その絵が飾ってある、お店に行った時、

 そう言っている人が居たの。

 綺麗な人なのに何故?って思ったら、

 何だかすごく気になって……

 貴方と一緒に、楽しそうにしてる夢見たり……

 どこかで会った事がある様なって、思い始めて……」

「それで私を探したの?

 でも何で私にもエルフィナの呪いが、

 私に掛かったんだろ?」

「ジュリアナ、おぬし、

 あの神々にエルフィナが、痛ぶられている時に、

 近くにおったのではないか?」

「……っ」

 ジュリアナの顔が歪む。

「私……あんな事になるなんて思ってもいなくて……

 あまりの光景に立っていることも出来ず、

 座り込んだまま、動けずにいました」

 震える声。

「あの頃お前たちが付けていた、

 お揃いの指輪を覚えておるか?」

 穏やかに語る。

「あれは、第1宇宙の神聖魔力に、

 反発する様に調整された、ジュリアナの魔力と、

 エルフィナの魔力が、暴発しない様に、

 互いの心を、いつも繋ぎ、中和する様に、

 わしが作った魔道具なんじゃ」

「心が繋がっていた…… だから、呪いが少し流れた……

 それでエルフィナの呪いが少し私に?」

「ジュリアナには、大して影響が無かったようじゃが、

 おぬしに少し流れた事で、

 エルフィナには大きな影響があった……

 良い方向に作用したようじゃな」

「あ、それで私に掛かった呪いは完璧じゃなかった?

 一部の人には呪いが効かず、

 家族からも、完全に拒絶されたわけじゃなかった……

 ジュリアナが、呪いを少し受け持ってくれたおかげで……

 私は救われていた……ありがとうジュリアナ」

 優しく言う。

「何で……何で……ありがとう?

 私は恨まれるのが当たり前なのに……」

「違うって言ったでしょ?」

 優しく言う。

「貴方は悪くない」

 一歩近づく。

「ジュリアナは、優しい子」

 微笑む。

「親友で――」

 少しだけ照れて、

「……姉妹、なんだから」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ