第59話 ダートライトのギルマス
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「あの~すみません……」
少し控えめに手を挙げる。
「ギルドの総合案内って、ここで合ってますか?」
「あっ!」
受付嬢がぱっと顔を輝かせる。
「先程、入国門から連絡のあった――
〝神の愛し子〟エルフィナ様ですね!」
「そ……そうですが……」
若干引き気味。
「門番の兵士から連絡が来てます。
めちゃくちゃ綺麗な女の子……
神の愛子エルフィナ様が、こちらに向かったって」
「……そうなのですね……ハハハ……」
「今日は、どの様なご用件で?」
「あ……あの……」
少し声を落とす。
「冒険者カードの預金を、出金したいのですが」
「おいくら程ご入用ですか?」
手際よく端末を操作する。
「えっと……」
少し考える。
「この国の物価が分からなくて……
数日泊まれて、食事と買い物が少しできるくらいで……」
「でしたら――」
即座に算出。
「最上級のお部屋が一泊50万ルピーですので、
1000万ルピーほどお持ち頂ければ安心かと」
「……え?」
固まる。
「そんなに……いるの?」
青ざめるエルフィナ。
「……私、そんなに預金あったかしら」
ぽつり。
「魔石売ったり、魔族倒したりした分しかないんだけど……」
「確認いたしますね」
「カードをお預かりしても?」
「はい……これです」
「うわ~プラチナだ~!」
受付嬢の目が輝く。
「凄!初めて見ます!ってそれもそうですよね?
SSS級冒険者なんて、世界中で2人だけですものね」
一気にテンション上昇。
「そうなんですか?
あれ?私1人じゃなかったんですね?」
「ご存知なかったんですか?」
逆に驚かれる。
「エスティア王国の王太子様が、
つい先日SSS級に認定されていますよ?」
「え?マックス?いつの間に冒険者登録したんだろ?
迷宮にずっと入ってたしね……私と同じSSS級か……
まあ、レベル100近くて、
勇者より上なんだから当たり前か……」
くすっと笑う。
「内緒にして驚かせようとしてたのかしら……子供ね」
小さく肩をすくめる。
「仕方ない……聞かなかった事にしといてあげよ……」
「え……と……エルフィナ様……エルフィナ様の預金は……」
受付嬢の声が少し震える。
「30億ルピーを超えておりました……」
「はい???そんなに?何で?」
「あの……先程、
魔石の換金っておっしゃてましたよね?
悪魔族の魔石が大半だった様ですが、
上級悪魔の魔石だけでも、
1つ数千万ルピーする物も有りますから……」
「そんなに?ギルマスに頂いた巾着持ってて良かった~
あれ、自動で魔石とかドロップ品回収してくれるのよね。
落ちてた魔石とか気にもせず、ほったらかしといたのに、
たくさん入っていて驚いたのよね……」
「SSS級?本当に?」
「30億ルピーって言った?」
「マジか?とんでもね~な……」
「あんな可愛い女の子がな……」
「エスティア王国の次期王妃だって聞いてるぜ?」
いつの間にかエルフィナの周りは、
人だかりで身動きが取れない程になっていた。
「あ……あの……私、少しやる事があって……
外に通して頂けますか?
その代わりと言っては何ですが……
お近づきの印に、
ギルドのバーでお好きなだけ飲み食いして下さい。
お支払いは、私の預金からで宜しいですか?
受付のお姉さん」
「はい、承りました」
「「「「「「「「おお~~~~~~~~!」」」」」」」」
歓声爆発。
一気に道が開く。
(ちょろいわね)
何とか抜け出せそうになったその時ーー
「エルフィナ様!」
後ろから声がかかった。
先程の受付嬢だ。
「エルフィナ様、ギルマスがお会いしたいそうです。
申し訳ありませんが、
少しだけお時間いただけませんでしょうか?」
「お止めして申し訳ありません」
低く、よく通る声。
ここのギルドマスターをさせて頂いている、
オリバーと申します」
背丈はマックスより高く、筋肉もマックス以上。
日に焼けた顔は、目つきが鋭く、古傷の痕がたくさん。
エスティアの王都のギルドマスターは、
貴族で実業家の様な姿だったが、
まるで正反対の容姿だった。
「初めまして、エルフィナ・スタンリーです」
「SSS級とは恐れ入りました。
滲み出る魔力……確かにSSS級の力をお持ちの様だ……
こう見えて、私も以前は、S級冒険者でして……」
「こう見えてどころか、今でも現役の様にお強そうですよ?
その傑物さ……とっても素敵です」
「ガハハハハ!」
豪快に笑う。
「こいつは参った!
こんな美人に褒められると照れますな~
ところで一つお聞きしたく御足労願ったのですが……」
「何でしょうか?……と、その前に、
私の事は呼び捨てで……敬語も必要ありません」
「いや、しかし……SSS級な上に、
エスティア王国の次期王妃となれば……」
「ギルマス……オリバーさんは……そうお呼びしても?」
「もちろんです」
「オリバーさんは、
人生でも冒険者としても、私の大先輩です。
あまり畏まれると、
こちらが困ってしまいます……」
「ガハハハ、そうか?……実を言うと、
俺も畏まった話し方に慣れてなくてな?助かるよ」
少しだけ声を落とす。
「でだ、お前さんは、ここに何しに来たんだ?」
鋭い視線。
「ここには大した迷宮も無い……観光って訳でもないだろ?」
「オリバーさん」
エルフィナも、少しだけ真剣な顔になる。
「貴方を信頼して、本当の事をお話ししますね。
近い内、ダートライト国の王家を始め、
主だった方々には、
報告しなければならなくなるかもしれませんが……
暫くは、他言無用でお願いできますか?」
「おう、口は固いぜ?
それにしても王家に報告?
そこまで重大な話なのか?」
「私が来たのは……ここに、未到の地と言われる、
隣の魔族の大陸への転移門が有るからです」
「……は?」
オリバーの目が見開かれる。
「ちょ……ちょっと待ってくれ!」
低く、重く。
「〝魔族の大陸〟だと……?」
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